BL団地妻on vacation

夕凪

文字の大きさ
1 / 8
BL団地妻on vacation

プロローグ

しおりを挟む
 晴樹はるきが目を覚ますと、隣に夫の恭祐きょうすけの姿はすでになかった。

 部屋は白々として明るく、カーテンの向こうからは眩しいばかりの陽光が差し込んできていた。
 高い天井では、シーリングファンが回っている。

 晴樹はベッドから抜け出し、髪を手櫛で整えながら、レースのカーテンを開いた。
 眼下には、白い砂浜と青い海。

 晴樹は目を細めて、そのすばらしい景色を堪能した。


 芦屋あしや夫夫ふうふはいま、ビーチリゾートに来ている。

 夫である恭祐の会社は、社員それぞれに一週間の夏季休暇をくれるのだ。
 恭祐はそれに有休をくっつけて、晴樹と二人、二週間のバケーションを堪能するべく、飛行機や宿泊先などの手配をしてくれたのだった。
 
 ショッピングやマリンアクティビティは、最初の一週間ですでに満喫した。
 後は日頃の疲れを癒すため、のんびりと怠惰を貪ろう、と夫は言っていたが……。

 南の島は、時間の流れがゆっくりに思えて……ほんの少しの退屈を、晴樹は感じていた。

 しかし、夫は普段企業戦士として朝から晩まで働いてくれている。
 専業主夫の晴樹などにはわからない大変さもあるはずで、その恭祐がゆっくりしたいと言うならば、晴樹は我儘など言わずに従うべきであった。

 晴樹は夫を愛しているし、夫に尽くすのが妻たる自分の喜びなのである。


 晴樹はキラキラと光を弾く波打ち際を、細めた目で眺めた。
 ビーチでは宿泊客が思い思いに遊んだりくつろいだりしている。

 晴樹たちが泊まっているこのホテルは、大人のための隠れ家をコンセプトとしており、こぢんまりとした佇まいながらもプライベートビーチを備えていた。
 ファミリー向けではないため、子どもの姿もない。
 いまも砂浜では大人の男女がビーチチェアに寝そべり、優雅にリゾート気分を味わっている。

 晴樹はそのリクライニングのひとつに、夫の姿を見つけた。
 パーカーにハーフパンツ、というラフな服装で、サングラスで目元を覆っている恭祐は、遠目にも恰好良かった。

 ビーチに行くなら声をかけてくれれば良かったのに、と思いつつ、晴樹は自分も外へ出る準備をしようと窓辺を離れ……ふと、ソファの上に置かれている服に気付いた。

 きちんとたたまれているのは、晴樹のパーカーだ。
 紫色のそれを手に取って持ち上げると、その下にはもうひとつ……。


 晴樹はしばらく、『それ』を凝視した。


 これみよがしにここに置かれているということは、これを着て、ビーチまで来いという恭祐の意図を表しているのだろう。

 おまけに『それ』の横には、てのひらサイズの長方形の箱まである。
 これも、中身を使えということだと、晴樹は理解した。 


 晴樹の喉が、ごくりと鳴る。
 自分が『これ』を着て、ビーチへ行き……この箱の中のモノを使うのだ……。

 想像するだけで、股間がじわりと濡れるようで……晴樹は熱っぽい吐息を漏らした。
   
 先ほどまで感じていた退屈が、あっという間に吹き飛んでゆく。
 

 晴樹は準備をするべく、『それ』を手にシャワーブースへと入ったのだった。

 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

見合いの後に

だいたい石田
BL
気の進まない見合いをしたその夜。海は執事である健斗を必ず部屋に呼ぶ。 2人の秘め事はまた今夜も行われる。 ※性描写がメインです。BLです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

年下彼氏に愛されて最高に幸せです♡

真城詩
BL
短編読みきりです。

BL短編まとめ(異)

よしゆき
BL
短編のBLをまとめました。 冒頭にあらすじがあります。

【完結】オセロ~ある青春の過ちと傷について~

夕凪
BL
一穂は高校二年生の新クラスで、前の席の真直に一目惚れした。 その日から一穂の頭は真直でいっぱいになった。好きという言葉もいっぱい告げた。 でも真直は一穂の気持ちに取り合ってくれない。毎回すげなくフラれてしまう。 けれど、その年の夏、二人に転機が訪れて……。 高校時代の青春と傷、それはやがて大人になった二人を巡り合わせる。 一穂の恋を描いたセンシティブラブストーリー。

処理中です...