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わかっていても
しおりを挟む「シドにそんなトラウマがあるとは知らなかった」
「その上でシドとえっちするにはどうしたらいいと思う?」
「え? ……えぇと……僕からはなんとも……」
翌日、図書室にて。
リグに子育てに関する本を読ませてほしいと頼んでいたので、シドがフィリックスに訓練をつけている間ノインはリグと図書室で本の整理中。
昨日の話をしつつ、その上でこの治りようのないムラムラを相談した。
シドが未成年に手を出すことに嫌悪感がある、というのはなんとなく理解した。
が、その上でもやはり、シドのち○こがほしい。
「昨日自分で後ろ弄ってみたんだけどまあ、物足りない。リグさんは毎日フィリックスさんとえっちできていいよね」
「毎日は断られる。習慣化するとシないと眠れない、みたいになるといけないからと」
「ハァーーーーーー……そうなんだぁーーー」
「僕が最近……夢見が悪くて……寝不足気味なのを心配してくれて……。でも、それなら夢を見ないくらいいっぱいシてほしいのだが」
「え。フィリックスさんはリグさんのお願いならなんでも聞くんだと思った」
まさかリグが誘っても「ダメ」と言うとは。
よいせ、と脚立の上に座り、一番上の本を取り出す。
子育て関連の本は需要がまったくないので、誰も手にしないような場所に追いやられていた。
元々蔵書自体少ないので、見つけ出せた子育て本は三冊しかない。
「僕が“お願い”すると、時々よくわからないことを言う」
「よくわからないこと? どんなこと?」
「『そんなにおれのお願い聞いてくれなくていい』って。僕がフィリックスの願いを叶えているらしい。そのつもりはないのだが」
「アー……ア、ソウナンダー」
なんで息を吸うように惚気られるんだ、この人たちはと思う。
そろそろ恐怖すら感じてきたぞ。
「でも確かにちょっと目元、クマになってるね」
「やはりそうか?」
「うん、大丈夫?」
「フィーが泊まらない日はどうしても眠れなくて……」
「ダロアログが夢に出てくるから?」
「ああ」
「……どんな夢なのか聞いてもいい?」
脚立から下りて、首を傾げて聞いてみる。
一応、話したくないのなら無理には聞かない体で。
しかし、リグはまったく気にしていないのか「色々あるけれど、八つくらいの頃に……」と話し始めてくれた。
「窓辺に小鳥が止まるようになった。昼」
「え? うん。小鳥? ご飯あげてたとか?」
「いや、体質的にそういう生き物に好かれやすかった。本を読む時に窓の側で読んでいることが多くて」
そういえばリグとリョウはよく肩に小鳥や小型の召喚魔を乗せていることがある。
おあげとおかきも普段は小さな姿でリョウの肩に乗っているし、野鳥が謎に寄ってきて気がつくと二十羽ぐらいになっているところも見かけた。
あれかぁ、と思い出していると、リグも「あの頃は小鳥が可愛いと思っていて」と話を続ける。
なんとも意味深な言い方だ。
今は小鳥を愛らしいと思わないのだろうか?
そんなふうに思ったけれど、リグがふと、目を閉じる。
思い出しているからなのかな、と普通なら思う。
「なんとなく指を嘴の方に近づけてみた時に、ダロアログがその小鳥をナイフで突き潰して殺してしまったんだ」
「……は? え? な、なんで?」
「さあ……? でも驚いて見上げたら、ダロアログはずいぶん楽しそうに見下ろして……小鳥をナイフごと格子のついた窓の外に投げ捨てた。そのまま肩を掴まれて、寝室に連れて行かれたのだけれど――あの時に、思ったんだ。『ああ、この世界には、命を物のように思う人間がいるんだな』と」
小鳥を殺された時のことを思い出して、目を閉じていたんだろうな、と思った。
他人が少しでも愛おしい、と慈しむような心を向けている存在を、平然と踏み躙れるような人間がこの世にはいるのだ。
リグはそれをその出来事で悟った。
そして、自分も小鳥のような命であること。
兄もそういう存在だということ。
「僕に関わるとみんなこうなるのかもしれないと思った」
兄もそうなるんじゃないか、と思った矢先、リグをシドが連れ出したことがある。
最近の夢は、その続きが多いらしい。
リグを連れ出したシドを、ダロアログが捕まえてボコボコに殴って蹴って、隠れ家の前に転がした。
兄が死んでしまうと泣き喚いていたリグは隠れ家に連れ込まれ、手錠で窓の格子に繋がれる。
胸に手を当てて「ここに」と指差す。
「ピアスを開けられて」
「え? 胸に?」
「釘のようなもので、抓って引っ張られて、ズブリと」
「ヒイイィ! い、痛い痛い痛い!」
「もう片方も、ズブリと」
「ヒィィィィイイイィ!」
指でどのように貫かれたのかを現しつつ、左右の乳首に穴を開けられた話をする。
麻酔も消毒もなしに、幼い子どもが受けるにはあまりにも凄惨な仕打ちだ。
痛いのは気持ちいいこともあるけれど、穴を開けられたら絶対に痛い。
乳首も大事な性感帯なので、穴を開けられると聞くと思わず耳を塞いで「痛い痛い痛い!」と想像だけで悶絶してしまう。
「本当に、とても痛くて……人生で一番痛くて……今までを振り返っても、あれが一番痛くて……」
「それはそうでしょ~! 聞いてるだけで痛いよぉ~~~!」
「一晩中泣いてしまって、服も着られなくて、犯されている痛みよりも胸がずっと痛くて……触ることもできないくらい赤く腫れて、熱も出てきて……あの時ほど死んでしまうんじゃないかと思ったことはない。朝になってシドが【神霊国ミスティオード】の魔石を投げ込んでくれたから、治癒天使を召喚してピアスを外して治療してもらったんだけれど……」
兄が生きていて嬉しかった、という気持ちと、ひたすらに胸が痛かった、と言う。
天使に治癒魔法をかけてもらったが一週間ほど腫れは引かず、胸を強く弄られた時はその時の痛みを思い出して歯の奥がカタカタ鳴るほど震えてしまうそうだ。
「フィーはすごく、いちいち加減を確認しながらシてくれるから、あまりあの時の痛みを思い出したことはないのだが……」
「ア、ソウナンダー」
油断するとぶっ込んでくるな。
「でも最近夢に見る。痛くて堪らなかった夜の夢。貫かれた時の感触や痛みも。シドが血を流して目の前で倒れていて、それだけでも……怖くて堪らなくて……」
「聞いてるだけでも痛いもん。フィリックスさんには触られても平気なんでしょ?」
「ああ、だからその夢を見たら、いっぱい胸にもキスしてもらう」
「ああもうクッソ羨ましい……」
油断するとぶっ込んでくるので、ついに本音が漏れた。
そういえばお尻ばかりで最近乳首も弄ってもらっていない。
というか、あの施設以来乳首も触ってないと気づいて、今日の発情が終わってから自分で慰めるのも必要かもしれないと考え始めた。
しかし、あの器具たちにされたような快楽は、自分でシたのでは得られないだろう。
それだけが悔しいというか、腹が立つというか。
「いいなぁ。フィリックスさんはめっちゃ優しくチュッチュッて吸って、撫でてくれるんだろうなぁ。ボクはシドに強めに吸ってもらいたい」
「えーと……それは……僕からはなんとも……」
「いや、聞いたんだよ? 昨日。リグさんがダロアログに性的な虐待されてたから、シドは未成年にやらしいことするの嫌っていう話はね、聞いたんだよ? 理解もしたよ? それは仕方ないなって思ったよ? 酷いこと言っちゃったなって反省もしたよ? でもそれはそれとしてじゃあボクのこの焚きつけられたムラムラはどうしてくれるの? って話だと思わない?」
「ぼ……僕からは、なんとも……」
実弟に実兄とえっちしたいと真顔で言えばそういう反応にしかならないだろう。
そんなことはわかっているけれど、もはや八つ当たりでもしなければ正気を保っていられない。
というか、こんなにムラムラを募らせているノインの前で、堂々とイチャイチャ惚気を自慢してくるリグが悪いとしか思えない。
「シドが言ってることはわかるよ? わかるけど、じゃあボクには我慢しろっていうのは、それはそれで酷ってことを理解してほしいの! リグさんならわかってくれるよねぇ!? えっちしたくてできないの、わかってくれる!? ムラムラが止まるところを知らないの! もう自分が今発情状態なのか通常運転なのかわからないの! ちん○咥えることしか考えられないの!」
「それは、えっと……淫紋と第二異次元維持でも消費しきれなかった魔力が淫紋に蓄積して暴走しているのでは……」
「シドのち○こ舐めたい!」
「発情状態なのでは? 魔力供給してみるか?」
「リグさんじゃなくてシドのち○こからほしい……!」
「う、うーん……僕で我慢してもらうことはできないだろうか……その、なんとか……」
『い、愛し子よ、ノインのこの状況は、なんとかならないものか?』
ついに見かねてガラティーンまでリグに縋ってくる始末。
少し考え込んでから、ノインを図書室の隣にある資料室の方へと連れていき、椅子に座らせて「淫紋を見せてほしい」と言う。
素直にお腹を差し出すノインの淫紋に手を触れてみる。
「淫紋は発動していないのだが……」
「ボク今通常状態でコレなのか……」
謎のショックを受けるリグとノイン。
少しだけ頭が冷えたのか、ノインは頭を抱える。
「ボクって淫紋に頭を乗っとられてるわけじゃないんだよね……? ち○ことえっちのことしか考えられないんだけど。ここにくる前も部屋で一人で『えっちしたい……』って呟いてて……無意識に」
「う、ううん……発動していない淫紋に思考を侵蝕する効力はないので……思春期特有のモノだと思う」
「思春期ってこんなにえっちなことしか考えられないものなの……? ヤバくない? みんなどうやって乗り越えたの……? ボク股間よりもお尻の方が気持ちいいって知っちゃってるから、お尻の奥が疼いて仕方ないんだけど」
「僕は……性的なことは痛くて怖いことだったから……思春期自体がなかったから、なんとも……」
けれどお尻の奥が欲しくて疼くのはわかる、と同意はいただけたので「でしょー!? リグさんはフィリックスさんにねだればもらえるからいいよねえええ!」とまた始まってしまう。
困らせるのはわかっているのに。
「……あ……」
「ん……? 淫紋が働き始めたな。少し待て、シドを呼ぶから」
「ん……う、うん……」
暴走しすぎたのか、お腹がじわりと熱くなる。
そんなお腹を抱えて前のめりになり、荒くなり始めた呼吸を必死に整えようとした。
リグが端末でシドを呼び出している中、唾液が床に落ちる。
(そうだ……シドが指挿れられるように、準備しないと……)
でないと、また猛烈に焦らされる。
リグに声をかけて、スライムを召喚してもらう。
が、リグが召喚したスライムは見たこともない形をしていた。
「え? なに、これ?」
「以前言っていた、インキュバススライムに来てもらった」
『待て待て待て!? 愛し子殿よ、それはなんか色々生々しくてアレだからとそれを召喚する話は流れたのではなかったのか!?』
ギョッとしたガラティーンが叫ぶ。
確かにノインが「本物がいい」と言って流れた話だったように思う。
が、リグは「シドは……多分子ども相手にはしないと思うので、これで一度スッキリした方がいいのではないか」と真顔で言い放った。
半透明な人の形を模したスライムが、段々とシドの姿に見えてきて「まずい」と感じる。
けれど、ズボンを左手が無理やり膝まで脱がしたところでスライムの姿がシドの姿に完全に見えるようになってしまった。
そうなるともう、拒む力は上手く出ない。
目の前には男性器を模した触手を生やしたシドという、悪夢のような、理想のようなモノがいるだけだ。
「お望み通り、腹の奥まで綺麗にしてからブチ込んでやるよ」
「は……ぁ、わ……ぁ……あっ、ああっ!」
指が入ってくる。
スライムのものとは思えない、芯のある三本の指の感触。
シドの――指そのもの。
これも記憶を模写されているからだろう。
シドではありえない、ノインの弱いところをわざと擦る動きに腰が砕けた。
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