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最終話
しおりを挟むルゥイギーの言う通りなんだろう。
ヒオリはこの先もスェラド以外と交わる事はないし、帝都に戻れば人質生活の再開だ。
それでもこの人の一物がとても、特別気持ちいいのは分かる。
太くて、長くて、熱くて……とても逞しい。
「ひんっ、あ!」
下半身の力などとうに入らなくなり、内壁の媚肉が突かれる度にグネグネとスェラドのものを締めつけるように忙しなく動く。
自分でも分かるほど。
だって気持ちいい。
体が悦びすぎて泣いている。
この自分ではどうする事も出来ない快楽と、それを与える力強い皇帝に支配される歓び。
なにより、愛しい。
「ああ、俺もさすがに……これだけ締めつけられると……!」
「ひ、ん、あっ、あっあっあっ!」
動きが速くなる。
最初の動きと同じくらいだろうか。
それでもクォドとルゥイギーの激しさほどではない。
しかし腰を掴まれ、スェラドの好きなような突き上げられて意識がブチブチ途切れ始める。
「ああ! いいっ! おく、おくぅ! いいですぅ、きもち、いいぃっ! スェラドさまのぉ! きもちいい! もっと、もっとぉ!」
「っ……!」
お腹の中が溶ける。
お尻の穴が熱くて痺れてとても気持ちがいい。
ヒオリは自分がどんな表情で悦び、どんな言葉を発しているのか分からなくなっていた。
『才能がある』
あの調教師二人は揃って、それを口にしていた。
もちろん、その事はスェラドも告げられている。
だからあの二人、特にクォドにヒオリへ触れるな、と命じたのだ。
「ヒオリ……!」
「スェラドさまぁ……!」
抱き締め合いながら唇を合わせて、ヒオリは中に広がる熱いものを感じるのに集中した。
これが、中で射精される感覚。
「……あ、ああ……スェラドさまの……子種が……ぼくのなかにぃ……あったかい……」
うっとりとした声が漏れる。
初めての、最後までの性行為。
これが本当の性行為なのだ。
クォドとルゥイギーがしていた、あの。
「……もう、一回……スェラドさま……シたい、です……」
「……、……よかろう、次は手加減なしだ」
「はいっ」
それからまたねだって、三回はしただろうか。
翌日の移動中はスェラドもヒオリも一度たりとて起きなかった。
***
東の国『エイラン』に着いたのは数日後。
そこから南東に進んだ森の奥地に『魔窟』は発見された。
『魔窟』を焼き払うのに必要なものは聖火。
「ヒオリ、エイランの王都に屋敷が用意されている。貴殿は世話係たちとそこで待て」
「…………」
「不満げな顔をするな。『魔窟』を焼き払うのは俺でなければ出来ん」
「どういう事なのですか」
と唇を尖らすヒオリ。
はあ、と溜息を吐くスェラド。
「ロンシ、人払いは」
「すでに終えております」
「?」
人払いしなければならないような話が?
首を傾げるとスェラドの顔が近づいてくる。
口づけでもされるのか。
この話の流れで、と身構えると唇が寄せられたのはヒオリの耳元。
「黒曜の短剣で燃やすのだ。この大陸以外にも、古の勇者が遺した宝物具がある。武具の類は隣大陸が全て持ち去り、この大陸にはこれ一つしかない」
「……! え? あ、あの、それは童話……お伽話では……? 子どもが聞く絵空事……」
「ではない。史実なのだそうだ。……その証拠として、各大陸に勇者の装備品が遺されている。遥か昔は勇者の装備品……今は聖遺物や宝物具と呼ばれているが……それらを奪い合い大陸同士で戦が頻発した。この世界に時折現れる『魔窟』は勇者が倒した『魔王』の残滓。それを消すのには勇者の遺したこの宝物具しかない。故に大陸同士で奪い合ったのだ」
「…………っ!」
ヒオリに見せられた黒曜の短剣。
それが……勇者の宝物具。
実物を見せられては声も出ない。
ヒオリもそこまで馬鹿ではないので、人払いされた理由は分かる。
その存在が露呈すれば、せっかく平定したこの大陸は勇者の宝物具を巡りまた戦いの日々に逆戻りとなるのだろう。
中には大陸を統一後に、他の大陸に攻め込もうと考える者も現れるかもしれない。
『魔窟』はそれほどまでに驚異。
しかし、この国にはこれ一つしかない。
「本来ならば俺ではなく、身動きの取れる『勇者』に預けるものだ。だが『勇者』は異界の民でなければならない。それに俺は王……この国の皇帝だ。俺は勇者ではない。しかし、今この短剣を預かる者者として『魔窟』を消滅させてくる。……分かったらヒオリを守れ、リンレ、ウォンレ。そのために『エイラン』の戦闘種族と呼ばれたお前たちを連れてきたのだ」
「!?」
驚いて振り返ると、ロンシの両脇には兄弟らしき世話係が抱えられていた。
二人とも膝をつき、頭を下げさせられている。
(え? え!? ど、どういう状況……!?)
驚いているとロンシが二人を地面に顔面から落ちるよう、突き飛ばす。
二人が顎を床にぶつけたのを見て、ヒオリは慌てて駆け寄った。
「ロンシ、暴力はいけません!」
「この程度で怪我をするほど、やわな鍛え方はしておりませんよ」
「え、えぇ……し、しかし……」
「くっ……」
「不覚……ジジィ」
「強すぎ……」
と、交互に口にする。
布の取れた二人の顔は、全く同じ。
本当に兄弟……双子だったようだ。
「貴様らの故郷は俺が救ってやる。この国の皇帝として当然の事。だから貴様らは俺の留守を守れ。ヒオリを守れ。俺の代わりにな。出来ないとは言わせぬ」
「「っ……」」
「スェラド様……」
もしかしたら、スェラドはヒオリの知らぬところで他にも覚悟もしていたのかもしれない。
ヒオリに本気で拒絶されて、逃げていかれてしまう事も。
その時はこの双子がヒオリを連れて行くだろうとも。
それから最悪の場合自分は死ぬであろうとも……。
「…………スェラド様、僕は待ちますし……もしスェラド様がお帰りにならなかったら、お迎えに行きますからね」
「! …………そうはならんさ」
「はい。そう信じております」
そしてもしも、自分が死んだら……この双子がヒオリを帝都、あるいは故郷の国へ……。
きっとそこまで考えていたのだろう。
だが、ヒオリはそれに対して首を振る。
ずっと待つ。
待ち続ける。
死んだというのなら迎えに行く。
そして、その埋葬の時、同じ棺に入れてもらう。
そのくらいの覚悟で笑顔を向けた。
その一ヶ月後、帝都で凱旋パレードが行われる。
無事に『魔窟』を消し去り、数千の異形を倒した英雄皇帝の帰還を祝ってのものだ。
あと数年、数十年はこの大陸に『魔窟』は現れないだろう。
そうして数週間はお祭り騒ぎが続く。
しかし、ヒオリは……人質宮は帰還してからはいつも通りの日々が戻ってきた。
違うのは世話係たちの顔の布が取れた事と、彼らの名前をヒオリが呼ぶようになった事。
クォドのセクハラにロンシが肘鉄をかます事は日常茶飯事となり、双子は「皇帝が約束を守ったから」とこれまで以上にヒオリに尽くしてくれるようになった。
ルゥイギーには少々いけない事を吹き込まれたりはするものの、それが夜、スェラドを迎えるのにとても役立っている。
「はあ、今日も疲れた」
「お疲れ様です」
「存分に俺を癒せよ、ヒオリ」
「はい、頑張ります」
黒曜帝国の皇帝陛下は……お世継ぎを残すおつもりがないそうだ。
そしてその代わり、優秀な皇帝候補を育てておられる。
その中の誰かが次の皇帝になるのだろう。
世襲など古いと言い捨てて、今日も陛下が通われるのは人質宮。
甘い檻に閉じ込められたのは、果たしてどちらなのだろう。
了
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初めまして(☆^ш^)
ヒオリが純粋すぎてやられました!
何も分からないまま人質にされて、それでも健気なヒオリ可愛かったです♪
2人が結ばれたあとの話が読みたいです♪