蕾の乙女は手折る花を誰に捧ぐ【R18】

鯨井 兀

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夜伽実習

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 白亜の塔に黄金の鐘楼をかかげた大神殿。
 そのはずれの塔につくられた“蕾の園つぼみのその”ーーそれが私のいる場所。
 守護神アストラと、その祝福を受けた王家の安寧に尽くすため、各地から麗しき乙女たちが集められている。

 乙女たちは“蕾の乙女”と呼ばれ、修道女シスターとして、帝国のために奉仕するのが仕事だ。
 シスターの仕事はいろいろあって、朝の礼拝や神殿のお手伝い、などなど。
 でも一番大事な仕事は、夜伽実習よとぎじっしゅうをうけること。
 “蕾の乙女”は帝国の王家、さらには王家に仕える騎士団の男たちに尽くすのが仕事なのだから——。





 私はため息まじりに天井を見上げた。
 寝台に横たわり、腰までたくしあげた純白の修道服の裾を握りしめている。

「えー。この教材は、薄くはいだ魔獣の皮を何層にも重ねてあわせた特注品あり、一般に出回る張型よりもより、勃起した男根の感触に近く——」

 壇上から聞こえてくるのは、司祭様の声。
 寝台に寝ているから見えはしないけど、荘厳なステンドグラスを背に、男根を模した張型はりがたを高々とかかげているはずだ。

 この崇高な大広間に、野戦病院かというほどにズラリと並べられた寝台。
 〝蕾の乙女つぼみのおとめ〟たちは、大司祭様のありがたい講義を、ふしだらにも大股を広げて聞いている。

 いつものように寝台の傍には、それぞれ担当の修道士が立つ。
 教材の張型を、まるで聖物のようにうやうやしく手に握りながら、だ。
(もうすぐここにきて一年だけど、乙女に選ばれた子たちって本当にきれいな子ばかりよね。私を乙女にと差し出した村の人たち、今ごろ虚偽罪で捕まってないかしら)
 実技実習中はまな板の鯉になるべしと教わったけど、私は鯉ーーの池の底を這うミミズがいいところ。
 顔も体も貧相だし、他の乙女たちに比べたら、どこもかしこも地味なのである。
 ささやかな胸元に手を当てて、またため息をつくと、

「シスター・エマ」

 ヒゲ面の男が、私の股の間から顔をのぞかせた。
 手には聖物……ではなく、もちろん男根を模した教材の張型が握られている。

「実習が始まっています。もっと股を開きなさい。まだ拳7つほどです。これで殿方を喜ばせることなど、そう、大きく」
「はい、修道士さま。ぁ、あン……」

 すぐにグニュリ、とご立派な張型の先が中に入ってくる。
 何重にも巻かれた革に、媚薬入りのクラゲ草から煮出した粘液が染み込んでいる神殿の特注品だ。

 張型による実習はアストラル帝国のれっきとした夜伽教育で、一般市民にも似たようなものは流通している。
 女は男に尽くし、子を孕み育てることが帝国民としての最大の勤めなのだから。
 選ばれた乙女たちも18を迎えれば〝蕾の園〟から卒業となり、大半はすぐに婚約・結婚をする。
 神に選ばれし乙女も、卒業したらただの若い女となり、行き遅れれば一家の恥とされるほど。
 特に選出された乙女たちは、貴族や大商家、他国の王族なんて立派な身分のご令嬢ばかりだから、授業が終われば出会いを求めて婚活に勤しむのが日課だ。

「ああ、あん」

 寝台に寝かされた乙女たちの声が、あちこちから聞こえてくる。
 司祭の号令とともに、実技担当の修道士たちが、乙女の膣穴に張り型をいれはじめる。
 私の中にも、グチュゥとさらに奥へと教材が入ってきた。

(あれ……でもなんか、いつもより、大きい、かも……。お腹の方に、あたる)

 スカートを握りしめ薄目で男の方をみた。
 切り揃えた厚いヒゲの下で、舌なめずりするのが見えた。
 実習担当の修道士たちは、みな実習中に陰茎が反応しないよう、禁制の術がかけられている。
 術は強力なもので、そのまま不具になる者もいるらしく、大半が年配者ばかり。
 だから、このヒゲの修道士はまだ若い方だ。

(この人、最近、実習担当になったのよね。魔塔でなにか問題をおこして、降格処分でここにきた元・魔導師って噂を聴いたけど)
 修道士や修道女シスターは、神を敬う心さえあれば一般人でもなれる職業だ。
 けれど神官や魔導師はちがう。
 潜在的に高い神聖力や魔力を持って生まれた者だけの、いわば〝選ばれし者〟の仕事だ。
 魔塔勤めの魔導師なんて、よほどのエリートだったはず。
 それが今や、こんな農村育ちの貧相な女の股を棒でえぐる仕事なんて腹立しいのも当然だ。
(魔法かあ。なんの取り柄もなく、平凡な私には無縁な話だから憧れてしまうわ。そういえば一度だけ不思議な体験をしたけど……仲良しの友人の瞳の色が、魔法みたいに——)
 懐かしい記憶をたどって、ぼうっと天井を見上げていたら、
「イ、イタッ」
 強く張り型を奥に突き入れられて、思わず声が出る。

「シスター・エマ、集中しなさい。あなたの奥を、私の、逞しいもので突かれているのですよ。ほら、好きでしょう、ここ」
「あぅ……ンッ。気持ち、いいです」

 私はロングスカートの裾を握りしめ、授業で習った言葉を必死につらねる。
 気持ちいいと思えば中はうねり、喘ぐほどに濡れる。
 ここにきてから私の体も従順に反応するようになっていた。

「もっとしてください、修道士さま。奥に、かたいものを、ください。あぁ、ん」
「そうです。もっと体に正直になりなさい」

 男は口元にいやらしい笑みを浮かべて、さらに太ももに頬擦りし、ヒゲを擦り付ける。
(……張型以外で体に触れるのは禁止なのに。この人、嫌がらせが多いのよね)
 違反行為を申告しないとわかったのか、さらに舌を太ももに這わせた。
 そして張型でグリグリと奥をなぶりながら、

「しっかり咥えなさい。この形を、中で覚えるように」
「あ……ンッ、やめてぇ……」
「訂正しなさい、シスター・エマ。やめてではなく、悦いよいの間違いだと。ほら、中から蜜がどんどんあふれてきましたよ。虚偽の発言は、減点ですよ」

 グチュグチュと水音を立てられ、私は荒く吐息をもらす。
(もう、こんなもので気持ちよくなんてなりなくないのに。頭が、くらくらしてくる)
 張型がギリギリまで引き抜かれると、入り口付近の弱いところを突き上げられる。とたんに、

「ア、んんン……ッ」

 ひきつった声をもらし、頭の中が白んでいく。
 チカチカと星がまたたいて、私はあっけなく達してしまった。
「こんな愛具で達するとは破廉恥な……一から教育しなおさなければ」
「う、うう」

 終業を知らせる塔の鐘楼が鳴りわたり、ようやく今日の実習は終了する——

「もうすぐ本物の硬い男のものを挿れてやるからな。秘芽に吸い付いて、舌でねぶり、指で中を押し広げ……私の雄々しいもので、イヤとうほどかき混ぜてやる」
  
 まどろみの中、そんな幻聴が鐘の音にまじって聞こえた気がした。

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