大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第四章:大根令嬢、東洋文化と恋バナに花が咲くの巻



 むに、と頬をつねられた。半ば強引に向きを変えられた先で、ついでとばかりに顔を両手で挟むアンジェリカがいる。気遣いとわずかな怒りが入り混じった、複雑な表情だった。

 「もー、またそんな顔する。あなたのせいじゃないって言ってるのに」
 「……すみません」
 「謝らないでってば。そもそも父様も含めて、うちの男性陣は苦労性になりがちなんだから、わざわざ自分から背負い込まなくていいの。
 真面目で責任感があるのは長所だけど、もっと楽に構えなさい。他のことにも目を向けてちょうだいな」

 ね? と、大きな目で覗き込むようにされる。もっと幼い頃、背丈が同じくらいだった時分には、額を合わせて言い諭されたものだ。

 この人は幼い頃から、いつでも頼りになる姉だった。急な即位にも動じることなく、臣下を良く率いている。こういう人柄を慕われるからこそ、皆迷わずに付いて行くのだろう。もし血の繋がりがなくとも、ヴィクトルもこの方ならば、と身を粉にして尽くしたはず……

 「で、よ! 例のカレンデュラさんとはどうなの!? お姉ちゃん、そろそろ浮いた話が聞きたいな~♪」

 ごっふ!!

 ……などと密かに感じ入っていたところに、特大の爆弾を放り込まれて、思い切りむせてしまった。何でそうなる!

 「~~~~っ、どこでそれを……!!」
 「うん、あなたのとこの秘書官から。こないだ勅命で、エインズワースさんちのセドくんに伝達してくれたじゃない? その報告がてら聞きました」
 「私の側近を伝言係にしないで下さい!! しかも内容が色恋沙汰なんて!!」
 「あら、じゃあ自覚はしてるんだ。良かったあ、あれだけ足しげく通ってて全部お仕事のつもりでした、ってなったら泣いちゃう」
 「ですから……っ!」

 嬉々として言ってくる我らが女王陛下は、それはもう満面の笑みで瞳を輝かせていたりする。こういう時の軽すぎるノリは、昔からちっとも変わらない。身内としては嬉しいやら悲しいやら。

 「……、ごほん! とにかくです、カレンデュラ嬢は現在進行形で多忙なので。ご報告した先日の一件で、邸に『客人』がご滞在中でして」
 「ええ、もちろん聞いてるわ。うちの甥っ子のやらかし、全部補ってもまだ余りあるくらいの功績じゃない? そんな高貴な方に見込まれるなんて、今どき高位神官や巫女でもなかなかないわよ。
 こうなると嫌でも注目されて『ぜひうちの嫁に』って言われるし、その点ではレナートが盾になっててラッキーだわねぇ。ヴィクトル」
 「それは……、いえ、そういう話でもなく!」

 一瞬、本当に一瞬だけ同意しそうになって、大急ぎで話を元に戻す。さっき上がってきた、これだけは言っておかねばならない報告があるのだ。

 「その、彼女が負傷した件の調査ですが、少々進展が。――あの舞踏会に参加していた方々、付き従っていた家人、会場の邸の関係者。秘密裏に行っていた聞き取りが、全て終わりました。
 あの日、外からの侵入者はいなかった。そして邸にいた人々は事件前後、アリバイが存在しています」

 一見振出しに戻った、とも思える状況だ。本当の勝負はここからだと、ヴィクトルの勘が告げていた。


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