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トリニィの迷宮 3
しおりを挟むその後もサクサク上へと登り、夕方には『魔法使い見習い』と『魔獣使い見習い』のレベルが40に到達。
六層目まで登って、ようやくボス部屋が現れた。
壁には蔦が隙間なく張り巡らされており、まるで蔦の壁。
地面も蔦だらけでぼこぼこしていて、足を引っかけたら転びそうだ。
ステータスをぽちぽちといじって『魔法使い見習い』と『魔獣使い見習い』の上限レベルを50まで解放する。
『魔法使い』と『魔獣使い』は取得可能ではあるものの、とりあえずまだ取得は見送った。
(それにしても、本当にぽこぽこレベルが上がるなぁ)
職業見習い系は必要経験値が本職よりも少なくて済むとはいえ、ここに来るまででこんなにレベルが上がるとは思わなかった。
本当はもっと多くの『見習い』レベルを上限まで上げて、自分の適正とできることを増やすべきなのだが、一度沸いた興味は止められない。
(見習いをレベル100まであげたらどうなるんだろう?)
必要経験値は『見習い』であっても、これからどんどん増えていく。
ドキドキワクワクとボス部屋を見る。
ここをギルマスたちが踏破したら、レベル50に到達するだろうか?
自分ではなにもできていないので、心苦しくはある。
けれど、この先——『見習い』レベル100は見てみたい。
アンジェリィがボス部屋の前に転移陣を敷くと、ギルマスが立ち上がった。
「さて、多数決だ。ここで帰るか、六層目のボス部屋を見てから帰るか」
「ボス部屋覗く! 倒す! なっ!」
「えー、アンジェリィさんはもう帰りたいぉ」
「エルンさんはどう思いますか?」
「え、お、俺ですか? ……お、俺は……その、戦えないので……見てるだけなのとても……」
意見などできない、と言おうとしたら、シシリィに覗き込まれた。
大きな瞳に見つめられて、顔が熱くなっていく。
「トリニィはエルンさんの故郷ですよね?」
「うえ? は、はい」
「美味しいご飯屋さんはご存じですか?」
「え? あ、は、はい。それならもちろん!」
エルンが引き取られた宿屋。
遅くなれば王都には帰れないかもしれない。
ならば、そこを案内する。
泊まるなら自分が育った宿を紹介したい。
大将の作る飯は最高に美味しいし、久しぶりに幼馴染や女将さんにも会いたいし。
「じゃあ、大丈夫ですね。わたしも六層のボスは確認しておきたいと思います」
「決まりだな。アンジェリィ、ここだけ手伝ってくれるか? 手当は出す」
「え、エドとデートできるぉ? やるやるやる気出たぉー!」
「待て、デートするとは言ってねぇ。金銭支給の手当だ」
「それならいらないぉ。エドとのデートがいいぉ」
「ぐっ」
これはなかなかの究極の選択。
「丸一日つきあえなんて言わないぉ~。王都の夜景が見えるレストランて夕飯を食べて、ちょっと優雅な時間を過ごして解散って感じてもいいぉ~。その時に間違いが起こっても、大人のやることだから仕方ない——」
「おっ前マッジいい加減ししろよなっ!」
「喧嘩すんな! はぁーーーー、もう、わかったわかった。晩飯ぐらいなら付き合ってやるよ。お互い忙しいからな」
「やったぉーーーー!」
「ちっ!」
両手を掲げて喜ぶアンジェリィと、面白くなさそうなベリアーヌ。
疲れた顔のギルマスに、眉尻を下げるエルン。
「アンジェリィさん、ちゃんとお父さんの都合のことまで考えてくれてるんですよね……」
「え?」
「なんでもありません。行きましょう!」
「……」
シシリィは複雑そうだ。
けれど、あの呟きの意味はよくわかる。
アンジェリィは、自分の気持ちや都合だけでギルマスを口説いてるわけではない。
ちゃんとギルマスの気持ちや都合も考えてる。
変な人だなぁ、とは思うけれど、やはり悪い人ではない。
前を進む三人を見ながら、ハッとする。
「みゅーん!」
タータがエルンの肩から降りて鳴く。
理由はボス部屋の中にいた“ボス”。
ちまっとした、そこにいたのはラッキーエアリス。
タータとは違い、長い一角しかない。
体も、タータより一回りほど大きく中型犬並み。
「……クイーンラッキーエアリス……!」
「みゅん、みゅんみゅーん!」
「キシャァァァ!」
威嚇されて、タータは震えてからエルンの肩に戻ってくる。
クイーンラッキーエアリス。
レア魔獣であるラッキーエアリスの女王。
レア魔獣の中の、さらにレア魔獣である。
その出現率は極々稀であり、金級迷宮のボス部屋に超ランダムでレア出現するという。
ラッキーエアリスとは違い、テイムして召喚獣にすることはできない——と言われている。
少なくとも例がない。
体が一回り大きく、角が一本のみ。
クイーンラッキーエアリスの角の効果は『復活』。
死んで一日以内なら、蘇生ができるという。
「これは……」
「っ」
「い、イケ……イケなくなぃ、お?」
ちなみにクイーンラッキーエアリスの危険度は赤。強さは10。
騎士団が総戦力でようやく戦える天災、ドラゴンと同等。
「逃げるぞ!」
「みゅーん!」
いくら『剣聖見習い』二人、『賢者見習い』が一人と強豪ぞろいとはいえ、とてもではないが疲弊している冒険者が五人ぽっちで相手をできるものではない。
ギルマスの合図で入口に戻るが——
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