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二人の聖女と悪魔の亡霊編
聖女たち
しおりを挟むもちろん、デュレオはそれだけではないんだけど。
……デュレオに頼まれた“弟”の捜索もしてあげたいけど、ナルミさんたちにも一応話を通しておいた方がいいかな。
「おや——」
おっさんが視線を向けた方から人の気配。
俺を庇うように、ジェラルドが立つ。
頭からな足元まであるマントを被った二人組。
体格からして、二人とも女の人、か?
「あなた方は?」
「紹介します、ヒューバート王子。あちらのお二人がソーフトレスとコルテレで活動しておられる、聖域の聖女」
すっ、とおっさんが右手を二人の方へ向けて、紹介してくれた。
それを聞き、二人の女の人がフードを取る。
「薄いオレンジの髪の女性が、聖女シャルロット・ユン・ルレーン王女殿下。水色の髪の女性が聖女ミレルダ・ザドクリフ侯爵令嬢です」
「————」
口を開いて固まる。
俺だけではなく、ディアスとナルミさんまで珍しく驚愕の表情。
ルレーン。
ルレーン国の——王女。
オレンジ色の長い髪を左右おさげにして、腰まで垂らした青い瞳の美少女がシャルロット・ユン・ルレーン。
そして、もう一人の……薄い水色の髪にピンク色の毛先を肩まで伸ばした、赤い瞳の美少女がミレルダ・ザドクリフ侯爵令嬢。
「…………。え!? 二人とも!? 二人とも聖女なのか!?」
「? そうっすよ? あれ? 言ってませんでした?」
「言ってないよ!?」
確かにおっさん、「聖女殿たち」って呼んでたけども。
聖女と護衛、って意味かと思ったら!
聖女二人って意味か!
「あ、っこほん。失礼しました。俺はルオートニス王国第一王子ヒューバート・ルオートニスと申します。お会いできて光栄です、聖女シャルロット、聖女ミレルダ」
「あ、は、初めまして。わたくしはシャルロット・ユン・ルレーン。ルレーン王国第一王女です。こちらこそ、お会いできて嬉しいですわ」
「ボクはルレーン国、ザドクリフ侯爵家のミレルダと申します。シャルロット王女の従者兼護衛を務めております。以後お見知り置きください」
シャルロット王女の美しいカーテシー。
対してミレルダのボウ・アンド・スクレープ。
紳士のお辞儀の仕方だが、ズボンスタイルの彼女には似合っている。
二人は姿勢を正すと、シャルロット王女が微笑む。
うっ…………美しい。
「いや! 俺はレナ一筋なので!」
「声に出てますよ、ヒューバート王子」
トニスのおっさんに突っ込まれてしまったが、いや、うん、マジでヤバいほど美しいぞ、この王女。
歳は同じくらい。
気品と親しみやすさのある容姿に、嫋やかな佇まい。
花も眩みそうな微笑みは、レナと初めてあった時のような衝撃を俺に与えた。
美しい。
冗談抜き、お世辞抜きで美しい!
「でも俺はレナ一筋なので!」
「本当全部口に出てるんですよね……」
「ヒューバートは面食いだからなぁ~。でも女の子でこうなるのはレナだけだったんだけど、本当に好みみたいだねぇ~」
「うわああああ! でも俺はレナ一筋なので!」
「うん、わかってるよ~」
ジェラルドに慰められてしまった!
くそ! なんでレナがいない時に限ってこんな美少女に出会ってしまったんだ!
いや、だとしても俺はレナ一筋なので!
「レナ、様……?」
「あ、俺の婚約者で我が国の聖女です。今回は帰国後に婚姻の儀を行うために、準備が多いので置いてきました」
正確にはレナの王妃教育の仕上げだ。
……あと成績……。
今頃きっと頑張ってるだろうし、俺も頑張らなければな!
「そうなのですね! ご結婚なさるなんて、おめでとうございます! レナ様にもお会いしてみたい……。わたくしミレルダ以外の聖女には、会ったことがありませんの」
うちの国は聖殿が聖女候補から聖女を選定するけど、基準は謎。
聖殿長が聖殿長だったからな。
レオナルドになってからは、ある一定の基準は設けるはず。
他の国の聖女の選定するのだろう?
ソーフトレスとコルテレは聖女がいないのかな?
まあ、それはそれとして。
「ご招待しますよ」
「……え、ええと」
「大丈夫です。俺はそのために——国と国を再び繋げるために来たのですから」
にっこり笑ってまずは石晶巨兵の説明をする。
聖女の魔法が必要不可欠なので、聖女であるシャルロット王女とミレルダ嬢に協力してほしい。
そして、この石晶巨兵でソーフトレスとコルテレの戦争を止める。
交渉はプロ=ナルミさんにお任せするつもりだけど。
「こんな巨大な魔道具が……」
「あ、それからルレーン国の方にお聞きしたかったんですが……こ、これ、この機体……」
と、俺が石晶巨兵を見上げる二人にその斜め後ろの機体に視線を移していただく。
二人は「あ」という顔になり、俺の方を見る。
や、やはり見覚えがあるんだろうか……。
「ギア・フィーネ四号機、イノセント・ゼロですね!」
「やはりご存じ!」
「はい。ですが、我が国には言い伝えがありました。『いつかギア・フィーネが世界に再び求められる時代が来るだろう。その時、ギア・フィーネは自ら主人を選び出す。その者を見極め、どうか守ってほしい——』と」
「え」
思わず頭を抱えた俺に、シャルロット王女とミレルダ嬢は顔を見合わせてから笑う。
あれ、思っていたのと違う展開。
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