腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり

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知らない事がいっぱい!?

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「では、これからこの学園で学んでいく事を簡単に説明します」

 入学式後、教室に詰め込まれた新入生たちにクラス担任の先生が自己紹介もそこそこに語り始めました。
 わたくしは女子生徒のみのクラス。
 ミリアム様やアーク様とは別なクラスです。
 でも、これはこれでお友達を作るのに好都合なのではないでしょうか!
 あ、いけません。先生のお話を聞かなければ、ですわ。

「ここは『フェイランディア大陸』最西端の国、『ヴィヴィズ王国』。まあ、この辺りの事は当然皆さん知っていて当たり前ですが……」

 そうですねぇ。
 自国の事を知らない貴族はいないでしょうねぇ。

「この国は魔獣も多く、精霊獣の加護もありません。隣国にはあるというのに……忌々しい……」

 とても個人的批判が入ってきましたね……。

「ああ、いえ、とにかく……この大陸には南から『アーカ王国』、『エディレッタ王国』、隣国『ブリニーズ王国』、『シャゴイン王国』、『ロンディニア王国』そして大国『ザグレ』と多くの国がひしめき合っています。そして、皆さんがこの学園で学ぶべき事は貴族として今後、どうこの国に貢献出来るか……どう貢献して行けるか、です」

 とても抽象的な言い方ですねぇ。

「今の時代は戦争の兆しもなく平和そのものですが、以前は大国『ザグレ』が大陸統一を目論んだという話もあります。今もそう考えているザグレの貴族は多いでしょう。そうなった時、最初に潰されるのは、まあ、『シャゴイン』でしょうけれど……『ヴィヴィズ王国』としてもしっかり自衛してゆきたいところ! そう、この国の未来は皆さんの肩にかかっている!」

 ……この方は教師に向いていないのでは……。
 言ってる事がよく分かりませんよ?

「とにかく、皆さん、精霊獣です! 精霊獣と契約するのです! 精霊獣と契約すれば人生安泰! この国も安泰です! 精霊獣を探し出して契約しましょう!」

 ……という事で先生のお話は終わりました。
 なんというふわっとしたお話でしょうか。
 かなり無理やりと言いますか……精霊獣と契約しましょう、なんて……精霊獣……精霊獣?
 精霊獣ってなんでしょう?
 王妃教育で教わったでしょうか?
 記憶を辿ってみますが思い出せませんね?

「精霊獣信仰者みたいだな、あの先生」 
「まぁね、気持ちは分かるけどね。精霊獣を一目見ただけでも幸運に恵まれるというし」
「うちの国も魔獣被害が多いからなぁ」

 そんな話声が聞こえて、お腹をさすります。
 そうなのですね。
 お城に引きこもっていて、わたくしこの国の現状をまったく知りません。
 王妃候補なのにこれはいけないような気が致します……。
 わたくし、国内外の情勢に関する事と国内貴族に関する事、自衛の方法や他国のマナーなどしか教わっていないので……そういえば国内がどんな状況なのか、とかは調べてもいませんでしたね。
 これではいけません。
 ミリアム様とアーク様……どちらが王となるかはまだ分かりませんが……アーク様の妻になって、ミリアム様を支えられるようにこの国の事ももっと知らなければ……。
 あと、お友達を作らなければ。

「…………」

 ぐううぅ……。
 お腹が鳴りますね。お腹が空きました。
 ああ、ダメです……頭が上手く働きませんわ。
 昔は少食で悩んでいましたが、最近よくお腹が空きます。
 お城で過ごした五年間で、わたくしの体質は180度変わってしまったのでしょうか?
 でも、お腹が空く事はいい事です。
 そして、食欲がある事はもっとよい事ですよね。
 お腹が空いていても食欲がないと大変です。
 お腹は空いているのに、食べたくないのですから。
 それって、とても悲しい事なのですよ。

「クリスティア」
「! アーク様」

 教室の外から声がかかり、立ち上がります。
 アーク様がわたくしを呼ぶので近づくと、ニッコリ微笑まれました。

「なにか誰かにひどい事を言われたりしませんでしたか?」
「? いいえ?」
「そうですか。それなら良かった」

 なんの事でしょうか?
 誰かにひどい事?
 わたくしは言われていませんねぇ~。

「それよりも、そろそろクリスティアのお腹が空いた頃だと思いましたから迎えにきましたよ。ラウンジで少し軽食でもどうですか?」
「食べます」
「ふふふ、即答ですね。そうだと思いました」

 なぜ分かったのでしょう?
 そうなんです。
 お腹が空いているんですよ! わたくし!
 アーク様に連れられてラウンジでご飯!
 本当ならがっつり頂きたいところですが、さすがにまだ授業があるのでダメですよね! 残念です!

「あ、そういえば……アーク様、精霊獣とはなんですか?」
「へ?」
「先程担任の先生が挨拶でおっしゃっていたのですが、わたくし、王妃教育で学んではいなかったように思いまして……」
「…………そうだったんですか? ……いや、そうかもしれませんね? そうか……」

 なにやら一人で納得してしまわれました?

「精霊獣とはこの大陸となった神獣『レンギレス』の遣いと言われる生き物です。まあ、神獣レンギレスの話は御伽話ですが、精霊獣は実在します。その他に大陸に点在する森には森の守護獣がいたり、魔獣も元は神獣レンギレスの使いの成れの果てとも言われていますね」
「魔獣……」
「西側と南側の国には神獣の森がないため、魔獣が多いそうです。我が国にもとても多く出ます。毎年農作物や漁業、畜産業に影響が出ますね。まあ、それは隣国の『シャゴイン』や『ブリニーズ』と同じようなものなのですが……。うちは『シャゴイン』と違って海に面していて、天候で漁業が出来ない、魔獣被害が多い、が重なると本当に大変なんですよ。『ロンディニア』から食糧の輸入をしようにも、地味に『シャゴイン』が邪魔してきますからね。関税を設けて、我が国にからもお金を取るんです。まったくせこい国です」
「…………」
「ああ、失礼。喋りすぎましたね。よく分からなかったですか?」
「いいえ……」

 ただ、精霊獣のお話を聞いたのに話がだいぶ逸れたなぁ、と……。
 アーク様は『シャゴイン』が嫌いなのでしょうか?
 まあ、今の話を聞いた限りろくな感じではありませんけれど……。

「わたくし知らない事がまだまだたくさんあるのですね」
「そのための学園ですからね。大丈夫ですよ」

 なるほど! 確かに!

「わたくし、これからどんな事を中心に学んでいけばよいのでしょうか」
「クリスティアは食べる事が好きですか?」
「? はい、大好きです。けれど……」

 ミリアム様の作るものが、と言いかけて……やめた。
 今食べているサンドイッチも美味しいです。
 こうして食べられるようになったのはミリアム様のおかげだと思うので、やはりミリアム様の作るケーキやお料理は別格ではありますけれど。

「なら、食に関して学んではどうでしょう? さっきも言いましたが、魔獣や天候によって毎年農作物や漁業にはダメージがあるものなんです。なんとかそういう影響があっても、問題ない食糧確保が出来ないものかと……」
「なるほど……」

 我が国『ヴィヴィズ王国』は近隣と同じく小麦が主食となっていますよね。
 しかし魔獣により畑は荒らされます。
 漁業もまた、海の魔獣や天候で安定的ではない、と……。
 もちろんもっと詳しく調べなければならないでしょうけれど、原因が分かっていてもなにも出来ないのは嫌ですね。
 わたくしも少しくらい役に立ちたいです。中身が虚無ですが。

「たくさんご飯が食べたいので頑張ります……!」
「それでこそクリスティアですね」

 どういう意味でしょう!
 いえ、その通りな気もしますけれど!

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