東京歩き

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早朝の歌舞伎町

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男女の欲望渦巻く日本随一の歓楽街、歌舞伎町。椎名林檎さんの「歌舞伎町の女王」は有名ですよね。今回は、早朝の歌舞伎町を散歩した時のお話です。


友達と朝までカラオケで遊んだ。家に帰るのは手間なので、そのまま大学に行くことにした。乗り換え地点は新宿駅。時間があるので、一人で早朝の歌舞伎町を散策してみたくなった。田舎者ゆえ、新宿のような東京のイメージ色の強い場所を訪れてみたくなる習性がある。新宿駅を出ると、爽やかな朝の光が反射して、高層ビルがキラキラ輝いている。
「東京や…!」
都市が目を覚まし始めていた。対照的に夜の街・歌舞伎町は静かに眠りについたようだ。人々はまばらで、静寂に包まれている。
眠ったばかりのここではまだ、夜の残り香が漂っていた。今回はそんな、夜の人々の残像を見ることが出来た。

酒に溺れ路上で眠る中年女性を目にした時、ここが日本屈指の歓楽街であることを再認識した。酒缶やペットボトルがあちこちに散乱し、そこに人々がいたのだという面影が残されている。



路上のあちこちにとてつもない量のゴミと吐瀉物が目立つ。風が吹くと場所によっては鼻をツンと刺す香りが漂うときがある。ゴミ袋の山と、ポイ捨てされたゴミ、というより食べ物。酒、タバコ、食べ残し。シンプルに道が汚い。そんな夜の住人の置き土産をゴミ収集車がせわしなく回収に努めている。カラスやハトがつつく。

年寄りの、いかにもホームレスという見た目の男性がゴミを漁っている。(どうするのだろう?生活に使うのだろうか、売るのだろうか)
あちこちで男女が大きな声で談笑している。ホストらしき男、客とおぼしき女、見た目が厳つい男達、外国人。カオスだ。
怖い、早くここから出たい。でも、見たい。幾度か、好奇心と恐怖心のアンビバレントに苛まれることがあった。だがやはり好奇心が勝ってしまう。
「お姉さん!イケメン見たくない?」
「お姉さんどこ行くのー?」
というような客引きにあった。怖かったので無視してしまった。男だったら、客引きに絡まれることなくもっと堂々と歩けたのに。歌舞伎町に訪れるのはやはり女性の方が多いのだろうか?

ホスト、なぜその巧みな話術で女を虜に出来るのか。しかしこうも考える。歌舞伎町に集まる寂しい女性の需要を満たせているのだから当たり前なのだと。


どうやらこの世界はルッキズムが顕著に現れている。大体の若者はお洒落で清潔な格好を心得ているようだ。否、性と金が全てのこの地、見た目10割なのかもしれない。ホストはどちらかというと女性的な見た目だが、とても顔立ちが整っている。女性はいわゆる地雷系ファッションの人が多い。

↑ドブネズミの死骸。

歌舞伎町はホストに踊らされる女達の売春行為やトー横キッズなど、日本の闇が集結しているマイナスな話を聞いていたので、現実味を帯びず、どこか違う世界の話だとさえ錯覚していた。
しかし実際目にした時、私の「歌舞伎町は異世界」だという認識が揺らぎ、現実的なものになった。


ここで暮らす者達は、どのような物語を持っているのだろう。夜、彼らは何を語りあっているのか_____
人々の欲望が交差する歌舞伎町は、とても興味深い世界である。
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