ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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オーディション結果(2)

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「花房くんと狗央くんも今回ダメでも、芸能事務所オーディションはこれから何回も開催されるから大丈夫。活動を続けてアイドルとしての実績を重ねれば、指名も来ると思うしね。自分に合った事務所を探していくといいよ。音無くんも、研修生の件はよく考えてね。春日芸能事務所はまだ所属している人そのものが少なくて、事務所の方向性も定まっていない感じなんだよ。多方面に手を広げるか、いくつかのカテゴリーに絞るか。少なくともアイドルタレントは増やす予定みたいだけれど、音無くんの目標はミュージカル俳優でしょう? ミュージカル俳優に強い事務所は『宝船プロダクション』とか『東峰』とかちゃんとあるし、そういうのを考えて選んだ方が君のためだと思うな。栄治先輩はモデルだし、一晴先輩はマルチ俳優だし、音無くんの夢と二人の職業って重なってないし」
「あ……そ、そうか……」
「は、はい。ありがとうございます」
「なるほど。そういうものなんですね。……自分のやりたい方向性に合う事務所選び、ですか……」
 
 三人して「うーーーん」と悩む。
 綾城のフォローと助言は的確で、淳も『研修生』の用紙を改めて眺める。
 自分のやりたいこと――ミュージカル俳優になりたい。
 その夢を、果たして春日芸能事務所は叶えてくれるだろうか?
 一応俳優のカテゴリで鶴城一晴がいるが、彼は劇場だけでなく幼い頃からテレビや映画、他にも声優、ナレーターのような声の仕事にも出演しているマルチ俳優。
 今は主に2.5次元俳優として活躍している。
 同じ俳優だが、一晴は自称「歌はあんまり得意じゃない」という。
 2.5次元、歌を歌うことが多いのだが。
 実際東雲学院芸能科在学中に猛練習して今のレベルに到達した。
 時代劇王子としてのイメージがつきすぎていたので、歌を練習して2.5次元俳優として若い人に認知を広めたいという目標の通り、今の活躍ぶり。
 なるほど、鶴城は最初から将来の展望が見えていたのだろう。
 ちゃんと将来に向けて学ぶべきことを学び、伸ばすべきところを伸ばして今の活躍ぶりと知名度なのだ。
 ならば、淳もミュージカル俳優としてなにをするべきか――。
 
(う、う~~~~ん……声変りがぁ~~~~~……)
 
 まず、一番重要な”歌”が歌えない。
 焦れて焦れて仕方ないけれど、無理は禁物。
 無理に歌えば、二度と歌えなくなることもある。
 少なくとも、同じ声で歌うことはできない。
 
(最近、普通に話すのにも違和感があるしな……)
 
 喉に手を当てて考える。
 自分の喉は、これからどうなってしまうのだろうか?
 声変りごときで病院に行くのも、と考えていたけれど、一度病院で診てもらうのもありなのかもしれない。
 そんなふうに三人でうんうん唸っているのをニコニコ眺めていた綾城の横で、凛咲が痺れを切らした。
 
「お前ら、そんな贅沢なことを言う前に実績を重ねないとダメだろう! 音無も贅沢言うなよ! 綾城の言うことはもっともだけれど、プロの側で学びを得られる機会はアドバンテージだ! 綾城もいる事務所だし、入れるところに入っておくのも手だゾ!」
「あ、え、あ、そ、そうですね」
「あと、フルフェイスマスク型のVR機、用意しておいたから花房と狗央は持って帰れよ」
「「「え」」」
 
 よいしょ、っと。凛咲が二箱のフルフェイスマスク型のVR機を持ってきた。
 ギョッとする三人。
 マジで買ってきたのか。
 
「あの、もしかしてそれで『SBO』をやって練習しろ的な……?」
「うん! でもそれだけじゃないゾ! なんかギルドがこんどあれしてこれしてこーなるからこうするんだ!」
「「「「……?」」」」
 
 なんて?
 一年三人が視線だけで綾城に通訳を求めるが、綾城も凛咲がなにを言っているのかわからない。
 しかし、一応事前に凛咲から色々聞いていたらしい綾城が「もしかして計画の話ししてます?」と聞いたら満面の笑顔で「うん!」と頷く。
 それでようやく「ああ……」と察してくださった。
 
「ほら、前回音無くんに誘ってもらって『SBO』にログインして時に、星光騎士団の名前を騙る残念な人たちがいたでしょう?」
「いましたね」
星光騎士団おれたちの名を騙る不届き者を、ゲーム内といえ見過ごすなんて名折れだ! 潰すなら徹底的にぶっ潰すぞ! だからお前らもこのゲームに自分のアバターを作っておけ! 盛大に、ド派手にぶっ潰してやるからな! にゃははははははは!」
「あ、あの、自分はゲームをしたことがないのですが!?」
「お、そっか! じゃあ音無と綾城に教えてもらえ!」
「え」
 
 凛咲にそう言われて、オロオロした周が助けを求めるように淳と綾城を見る。
 うっかり綾城と顔を見合わせてしまうが、この話の流れ。
 合法的にみんなでゲームで遊べる!
 それを察した淳と綾城、口元に笑み。
 
「うんうん、僕たちでゲームの楽しさを教えてあげるね! 明日なら夜時間があるからみんなで遊ぼうね!」
「うんうん、大丈夫だよ周。『SBO』は面白いゲームだから!」
「ひっ!? え? なに? なんか怖いんですけど!?」
「大丈夫大丈夫なにも怖くないですよー」
「うんうん、なにも怖がらなくていいよー」
「綾城先輩、淳ちゃん、それ逆に怖いって!」

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