転生リンゴは破滅のフラグを退ける

古森真朝

文字の大きさ
13 / 56
第2章:袖すり合うもリンゴのご縁

黒づくめの闖入者②

しおりを挟む
 頭のてっぺんからつま先まで、とにかく全身黒ずくめという服装。しかもその至る所に大小の傷があり、泥濘ぬかるみにでも突っ込んだようにひどく汚れている。何とか身を起こしたティナは、自分の両手にべったりついた赤黒い色にぎょっとした。

 「ちょっと、どうしたんですかコレ!! しっかりしてっ」
 「…………、を」
 「え、なんか言った!?」

 唇が動いた気がして耳を寄せると、相手はガサガサにかすれた声を振り絞って伝えてくる。

 「精霊花モーリュ、を……」

 が、そこまで言ってごとん、と頭が落ちてしまった。苦しそうにしかめられた顔に、なんだか嫌な感じにどす黒い紫色の斑点が散らばっている。ついでに、服の上からでもわかるくらいものすごく熱が高かった。この症状、相手が告げてきた単語もあわせればまず間違いない。

 「毒くらったんだ……!」

 傷口から入ったのか、それともうっかり口にしたか。経緯は不明だが、急いで手当てをしないとまずいことになりそうだ。

 「ルミちゃん、裏の畑で薬草取って来て。昨日の子にあげたやつわかる?」
 『ぴぴっ!』
 『きゅ』
 「あ、ウサギさんも手伝ってくれるの? ありがとう、お願いします」
 『きゅう!』

 ありがたくお願いすると、手伝いを申し出てくれた小動物たちは裏手にすっ飛んでいく。あちらは任せておいて大丈夫なはずだ。あとは――

 「あの薬草、よく効くけど負担も大きいんだよね……先にあらかた治しとくか」

 出来るだけ楽な体勢を取らせようと、男性の上半身を膝の上に抱えあげる。やはりボロボロの有り様になっている胸元に軽く両手をかざして、目一杯集中しながら口を開く。

 「――命を宿す、黄金の林檎。その息吹を、このひとに分けてあげて」

 ぽう……

 言葉を追いかけるように、手のひらに光が灯った。朝日を思わせる金色の輝きが降り注ぐと、いまだに続いていた出血がぴたりと収まる。さらに経つと皮膚がつながり、切れていた部分がちゃんとふさがったのがわかった。思わず大きく息をつく。

 「良かった、初めてやったけどうまくいった……!」

 イズーナにもらった命の林檎は、消えてなくなったわけではない。実はティナの魂の核になっていて、持ち主の意思に応じて他の生き物に生命力を分け与えることが出来る、らしいのだ。転生してすぐの頃に当の女神様から聞いてはいたが、まさか本当に使うことになろうとは。

 まだ毒は抜けていないが、見知らぬ男性の顔色は格段に良くなった。これなら大きく動かしても大丈夫だろうと、肩を貸す形で支えて立ち上がろうとしたところ、くらっと目眩に襲われる。軽い貧血のような感じだ。

 「……う、ちょっと調子に乗ったかも」

 能力初使用の反動だろうか。しかし、まだまだやることが山ほどあるので倒れてなどいられない。
 何とかソファまで引きずっていき、息を整えてから、ティナは薬の準備をするべくキッチンに移動した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...