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第20話ですわ!
しおりを挟む「大物が釣れましたわ!」
「でもモンスターは小物が多いな~。数は多いんだけど」
「なにかから逃げてきたかのように集まってきますわね。わたくしの『集敵』スキルはこんなに優秀だったのですわね!」
「そうだね、こんなスキルがあれば狩りの時すごい役立つよ! どこで習得するの?」
「学院で習得できるスキルの一つですわよ。ビギナーさんはチュートリアル授業を優先させるので、習得できると気づかない方が多いのですけれど」
「え、そうなんだ! もしかしてオレも色々取り逃がしてる……?」
「かもしれませんわね」
エイランさんのおかげで大きなお魚さんが獲れましたわ。
わたくしも無事『釣り』と『料理』スキルゲットです!
生活関連のスキルでしたら、他の方から教わるだけで取得できるのですわ!
「さて、そろそろ戻ろうか。あ、魚焼けた?」
「はい! これでわたくしの勝利間違いなしですわね! エルミーさんに『釣り』や『料理』はないはずですから! これからはわたくしの手となり足となる友人の皆様にお願いして、エルミーさんが嫌がる事をたくさんして虐めて差し上げますわ! 手始めにゲームシナリオのわたくしがやっていた私物隠しをしていただきましょう! 私物がなくなる事でエルミーさんは町へ買い出しに行かねばならなくなります! ええ! その買い出しにハイル様が付き合うというシナリオの為にも! ん!? 物を隠すくらいならわたくしにもできますわね!? これはいよいよわたくしの悪役令嬢としての本領発揮ではございません!?」
「(ど真面目!)……そ、そう、頑張って……。……多分君絶対向いてないと思うけど……」
「え? なんですか?」
「いや。か、帰ろうか?」
「はい!」
わたくしが友人の皆さんにお願いして物を隠したという事にすれば、二重の意味でワルですわ!
NPCとはいえ友人の皆さんにも嫌われますし、ハイル様もわたくしをますます幻滅するはず!
エルミーさんにも嫌われますし、一石三鳥ですわ!
おーっほっほっほっほっほっ!
「………………………………ほ……ほう……」
と、高笑いしていたわたくしが学院に帰ると校庭には見た事もない巨大な雄鹿型モンスターが横たわっている。
その前には斧を型に抱えたエルミーさんと、腕組みしたまま佇むハイル様が……。
えぇ……待って~……間違いなくあの大きさは『川べりの森』の……。
「ボ、ボスモンスターじゃ、ない? あれ……」
「は、はひ……」
「え? あの子ビギナーだよな? ビッグ種を倒すほどスキル覚えてるの!?」
「っは! ハ、ハ、ハ、ハイル様! これはどういう状況ですの!?」
他のNPC生徒も唖然となっていますわよ!
情報処理が追いついてないんですわ!
わ、わたくしも一瞬処理が追いつかなくて止まってしまいましたけれど!
「フッフフハハハハハ……」
「ひっ、ひっ!」
「キャーリーーーたーーーん……約束通り~~……」
「(完全にホラー!)……ちょ、ちょっと君……!」
「私を殴ってくださーーーい!」
「いやぁぁあああぁ!」
なにか得体の知れないものが駆け寄って参りますわぁぁぁーーー!
斧を担いで!
斧を担いでーー!
「き、貴様! キャリーには指一本触れさせないぞ!」
わたくしが校舎側へ逃れようとするのをサポートしてくださるように、ハイル様が走ってくるなにかの前に立ちはだかります。
ですがなにやらギュォンと聞いた事もない風切り音を立てながら、急カーブを曲がりハイル様を避け、さらに加速。
あ、あれはもう……ビギナーでは、ないですわ……!
PSとか、そんなレベルではありませんわ!
魔法……『身体強化魔法』スキルで強化してます! 絶対!
あとわたくし別にエルミーさんが勝ったら殴るなんてお約束していませんわよ!
「!」
っ!
しまった! もう校舎の中に……!
「つかまえたぁぁぁ!」
「ひいいいいぃー!」
どちらに逃げようか右往左往していたら追いつかれましたわ!
後退りしますが、校庭に出る渡り廊下の柱に追い詰められます。
ぜ、絶体絶命ですわ~~!
「平手で! 平手で良いから! 平手で良いからお尻を五発くらい!」
「ひぃ! なぜ場所が指定されているのですか! あと殴るお約束なんてしていません!」
て、手の動きが気持ち悪いですわ!
こわ、怖いです~~!
お顔も淑女からかけ離れたものですし!
息が荒い!
ハァハァと……ひぃ! い、いやぁ……!
どなたか、どなたかお助けくださいませぇ~っ!
「そこまでだ変態!」
「やめるんだ変態!」
「ハ、ハイル様、エイラン様……!」
「んん!? なに! 私は勝負で勝ったんだからキャリーたんに殴ってもらう権利があるはずよ!」
「そんなわけないだろう!」
「うん、というかまだ勝負はお前の勝ちとは決まってない!」
「なんでよ! ダンジョンボスを狩ってきたんだから百パー私の勝ちじゃん!」
そ、そういう理屈でしたのね……。
た、確かにダンジョンボスを狩られては……『狩り』ではエルミーさんの勝ちです。
というか小型のモンスターたちが『集敵』スキルにやけに集まったのってまさか、エルミーさんがダンジョンボスに手を出したからでは……、んんん! ですが!
「ほ、ほほほ! お、おわ、おわお忘れ、おおぉぉお忘れかしら! わ、わわわわたくしは『どちらがより多くの、上質な素材』をゲットしてこ、これるか! を挑みましたのよ! まさ、まさかとはおおおぉぉ思いますけれど、ダンジョ、ボボス……いぃ、一頭で……か、勝ったつもりではございませんわよねえぇ!」
(キャロラインさん、声めっちゃ震えてる……)
「そ、そうか! 確かにキャリーはそう言っていたな! 勝負はまだ分からない!」
「むむむぅ~!」
ふ、ふふふ。
わたくしとエイラン様は川でたくさんお魚を釣りましたし、わたくしの『集敵』で小物ですがそこそこの数のモンスターを狩ってきましたのよ!
あと、川魚は調理済みですわ!
そう! 品質向上済みです!
ダンジョンボスには驚きましたが、それで勝てるとお思いにならないで!
「では、公平に判断してくれる教師に聞いてみよう!」
「はい!」
「そうだね」
「望むところ!」
ハイル様の判断にわたくしも賛成ですわ!
というわけで、本日わたくしとエイラン様が狩ったモンスターや釣ったお魚、調理した焼き魚を提出!
事情も話して、判断を仰ぎます!
「先生! 私の勝ちですよね!」
「い、いえ、わたくしの勝ちですわ……!」
「えー、そもそも私闘の許可は出していないので無効です。まあ、二組ともとても素晴らしい成果なので、合格ですねー」
「「…………………………」」
……これだからNPCは……。
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