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第四章:大根令嬢、東洋文化と恋バナに花が咲くの巻
②
むに、と頬をつねられた。半ば強引に向きを変えられた先で、ついでとばかりに顔を両手で挟むアンジェリカがいる。気遣いとわずかな怒りが入り混じった、複雑な表情だった。
「もー、またそんな顔する。あなたのせいじゃないって言ってるのに」
「……すみません」
「謝らないでってば。そもそも父様も含めて、うちの男性陣は苦労性になりがちなんだから、わざわざ自分から背負い込まなくていいの。
真面目で責任感があるのは長所だけど、もっと楽に構えなさい。他のことにも目を向けてちょうだいな」
ね? と、大きな目で覗き込むようにされる。もっと幼い頃、背丈が同じくらいだった時分には、額を合わせて言い諭されたものだ。
この人は幼い頃から、いつでも頼りになる姉だった。急な即位にも動じることなく、臣下を良く率いている。こういう人柄を慕われるからこそ、皆迷わずに付いて行くのだろう。もし血の繋がりがなくとも、ヴィクトルもこの方ならば、と身を粉にして尽くしたはず……
「で、よ! 例のカレンデュラさんとはどうなの!? お姉ちゃん、そろそろ浮いた話が聞きたいな~♪」
ごっふ!!
……などと密かに感じ入っていたところに、特大の爆弾を放り込まれて、思い切りむせてしまった。何でそうなる!
「~~~~っ、どこでそれを……!!」
「うん、あなたのとこの秘書官から。こないだ勅命で、エインズワースさんちのセドくんに伝達してくれたじゃない? その報告がてら聞きました」
「私の側近を伝言係にしないで下さい!! しかも内容が色恋沙汰なんて!!」
「あら、じゃあ自覚はしてるんだ。良かったあ、あれだけ足しげく通ってて全部お仕事のつもりでした、ってなったら泣いちゃう」
「ですから……っ!」
嬉々として言ってくる我らが女王陛下は、それはもう満面の笑みで瞳を輝かせていたりする。こういう時の軽すぎるノリは、昔からちっとも変わらない。身内としては嬉しいやら悲しいやら。
「……、ごほん! とにかくです、カレンデュラ嬢は現在進行形で多忙なので。ご報告した先日の一件で、邸に『客人』がご滞在中でして」
「ええ、もちろん聞いてるわ。うちの甥っ子のやらかし、全部補ってもまだ余りあるくらいの功績じゃない? そんな高貴な方に見込まれるなんて、今どき高位神官や巫女でもなかなかないわよ。
こうなると嫌でも注目されて『ぜひうちの嫁に』って言われるし、その点ではレナートが盾になっててラッキーだわねぇ。ヴィクトル」
「それは……、いえ、そういう話でもなく!」
一瞬、本当に一瞬だけ同意しそうになって、大急ぎで話を元に戻す。さっき上がってきた、これだけは言っておかねばならない報告があるのだ。
「その、彼女が負傷した件の調査ですが、少々進展が。――あの舞踏会に参加していた方々、付き従っていた家人、会場の邸の関係者。秘密裏に行っていた聞き取りが、全て終わりました。
あの日、外からの侵入者はいなかった。そして邸にいた人々は事件前後、全員にアリバイが存在しています」
一見振出しに戻った、とも思える状況だ。本当の勝負はここからだと、ヴィクトルの勘が告げていた。
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