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ああ、素晴らしき妖生①
しおりを挟む城内が騒がしい。それも、あまりよろしくない方のざわめきだ。
(全く、召喚の儀ですって? 何だってそんなのに手を出したんだか!)
勢いよく突き進みながら、口には出さずに好きなだけ悪態をつく。表には決して出さない――つもりが、すれ違った侍女がびくぅっ、と身を震わせて壁にへばりついた。隠しきれなかった怒気に恐れをなしたらしい。申し訳ない。
「……お嬢。通行人を威嚇しても何にもならんぞ」
「分かってるわよ、今のは不幸な事故だから。ホントに」
付かず離れず、ちょうどいい距離を保ってついてくる護衛のささやきに、こちらもまたひそひそ声で返す。こういう不特定多数が行きかう場所では、誰が聞いているか分からないので、あまり私的な会話を大声でしないのが基本である。ことに今のような、いろいろと不安定な時期には。
「……まあ、殿下はお優しいからね。臣下がいろいろ心配して是非! きっと上手くいくから! って激押ししたら、十中八九ダメって言えなかったろうし」
歩きながらため息交じりでこぼすと、同行者からも同意する気配が伝わってきた。そう、誰が見ても原因と要因ははっきりしているのだ。
異なる世界から素質ある人物を呼び寄せる召喚魔法は、術としてはかなり完成されたものだ。狙った以外を巻き込むという欠点はあるものの、莫大な対価を必要としたり、途中で暴発したりということはまずない。リスクが少なくて済み、尚且つ大きな見返りを得られるのであれば、活用しない手はないだろう。
ただし、である。専門家として、一つ苦言を呈しておきたい。
「聖人聖女の素質と、本人の持っている資質は、全くの別物。……あんまり妙な子じゃないことを祈るわ」
「……術師のカンは当たる、と言ってなかったか?」
「あーっもう、それは言わない約束でしょ! タダでさえ戻って来てからひしひしと感じてるんだから!!」
「わかったわかった。待っていろ、茶でも淹れて来よう」
「いつものヤツでお願いーっっ」
拠点にしている部屋にたどり着き、扉を締め切ったとたんにこれだ。報せを受けてからの道中、さぞ堪えていたであろうことは想像に難くない。表に出ている以上に忠義と情に篤い御仁だから、なおさらだ。
行儀悪く長椅子に伸びている雇い主を顧みて、もう一度小さく笑った護衛は、早速湯をもらってくるべく厨房に足を向けた。
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