34 / 44
▶︎▶︎
Ix
しおりを挟む
◆
ム—、 ムー、 ムー、 ムー
どこからか聞こえるスマホのバイブ音。
自堕落に手探りしているうちに、音は途切れてしまう。
「はぁ」
起きなきゃと思うのに、目を開けたくなかった。
全てが、ただの夢なのだと。
彼のいないベッドで、ひとり目を覚ます……その現実を受け止めるのが辛かった。
——『暉』
そう、僕を。僕じゃない名前で呼ぶ、美しい同級生。
これがただの夢で、まやかしの愛だとしても。
それでも、この時間が永遠に続けばいいと、そう願っていたのに——
◇
『あ……っ、はぁ、ぅ………っ』
男の柔らかな唇が、股間のものを咥えこみ、舌がねっとりと絡みつく。
僕はシーツを掴み、身を捩って喘いでいた。
喉が反り、鼻がピクピクしてきて、今にも果てそうである。
『ぁ、んぅ、はあッ、んぅ……ッ、もお、ぼく、でっ、出——』
『……昔さあ』
『エッ』
んあ、と開けた男の口から。
僕の僕が、てこの原理で僕の下腹部に戻って弾けた。
『遠足……? とかで。昔、クラスの奴らと鍾乳洞に行ったんだけど』
『はぁ、はぁ、はあ……?!』
男の残酷な所業に、自分が受けたのは愛の告白ではなく、
拷問宣告だったのでは——?と。
天井を刮目し、僕は体をビクビクと痙攣させていた。
『その洞窟の、そこら中に石筍があって。当然、男ばっかだし、ちんこだちんこだってバカみたいに騒いでたんだけど』
『はぁ、はぁ……それは……バカだね……大バカ者だよお……っ』
そんな馬鹿げた回想などさっさと切り上げてもらって。
今すぐ続きをして欲しいと、血眼で上体を起こす。
しかし股座の男は、至極幸せそうに、うっとりと僕の一物に頬擦りしているのだった。
『……ほんとバカだよな。俺もそん時、花井暉のちんこは、どんなだろ?ってバカみたいに想像してたんだよね』
『え……』
『俺さ。どこにいても、何をしていても。いつも暉のことばかり考えてたな。それで気がつくと病室にいるんだ。管に繋がれた君の寝顔、ずっと眺めてた』
『僕を……どうして』
遠足なんて、いつのことかも覚えていない。
きっと僕は病欠したのだろうし、そもそも、ちんこを想われるほど、彼とは親しくなかったのだ。
『……どうしてかな。理由も考えなくて、ただ会いたかったから。いつか……君が自由で、何にも縛られていないベッドで、一緒に朝を迎えてみたいとか。ふふ、おとぎ話みたいに、お姫様が俺のキスで目覚めたらいいな、とか? そういう事ばかり考えてたな』
『時岡、くん』
『ねえ、この前みたいに名前で呼んでよ、暉』
無駄にはだけたエロい宗教画みたいな男に跨られ、僕は処女の受胎告知ならぬ、童貞のまま腹上死しそうであった。
『俺の夢、叶えてよ。……暉と、繋がりたい。体の奥まで、感じてみたい』
『ぅ、ん……僕も、したぃ。ハルカ、くん、と——』
『暉……』
男の華奢な指が、僕のしとどに濡れた石筍に触れる。
そして僕らは、眩暈のするようなキスをした。
好きな人に愛され、愛おしいと思う気持ちで、胸も、股間もいっぱいに膨れあがり——
迸る快感に、目の前が真っ白になった僕は。
こうして再び、現実世界で目覚めてしまっていた。
◇
「はぁ……。こんなの、辛すぎるよ」
ようやく目を開け、手探りで己の股間に触れる。
かろうじて夢精は免れたらしいが、相手の居ない虚空を、未だ空しく突き上げていた。
(……いや、でも。あの夢の続きは、きっと地獄の沙汰に違いない。僕は童貞らしく一突きで無様にぶち撒けただろうし、憐れむ恋人の顔を見ずに済んだんだから。……せめて僕が、受け側なら、まだ惨めにならずに——)
目を閉じ、もう一度、初夜のまぐわいに思いを馳せてみる。
しかし——。
モザイクがかった好きピのペの部分は、どう見ても自分の石筍より巨悪だった。
童貞の処女穴には、それもまた地獄の沙汰の拷問となっていたに違いない、と絶望するのだった。
「進むも地獄、進まざるも地獄、進退これ窮まれり……とは、まさにこの事だな」
持ち主同様に、股間もしおらしく萎えていく。
溜め息まじりにもう一度、愛しい恋人の名を呼んでみた。
「会いたいな……好きだよ……ハルカくん……」
「ん……」
思いがけず、傍らでモゾモゾと蠢く人の気配がして。
反射的にガバッと、布団を捲り上げていた。
そこに居たのは当然に、夢の中の愛しい恋人ではなく。
それでも等しく愛しい、僕の掛け替えのない大切な弟が寝ていたのだ。
「ハァ。惺、どうしてそんなに布団の中に潜っちゃったの。あー、さてはまた指しゃぶりしてるな?」
コチョコチョと脇をくすぐりながら、弟のご機嫌を窺う。
昨日は寝ぼけていただけで、また避けられるようでは、本格的に膝を付き合わせて協議しなくてはならない。
(今週は先生のとこに行くの、断って正解だったな。 僕には惺がいるんだもの。いい夢も見たし、そろそろ身を改めて、爛れた関係はやめなきゃなぁ。……そういえば、久しぶりだったな。あんな夢を見たのって)
思い返せば父の失踪後、なぜか母まで家を空けるようになり。
暫くは兄弟二人、広すぎる家で身を寄せ合うように寝ていたのだ。
(僕が、遅くまで試験勉強するようになって。惺も一人で寝られるようになってたから、そのまま寝室もバラバラになったけど。二人で寝てたときは……まだ、ハルカ君の夢をよく見てたっけ)
寝癖でさらにモジャモジャの巻き毛を撫でながら、ふと懐かしい気持ちになっていた。
「惺は、昔のハルカ君に似てるのかも。あれ……? 僕、もしかして……会えないあまりに、とち狂って記憶の捏造まで……?! 身近な弟まで、淫情の餌食に?!」
弟の両頬をムニっとおさえ、その顔を検める。
よく見て、全くの勘違いだと確認したかった——のに、
「えっ、惺……っ。どうしたの……?!」
「ぅぅ、ハァ……ハァ……」
額に汗を滲ませ、苦しげに胸元をおさえる弟。
その熱った頬と、異様に熱い体温に。
兄はようやく、弟の異変に気付くのだった——
ム—、 ムー、 ムー、 ムー
どこからか聞こえるスマホのバイブ音。
自堕落に手探りしているうちに、音は途切れてしまう。
「はぁ」
起きなきゃと思うのに、目を開けたくなかった。
全てが、ただの夢なのだと。
彼のいないベッドで、ひとり目を覚ます……その現実を受け止めるのが辛かった。
——『暉』
そう、僕を。僕じゃない名前で呼ぶ、美しい同級生。
これがただの夢で、まやかしの愛だとしても。
それでも、この時間が永遠に続けばいいと、そう願っていたのに——
◇
『あ……っ、はぁ、ぅ………っ』
男の柔らかな唇が、股間のものを咥えこみ、舌がねっとりと絡みつく。
僕はシーツを掴み、身を捩って喘いでいた。
喉が反り、鼻がピクピクしてきて、今にも果てそうである。
『ぁ、んぅ、はあッ、んぅ……ッ、もお、ぼく、でっ、出——』
『……昔さあ』
『エッ』
んあ、と開けた男の口から。
僕の僕が、てこの原理で僕の下腹部に戻って弾けた。
『遠足……? とかで。昔、クラスの奴らと鍾乳洞に行ったんだけど』
『はぁ、はぁ、はあ……?!』
男の残酷な所業に、自分が受けたのは愛の告白ではなく、
拷問宣告だったのでは——?と。
天井を刮目し、僕は体をビクビクと痙攣させていた。
『その洞窟の、そこら中に石筍があって。当然、男ばっかだし、ちんこだちんこだってバカみたいに騒いでたんだけど』
『はぁ、はぁ……それは……バカだね……大バカ者だよお……っ』
そんな馬鹿げた回想などさっさと切り上げてもらって。
今すぐ続きをして欲しいと、血眼で上体を起こす。
しかし股座の男は、至極幸せそうに、うっとりと僕の一物に頬擦りしているのだった。
『……ほんとバカだよな。俺もそん時、花井暉のちんこは、どんなだろ?ってバカみたいに想像してたんだよね』
『え……』
『俺さ。どこにいても、何をしていても。いつも暉のことばかり考えてたな。それで気がつくと病室にいるんだ。管に繋がれた君の寝顔、ずっと眺めてた』
『僕を……どうして』
遠足なんて、いつのことかも覚えていない。
きっと僕は病欠したのだろうし、そもそも、ちんこを想われるほど、彼とは親しくなかったのだ。
『……どうしてかな。理由も考えなくて、ただ会いたかったから。いつか……君が自由で、何にも縛られていないベッドで、一緒に朝を迎えてみたいとか。ふふ、おとぎ話みたいに、お姫様が俺のキスで目覚めたらいいな、とか? そういう事ばかり考えてたな』
『時岡、くん』
『ねえ、この前みたいに名前で呼んでよ、暉』
無駄にはだけたエロい宗教画みたいな男に跨られ、僕は処女の受胎告知ならぬ、童貞のまま腹上死しそうであった。
『俺の夢、叶えてよ。……暉と、繋がりたい。体の奥まで、感じてみたい』
『ぅ、ん……僕も、したぃ。ハルカ、くん、と——』
『暉……』
男の華奢な指が、僕のしとどに濡れた石筍に触れる。
そして僕らは、眩暈のするようなキスをした。
好きな人に愛され、愛おしいと思う気持ちで、胸も、股間もいっぱいに膨れあがり——
迸る快感に、目の前が真っ白になった僕は。
こうして再び、現実世界で目覚めてしまっていた。
◇
「はぁ……。こんなの、辛すぎるよ」
ようやく目を開け、手探りで己の股間に触れる。
かろうじて夢精は免れたらしいが、相手の居ない虚空を、未だ空しく突き上げていた。
(……いや、でも。あの夢の続きは、きっと地獄の沙汰に違いない。僕は童貞らしく一突きで無様にぶち撒けただろうし、憐れむ恋人の顔を見ずに済んだんだから。……せめて僕が、受け側なら、まだ惨めにならずに——)
目を閉じ、もう一度、初夜のまぐわいに思いを馳せてみる。
しかし——。
モザイクがかった好きピのペの部分は、どう見ても自分の石筍より巨悪だった。
童貞の処女穴には、それもまた地獄の沙汰の拷問となっていたに違いない、と絶望するのだった。
「進むも地獄、進まざるも地獄、進退これ窮まれり……とは、まさにこの事だな」
持ち主同様に、股間もしおらしく萎えていく。
溜め息まじりにもう一度、愛しい恋人の名を呼んでみた。
「会いたいな……好きだよ……ハルカくん……」
「ん……」
思いがけず、傍らでモゾモゾと蠢く人の気配がして。
反射的にガバッと、布団を捲り上げていた。
そこに居たのは当然に、夢の中の愛しい恋人ではなく。
それでも等しく愛しい、僕の掛け替えのない大切な弟が寝ていたのだ。
「ハァ。惺、どうしてそんなに布団の中に潜っちゃったの。あー、さてはまた指しゃぶりしてるな?」
コチョコチョと脇をくすぐりながら、弟のご機嫌を窺う。
昨日は寝ぼけていただけで、また避けられるようでは、本格的に膝を付き合わせて協議しなくてはならない。
(今週は先生のとこに行くの、断って正解だったな。 僕には惺がいるんだもの。いい夢も見たし、そろそろ身を改めて、爛れた関係はやめなきゃなぁ。……そういえば、久しぶりだったな。あんな夢を見たのって)
思い返せば父の失踪後、なぜか母まで家を空けるようになり。
暫くは兄弟二人、広すぎる家で身を寄せ合うように寝ていたのだ。
(僕が、遅くまで試験勉強するようになって。惺も一人で寝られるようになってたから、そのまま寝室もバラバラになったけど。二人で寝てたときは……まだ、ハルカ君の夢をよく見てたっけ)
寝癖でさらにモジャモジャの巻き毛を撫でながら、ふと懐かしい気持ちになっていた。
「惺は、昔のハルカ君に似てるのかも。あれ……? 僕、もしかして……会えないあまりに、とち狂って記憶の捏造まで……?! 身近な弟まで、淫情の餌食に?!」
弟の両頬をムニっとおさえ、その顔を検める。
よく見て、全くの勘違いだと確認したかった——のに、
「えっ、惺……っ。どうしたの……?!」
「ぅぅ、ハァ……ハァ……」
額に汗を滲ませ、苦しげに胸元をおさえる弟。
その熱った頬と、異様に熱い体温に。
兄はようやく、弟の異変に気付くのだった——
1
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる