『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろ

古森きり

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新しい生き方


「なにかわかりましたか?」
「封印紋章についての知識を与えてもらった。おそらく現地に行って封印紋章に触れればなにか分かると思う」
「現地に……。私も同行したいのですが、この足では不可能です。そちらもお任せしてもいいでしょうか?」
「封印紋章を調べて、弱体化していたらかけ直せばいいのだな。知識を与えてもらったから、なんとかなると思う」

 とりあえず紋章に触れれば多分なんとかなる。
 多分!

「では、次にアマルさんにご紹介しましょうか。紹介状は用意しておきましたので、お手数ですが市民街の二番地にあるアマルさんの家までご足労いただいてもよろしいでしょうか? アマルさんは足の骨を折って療養中でして、来ていただくのはちょっと……」
「そうだな。健康で弟子入りを希望している私が赴くのが筋であると思う」
「ありがとうございます。ではこちらを。もし道がわからないのでしたら、孤児院の子たちに声をかけてあげてください。お駄賃をあげれば喜んで案内してくれると思いますので――あ、そうでした。お駄賃といえば、今回のお仕事の報酬を先にお渡ししなければ。こちらです」

 え? 家のお金が報酬だったのでは?
 驚いて聞き返すが、それはそれとして当面の生活費を渡す予定だったそうだ。
 一ヶ月分の生活費として二十万アトラ。

「こんなに受け取ってよいのか?」
「実はアリア嬢が薬草師として働かれるのなら、お願いしたい薬草があるのです。『クラゼリ』という、私の常用薬に使う薬草なのですが、アマルさんが骨を折ってから入手が難しくなっておりまして在庫が切れそうなのです。そちらを採ってきていただきたく、こちらは前金としてお受け取りください」
「そういえばパルセたちも同じことを言っていたな」

 私がパルセたちに出会ったのは、セッカ先生の薬の材料となる薬草を探しに外壁の外へ出ていたからだ。
 おそらくその薬草のことだろう。

「残りが本当に僅かで……どうかよろしくお願いします」

 その時、初めてセッカ先生の表情に変化を見た。
 穏やかで余裕のある顔しか見たことがなかったけれど、少し焦りの滲んだ表情。
 この人、こんな顔もするのか。
 いや、命がかかっているのだから……そんな顔にもなるのは、当たり前だ。
 この人は“普通の人”よりも、もっと弱い『持たぬ者』なのだ。
 私が思っているよりももっと大変な苦労をして生きている。
 私がなんの苦労もなく、“普通の人”が必要とするものすら必要としない中、彼はその逆だ。

「ああ、任せてほしい! 必ずその『クラゼリ』という薬草を採ってくる! 任せてほしい!」

 胸を叩くと、少し安堵したような表情に戻ってくれた。
 前金としてお金を受け取ったからには、必ず成し遂げなければならない。
 まあ、今の話の流れから考えるとこのお金で孤児院の子たちに仕事と駄賃を与えてほしい、という感じだが。
 この人は孤児院の子どもたちに、少しでも働いて稼いでほしいんだな。
 お金で苦労しないように、生活の足しになるように。
 私は食べなくても寝なくても大丈夫だから、お金はここまで必要ではないしな。
 たくさん孤児院の子どもたちへ投資しようではないか。

「市民街の二番地だな。まだ街のことは詳しくないから、孤児院の子たちに相談してみよう」
「はい。あの子たちも喜ぶと思います」
「セッカ先生はこのあとどうするんだ?」
「せっかく資料室に来たので、少し文献の手入れをしておこうかと。なにぶんここにあるものはどれも古いので、定期的に手入れが必要なので」
「了解した」

 資料室、図書室を出て孤児院の方に向かう。
 城の中に孤児院があるというのはやはりまだ不思議な感じだが、それを言ったら廊下に出店が並んでいるのもおかしな話だしな。
 もうこの光景に慣れている自分がいるのがある意味一番驚きかもしれないが。
 でも、そんな自分が嫌ではない。



「こっちだよー」
「こっちこっち!」
「あまり走ると雪で滑って転んでしまうぞ」

 手を振るパルセと一緒に来たのは孤児院の孤児の一人タァナ。
 パルセの一つ年上で、兄貴分らしい。
 二人は雪の道にも関わらずキャッキャと駆けていく。
 注意はしたが、本当に転びそうになったら私が受け止めればいい。

「「ここだよ!」」
「ここか」

 黒い煙突に赤い屋根。
 扉に大きな草の芽のようなマークが彫られた一軒家。
 階段を上がったところに玄関扉があるのは、おそらく積雪避けのためだろう。

「ありがとう、パルセ、タァナ。これはお駄賃だ」
「え! こんなに!?」
「お姉ちゃん、さすがにこんなにはもらえないよ! 相場は五百アトラぐらい」
「え。そんなに少ないのか?」

 私が手渡したのは二千アトラ。
 だいぶ多かったらしい。
 いっぱいもらったからいっぱいあげたかったのだが、あげすぎか。

「お姉ちゃん、お金は大事に使わないとダメだよ! 怪我したり急に病気になったりしたら、お薬を依頼したりしなきゃいけないでしょ!」
「はあ……」
「もー! あとは一人でアマルさんにご挨拶できる?」
「で、できるぞ」
「じゃあ頑張ってね! お家のお掃除は任せてくれていいからね」
「う、うん。よろしく頼むな!」

 タァナ、誰にでもお兄ちゃんぶるな。
 私一人っ子だからちょっと新鮮だ。
 二人にはこのまま私の新しい家の掃除を依頼して、私はいざ、アマル氏に弟子入りだ!

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