34 / 44
小百合さんと友達になろう!(1)
しおりを挟む「結城坂様、あの……例の霊符、わたくしにも譲ってはいただけないでしょうか……。お礼はいたしますので……」
「ええ、いいですよ。一枚でよろしいですか?」
「あ……ありがとうございます!」
佐山さんに『自動防御』の霊符をあげてから、一週間……俺のところへ代わる代わる女生徒がやってくるようになった。
そろそろ二桁に達する数だぞ、マジかよ。
事前に作っておいた霊符が底をついて、空の桐箱を見下ろしてからがっかりした気持ちになる。
この世界の――この国の央族の男ってこんなに元鞘に戻れると思って、元カノに寄りを戻そうと言ってくるのか。
自分の浮気が原因なのにも関わらず、どうしてイケると思うのだろう。
幸いクズポンタンは最近すっかり姿を見せない。
多分、家の方から俺の婚約者が誰なのかを聞いたんだろう。
身の程を弁えてくれたようでなによりだぜ。
「失礼。結城坂様、よろしいかしら?」
「ヒョェ……!? あ、な、なんでしょうか……? 六条ノ護様」
話しかけてきたのは六条ノ護小百合さん。
霊符や霊術を危険に思う『近未来幸福の会』の思想にかなり汚染されている人だったように思うのだが……俺が霊符を配っているからいちゃもんつけにきたんか? おん? やるか?
「あなた、来週の四季結界補修に参加されるのですわよね?」
「え? ああ、はい」
珍しく一人の時に、一人で話しかけてきたな、と思ったらその話。
ああ、でもそうか。
一応小百合さんも守護十戒の一角のお家柄。
「六条ノ護様も参加なさるのですか?」
「え、ええ、まあ……。そ、そう。本当に参加なさるのね」
「はい。私は初めてなので、六条ノ護様に色々教えていただけると嬉しいです。結界の補修はどのような霊術で、どのように行うのですか?」
そういえば事前に詳しい話とかなんにも聞いてないんだよなー。
結界に関する霊術は授業で基礎の基礎をやる。
特に女子は、将来嫁いだ家によっては四季結界補修に参加するから。
守護十戒の家はほぼ強制参加のはず。
基礎の結界霊術で補修するのか?
まさかぶっつけ本番ってわけではないよな?
「霊術の構築は専門家――たとえば一条ノ護家のご当主様がなさるのよ。わたくしたちは一ヶ所に集められ、霊力をそれぞれの補修箇所に送る役目なのです。だから、詳しい霊術の構築方法など知らずともよいのです」
「え! そ、そうなんですか? 私、てっきり……」
霊術が使えるもんだとばかり……。
そ、そうか、当主たちがそれぞれの補修箇所に霊力を送れるように霊術を構築して、その他大勢が霊力を送ってその箇所が自動補修されるようにした方が労力も少なくて済むか。
そっかあ……残念。
「ですが……あなたが一条ノ護家に嫁がれるのでしたら――その知識はむしろ足りない、でしょうね」
お。
思わず小百合さんを上目で見る。
どうやらこの人は俺が滉雅さんに嫁ぐ話を耳にしたってことなのかな?
「ですよね。まだまだたくさん勉強することがあるので、やりがいがございます」
「そうですか。では、婚約の話は本当なのですね」
「詳しくは正式な公表の時までお話はできないのです。申し訳ございません」
「いいえ。……ですが、それなら気をつけられた方がよろしくてよ」
「はい?」
なんとなく、急激に小百合さんの態度が柔らかくなった気がした。
それも違和感だったけれど、少し困ったような、忌々しそうな表情になって腕を組む小百合さんが衝撃的なことを教えてくれる。
「あなたと新しい婚約者のことを言いふらしている方がいましたの。皆さん弁えておりますから、あなたに、直接確認しにくる方はいらっしゃらないようですけれど……そういう配慮のできない、品のない方が、ね」
「それって――」
この人がこんな言い方をするのって、二人しか思い浮かばない。
クズポンタンか、股ゆる女。
でも多分クズポンタンは違う。
あいつは多分、実家にガッツリ釘刺されてる。
ってことは、あの股ゆる女か。
「でも、気をつけると言われましても、私はあまりなにに気をつけるべきなのかまだわからなくて……」
「霊力を買われて見初められたのですものね。まあ、すでに正式に婚約が交わされておられるのでしたら特に気にすることもないでしょう。婚約者がいるという点は、隠してはおられないのでしょう?」
「ええ。両家の当主様からも聞かれたらお相手のことは伏せて、婚約については話して構わないと言われております」
だから別に、言いふらされてもなぁって感じ。
なんかダメなん?
「学校内ならお相手がお相手ですから、さして問題はありませんの。ですが、社交界の方ではそうはいきませんわ」
「え……ええと……それは……」
「元婚約者候補だった方々が、あの品のない方の流した噂を耳にしてあなたのよくない噂を流し始めている様子」
「えっ」
えっていうか、もうゲッて感じ。
マジかよ、これが噂の女の喧嘩ってやつか!
そ、想像以上に陰湿~~~!
「あなたの新しい婚約者様は元々ものすごくたくさんのご令嬢が婚約者候補に名を連ねていましたのよ。でも、どの方も彼の方のお母様の反対にあい、泣く泣くお話が流れた方が数知れず、という事情もおありでして……」
「その方々はすでにご結婚されているのでは……?」
滉雅さんは今年で二十七歳って聞いたぞ。
俺よりちょうど一回り年上。
だから本人も結婚はもう厳しいだろうな、と諦めていた、とか言ってた。
そもそも女の人が苦手なのもあったらしいけど……。
「ええ、だからやっかみを買いやすいのですわ」
「そ…………そうなのですね……」
女の世界めんどうくせえええ!?
えええええ!? 結婚したあとまで、引きずるもんなのぉ!?
嘘だろ、怖すぎない!?
「四季結界補修の日は、多いと数百ヶ所の修繕地点を数ヶ所の霊力供給地点で補修します。霊力供給地点は内地に一つ、外地に二つ、三つの時もあるので当日はわたくしか、ご当主様のお側に控えておられた方がよろしくてよ。どなたが手を回したのかはわかりませんが、先生方が卒業後に嫁入りするのだからと、学生であるわたくしたちを四季結界補修に派遣しようという話が持ち上がっているそうですから」
144
あなたにおすすめの小説
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く
基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」
王太子は女を突き飛ばした。
「その恩も忘れて、お前は何をした!」
突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。
その姿に王太子は更に苛立った。
「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」
「ソル…?」
「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」
王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
王子よ、貴方が責任取りなさい
天冨 七緒
恋愛
聖女候補であり、王子の婚約者候補でもあった私。
八年間、国のために聖女としての務めを果たす準備をしてきた。
だが王子は突然こう宣言した。
「今代の聖女はソミール嬢。優秀な彼女には補佐すら必要ない」
聖女が決まれば、候補者は補佐として王宮に上がる。
補佐不要とは、聖女候補全員を“無能”と断じたも同然だった。
貴族社会で私たちは侮辱の対象となり、立場を失っていく。
聖女に選ばれた平民の少女ソミールは、悪意こそないものの、
他者の手柄を“善意で”奪ってしまう無自覚な加害者だった。
王子は彼女を盲信し、貴族出身の候補者たちを悪と決めつけた。
そして国は混乱し始める。
王子が卒業した聖女候補に助力を求めても、誰一人応じない。
社交界の悪意から逃げるように辺境に来た私のもとにまで、王子が現れた。
「聖女の補佐をしてくれないか……」
私は静かに告げる。
「今代の聖女は補佐を必要としないのでしょう? 王子様。責任は、ご自身でお取りください」
勘違い王子と平民聖女の暴走に巻き込まれた、
聖女候補たちの“静かなざまぁ”の物語。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる