終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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二人の聖女と悪魔の亡霊編

俺天災に愛されすぎでは?(1)

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「ぶん殴ってでも連れて帰ってもらう。ソーフトレスのソルドレッド王も同様だ。そのためにお前たちを連れてきた。両国王が無能であるのならば、代理の王をすぐに用意してもらう。それができないのならば、石晶巨兵クォーツドールは聖域ルレーン国のみに置く。今回の件で、ルレーン国も貴国らへの対応は変わるだろう。いいか? 正念場だぞ、卿ら」

 俺が間違えたら、ディアスとラウトとジェラルドとランディ、そしてレナがきっと叱ってくれる。
 ナルミさんがどうして間違えたのかを教えてくれるはずだし、デュレオは指差して嘲笑うだろう。
 シズフさんはめちゃくちゃ興味なさそうだろうなぁ。
 俺は幸せだ。とても恵まれている。
 誰に裏切られても「仕方ない」と思える。
 俺は凡人だから、みんなが導いてくれたらきっと大丈夫。

「ハニュレオの時よりしんどいな、今回」
「戦時中の国へ来ているんだから当たり前だろう? 正直思っていたよりだいぶ生ぬるいぐらいだけど」

 俺はとてもしんどいのだが、ナルミさんたちに言わせると「ぬるい」らしい。
 千年前、ほんとどんだけキツかったんだよぉ。怖いよぉ。

「千年前ならもうとっくにルレーン国は血の海だな」
「占拠されて、上位の貴族以外は貴賤問わず処刑されているだろう」
「女子どもは見せしめとしてまともな死に方をさせてもらえず、死体は無惨なものばかりになるよねぇ」
「も、もうやめて?」

 シャルロット様とミレルダ嬢が震え始めているから。
 半泣きになってきているから。
 不安を煽るのやめてあげて。

『おい』
「ウワー! ……ファントム!」
『ルレーン国上空に着いたぞ。けど、それよりちょっとこれを見ろ。なんだ? これ』
「え?」

 壁がいきなりモニターになる。
 そしてそこに映し出されたのは、ついこの間も目にしたものだ。
 いや、この頻度で見ることになるのおかしくない?
 真っ白な霧を纏って進んでくる——巨大なな、あまりにも巨大な青い龍。

「っ! 結晶化津波……! な、なんで!」
『結晶化津波……? なんだそれ?』

 しかも青い龍——青龍だ!
 ハニュレオの時に現れた陸帝竜ベヒモスよりは細いが、長さは陸帝竜ベヒモス二体分。
 つまり、クソ長い。町が二つ並んできた感じである。
 いや、ふざけんなよ?
 しかもお供はすべて竜種だ。
 つまり全体的に硬い強いデカブツしかいない。

「結晶化津波!? ねぇ、嘘でしょ!? ルレーン国に向かっているよ!?」
「そ、そんな! このタイミングで……そんな!」
「しかも竜種ばかりだから速度が速い! すぐに迎撃を始めないと、ルレーン国の結界を破られるぞ!」

 結晶化津波って天災だろ?
 こんな頻度で起こるものか?
 ラウトの言う通り今回は速度も問題だ。
 一秒でも早く対応しなければ間に合わない。

「っ! ラウト、ディアス! 先行してほしい! おっさん、俺の護衛は解除! ジェラルドと一緒にシャルロット様とミレルダ嬢を連れて結界の強化と、撃ち漏らしの討伐を頼む! トニスのおっさんは近隣の村の避難誘導をお願い!」
「よろしいんで?」
「問題ない!」

 [隠遁]魔法で姿を隠していたトニスのおっさんが姿を現す。
 辺境伯たちは驚いていたが、よく怒られるので俺だってこのくらいはしますよ。

「ファントム、エアーフリートは戦える!?」
『現状航行に問題はないが、戦闘ともなるとエネルギー不足だな。ギア・フィーネを一機積んだままなら主砲を使えるが……俺一人で艦の制御と攻撃を全部やるのは、ハッキングが使えない今さすがに無理だぞ』
「ならナルミさん、手伝ってくれ! ギア・フィーネは四号機を残す。俺は一番——弱いから!」

 本当は涙が出そうなほど悔しいけれど、思い知ったばかりなんだ。
 俺は本当に、マジで、役に立たないぐらいに弱い。
 戦場に立っても足手纏いになる。

「ヒューバート様……」
「デリセット卿とオルヴォッド卿、そしてその部下の面々も気焔キエンをミレルダ嬢に貸し出すから、一緒にルレーン国に降りて自国の王を探し出せ! このような事態にまだ保身を優先させるようなら、その時点でその国の王と交渉はしない! 肝に銘じろ!」
「「「っは!」」」
「ぎょ、御意に!」

 ラウトは神鎧と同化、ディアスは魔法で瞬間移動。
 先にラウトが晶魔獣たちの群れの真上に転移し、開戦の狼煙をあげる。
 さすがにチャージしていないと、あの巨体を撃ち抜くのは難しいようだ。
 ジェラルドとミレルダ嬢は頷き合ってシャルロット様と両国の辺境伯たちを連れ、ドックの方へ急ぐ。
 ナルミさんも「仕方ないねぇ」と言いつつ艦橋へ向かってくれた。
 残るは俺だ。

「ファントム、俺は四号機に乗っていた方がいいのか?」
『もちろん。ギアを上げて、維持し続けろ。ギアは高ければ高いほどいい。雑魚のテメェにできるかな?』
「……やるよ」

 つまり、俺の苦手な“自力のギア上げ”。
 その上それの維持をやれってことか。
 笑えるくらいキツい。
 でも、やる。やるさ。

『ところで歩きながらでいいから結晶化津波のこといい加減説明しろや』
「ほ、本当に知らないの?」
『知らねー』

 それはちょっと意外だけど、丁寧にご説明いたしました。

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