悪役執事

梛桜

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花の朔祭編

其の十三

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「お久し振りですわね、クリステラ側妃様」

 お嬢様が殊更『側妃』という名称を強調して御呼びになりました。勿論、そこを気にしている側妃様が扇を持つ手に力を籠めたのを見逃しません。にっこりと綺麗な微笑みを浮かべ、狭い馬車の中ですが、淑女の礼を取ります。

「相変わらず、マリアーナに似てます事」
「お母様なのですから、当たり前ではありませんか。美しいお母様に似ているとの言葉は、私には何よりの賛辞でございますわ」
「その忌々しさもそっくりだわ!」
「あら、母も私も昔から普通にお話をしているだけですわ、クリステラ側妃様」

 顔を顰めて扇で隠す側妃様に対し、リーユお嬢様はにっこりと微笑みを浮かべたまま素顔を晒しています。エアレズ殿がどうしていいのかオロオロとしていますが、貴方は何もせずじっとしているのが一番だと思いますよ。この時点で終わってますので。

(そもそも、うちのリーユお嬢様に言葉で勝とうと思うほうが間違いだと思います。余計な事をしないようにルファとゼルクがエアレズの側についていますが、ルファはついでに側妃様を狙うの止めなさい)

「私の執事達は、皆優秀でしょう?クリステラ側妃様。皆、幼い頃に貴女が役に立たないと退けた者達ですのよ?力の使い方を学べば、こんなにも優秀なのです」
「……何が言いたいの」
「相変わらず、ご自分で考えるという事をなさりませんのね」
「っ、言い方までマリアーナにそっくりだこと!無礼よ!」
「貴女様は一応側妃でも、離宮に幽閉されているはずの罪人。私は隣国ライラクスの公爵令嬢ですわ、無礼なのはどちら?」

 リーユお嬢様のアメジストの瞳が楽しげに細められ、ゆっくりと私の手を取り愛用の扇を取り出す。宿で頼んでいた食事に入れられていたのは、麻痺の薬だとルファが言っていたので、きっとクリステラ側妃が持っていた薬かもしれません。何処で手に入れたのかは、後で記憶に残っていれば調べてみましょうか。

(リーユお嬢様に使われたというなら、何があっても調べますし解毒薬もルファに作らせますが。飲んだのはルファで、何も効いてませんしね)

「そもそも、アイクロメア王国の王妃様に無礼を働いていらしたのは、クリステラ側妃様でしょう?聞きましてよ?部屋の前には鼠や虫達の屍骸の贈り物を毎日、ましてやどうやって丸め込んだのか、食事にまで入れ込むとか。性質が悪すぎませんこと?」
「なんの事でしょう?私には覚えがありませんわ」
「身に覚えがあり過ぎて、忘れてしまったのではありませんか?クリステラ側妃様」
「使用人風情が!弁えなさい!」

 口を挟んだ私に、これ幸いと八つ当たりをしに着ましたが、私の顔はそんなに変わったのでしょうかね?エアレズも分からなかったようですし。まぁ、それはそれで戻らなくて済みますし好都合ですが。

「私の顔をお忘れですか?この瞳は、陛下譲りの王家を示す深い藍の色。第二王子のマンティスもこの瞳でしたね、エアレズだけは何故か別の色ですが」
「その金の髪と生意気な口の聞き方…」

(一応記憶に引っ掛かっていたようですが、生意気ですかね?この話し方は昔と変わってますよ?)
 
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