終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
185 / 385
ハニュレオ編

オズの正体

しおりを挟む
 
「結晶病を、操る……!? な、何者だ!?」
「え? あれ? ご紹介してませんでしたか? 我が国、ルオートニス王国の守護戦神、ラウトと申します。千年前に世界を滅ぼすほどの戦争が行われたのに怒り、愚かな人類に結晶病という鉄槌を下した怒りの神です。今は私を認めてルオートニスの守護神となってくださっています」
「なっ、なんじゃとぉ!?」

 あれ? 言ってなかったっけ? 本当に?
 ソードリオ王にも周りの騎士やエドワードの兵たちにもそりゃもうびっくらこかれてしまった。
 ご、ごめんなさーい?

「……神? ギア5に到達していたのか?」
「まぁな。知っていたのか?」
「ザードの提唱は聞いている。……本当に神になるのか……」

 シズフさんとラウトの会話が最低限過ぎてこっちは「なに言ってんの?」ってなるよ。
 俺はかろうじてわかるけれども。
 口下手さんたちめぇ。

「それよりも説明しろ。デュレオ・ビドロは共和主義連合国軍……貴様の“歌い手”だろう? ヴァンパイアのような生き物だったのにも驚いたが……コレがなんなのか貴様は知っていたのか?」

 そうだ! デュレオ・ビドロ!
 ギギが前に教えてくれた、千年前で『もっとも有名な五人の軍人』の一人!
 共和主義連合国軍広報部、シンガーソングライターにしてギア・フィーネの“歌い手”の一角。
 そして、唯一“男性”の“歌い手”だった人。

「こ、この人が『デュレオ・ビドロ』なの?」
「俺でも顔は知っている。化け物だったのは初めて知った」
「……デュレオは化け物ではない。御菊名・イヴ・ルナージュの研究結果の一つだ」
「だ、誰?」
「王苑寺ギアンとナルミの母にあたる。ある意味デュレオも御菊名・イヴ・ルナージュの息子だな」
「「え」」

 俺とラウトの声が重なる。
 王苑寺ギアンはギア・フィーネの創造者。
 ナルミさんは、うちの国にいるあのナルミさんだと思う。
 そして、このデュレオ・ビドロも?

「ろ——ろくでもない……?」
「正解だ。あの女は本当にろくでもない。共和主義連合国軍で行われていたノーティス手術に使われるノーティスナノマシンは、デュレオの体内結晶から作られていたらしいからな。強化ノーティス手術にもデュレオの細胞が使われていた。ある意味、俺はデュレオと血が近い」
「…………」

 衝撃的すぎるんですが。
 そろそろ驚かなくなってきたと思っていたけど、意外と驚くもんだなあ。

「ノーティス手術や強化ノーティス手術を施された人間に拒絶反応——副作用が出るのは当然ということか」
「そうだな」

 人間がオズを——デュレオを食えば、デュレオの血肉が食った人間さえ捕食する。
 そう、言ってたからか。
 それを体内に取り込み、強化人間になれば当然、副作用は害あるものになる。
 やなこと考えるし、実行するもんだよ、千年前の人たち。オェ……。

「“歌い手”だったのも王苑寺ギアンとデュレオの血が近いからだろう。他の二人の“歌い手”はよくわからない」
「意外すぎる接点だな。というか、なにを研究したらこんなのができるんだ?」
「不老不死と聞いている。御菊名・イヴ・ルナージュは永遠の若さと命を望んだらしい。だがデュレオは男体だったから魂と精神の定着ができなかったとか。人格データを『クイーン』に移植して、ネットワーク内に生きようとしたらしいが、それもザードのワクチンで駆逐した」
「は!? 『クイーン』の人格……!? それは俺も知らないぞ!? 『クイーン』はカネス・ヴィナティキで製造されたのではなかったのか!?」
大和タイワからカネス・ヴィナティキに渡ったと聞いている」
「っ……!」

 ……シズフさんとラウト、二人にしかわからない会話しないでほしい。
 俺は前世の知識と事情を聞いてるからわりかし理解できるけど、現地人の皆さんは「???」ってなってるよ。
 無理もないよね。
 っていうか、『クイーン』ってあのコンピューターウイルスのことだよな?
 そんなろくでもない研究者の人格データを使ったものだったのか。
 そりゃウイルスに変質するよ。

「千年前、殺すと約束した」
「こいつをか?」
「ビームライフルで細胞一つ残さず消し飛ばしたと思ったのだが……それでも死ぬことができなかったんだな」

 ほとんど独白のように呟いて、シズフさんは結晶の中に閉じ込められたデュレオを見上げた。
 ただ無駄に殺してるように見えたけど、本当に殺すつもりだったのか。
 というか、今の言い方は、まるで……。

「デュレオ・ビドロは死にたかったんですか?」
「生み出されておきながら失敗作と罵られ、死ぬこともできないのに人の命を喰わねばならず、その餌を強くするための素材にされて——生き永らえたいとは思わんだろう」
「……」

 想像すると、それは、まあ。

「八つ当たりのように人間関係を破壊して、国を世界を滅ぼそうとする。根っから邪悪だが、最初から邪悪だったわけではないだろう」
「貴様、祖国を滅ぼされたのはこれのせいなのだろう?」

 ああ、さっきデュレオが自分で言ってたね。
 ミシアを瓦解に追い込んだのは、自分だっ、て。
 シズフさんはミシアの延命薬で生き延びていた。
 それがなくなって、延命薬も望めなくなったはず。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

処理中です...