【R18】傾国の罪人【完】

くじらいたか

文字の大きさ
7 / 7

¿

 月も次第に翳りゆく、お白洲に二人きり。
 あられもない己の姿を恥じて、傾国の美男はシクシクと泣いていた。

「体が痛むのかい。迎えに来るのが遅くなったね……私が不甲斐ないばかりに難儀させた」

 そっと羽織を脱ぎ、甚振いたぶられた不憫な体に掛けてやる。

「若様……」
「可哀想に、声も枯れて。今、水を汲んでくるから待ってなさい」
「そんな、いけません……っ。自分で、やりますから」

 とはいえ、立ちあがろうにも長きに渡る責めで、腰が立たない。
 その上、トロリ……と。
 先刻、奥に出されたものが尻穴から溢れるのを感じ、悍ましさに体が震えた。

「うぅ、ぐすん……ぐす」
「さ、水をお飲みなさい。泣いてばかりいたら干涸びてしまうよ。ああ、唇も切れてしまったのかい」

 水桶で濡らした手拭いが、そっと唇に添えられる。
 傷は滲みたが、久方振りの人の温もりに触れた。
 若旦那は甲斐甲斐しく男を労り、足の指先まで丁寧に拭っていく。
 けれど、尻となると途端に泣いて嫌がるので、つい、溜め息を漏らす。

「……ハァ」
「わか、若さま、うぅ……申し訳、ございません。私のせいで、若様を、こんな目に」
「いや、お前は何も悪くない。ただ、人は恐ろしいものだなと、そう思ってな」

 拭っても拭っても、涙が頬を濡らしてしまう。
 どんなに穢されようとも斯様かように美しい者も居れば。
 いくら豪勢に飾り立てようとも醜い者も存在する。
 この場にいた真の罪人共を残さず罰したなら、大店どころか国も傾き、人の世など容易く乱れるのだろう。

「貴方のような無垢な子が居るべき場所じゃなかった。あの店も、この国も」
「でも、大旦那様には、助けられた恩が、あります」
「ハァ……お人好しだね、お前」

 涙を堰き止めようと、そのまなじりに口付けた。
 すると驚いたのか、ようやく泣くのを止め、頬を赤らめた。

「そんながお方が堪らなく愛おしいのだから、私も愚かに違いないが。おや、どうして顔を伏せるの」
「だって、恥ずかしい」

 頬を指でくすぐられると、顔が火照ほてり、男は俯いてしまう。
 あれほど恐ろしかった人の手が、今は心地がいいのだ。
 それどころか、触れられる度にゾクゾクと官能してしまう。
 そんな淫らな己が身を恥じ、ますます肩身を狭くしていた。

「暫く会っていないのだから、よく顔を見せておくれよ。その愛らしい唇にも口付けもしてみたいが、叶いませんか」
「………っ」

 恋しい相手と、男はまだ、まともに目すら合わせていない。
 穢れた身で、好いたお方の瞳に映り込むなど、死ぬ方が救われる、と。
 舌を噛んでしまいたいとすら思うのに。
 結局は、触れてくる手すら拒みもせず。求められれば天に昇るほど歓喜してしまうのだから。
 体どころか性根すらも救いようもない淫乱に成り果てたのだ……と。
 ついには、自棄やけになり、その手に触れていた。

「若様……かように穢れた私でも、本当に、口付けして下さいますか」

 すがるように、温かな手に頬を擦り寄せていた。
 たとえ、この身が堕罪で地獄の業火に焼かれようとも。
 今はこの手を放したくない……と、またハラハラと涙が零れていた。

「唇だけは、まだ、誰にも奪われておりません。穢れてしまわぬうちに、どうか願いが叶うなら……若様に、奪って欲しいのです」
「ハァ……なんとも会わぬ間に随分と泣き虫になったものだ。これでは本当に赤目の白兎になってしまう」

 そういって若旦那は鼻先に、ちゅ、と悪戯に口付けを落とす。
 そして男を見つめ、優しく目を細めた。

「お前を穢せる者など、三世を探しても居やしないよ」
「そんな……でも」
「身も心も、これほど清らかで美しい人を、私は他に知らぬから。それとも何かい、私が世間知らずの無知だと、まだ言い張るの」
「うぅ……グス……っ、わあああん……若さまあぁ」

 秘めたる想いが溢れ、その胸にヒシとしがみついていた。
 数多の男に犯された身でも、唇の他にも守り抜いたものがある。
 無実の罪を問われようと、不当に責め立てられようとも。
 決して、心だけは偽らなかった。
 私には焦がれるほどに慕うお方が、別にいるのだと、胸の内で何度も叫んでいた。
 信じて欲しかったのは、たった一人だけ。
 そして、その叫びを聞き入れ、手を差し伸べてくれたのも、たった一人——このお方だけだった。

「……口付け、して欲しい。若様、してくださいませ」
「仰せのままに、私の愛しいお方」
  
 二人は初めて唇を重ね、その甘やかな感触に酔い痴れた。
 啄むような口付けは、次第に深くなり、熱い舌が絡み合う。
 抱き合いながら、片時も離れたくないと何度も口付けを交わす。

「若、さま……私を、全部……若様のものに、してくださいまし……」
「なれば、もう二度と離れぬと、約束して下さい」
「はい……ぁ……ッ」

 トサリと布団に倒され、男の白肌に熱い舌が這い回る。
 胸の小さな桃色の蕾が口に含まれると、「アッ」と腰が跳ねた。

「ああ、すまない。あまりに愛らしくて、つい、加減が解らないな。可愛い……痛くないかい」
「わ、若様の舌、気持ちよくて……ああンっ。気持ちいい……!体、へん……っ」
「こちらも舐めていいかい。ぷっくりとスモモのように熟れて、口に含んで味わってみたい」
「や、やぁ……っ。下は、嫌です……恥ずかしぃ」
「どうして。可愛いよ、ほら……触れて欲しそうに跳ねている」
「や、見ないで下さいまし……こんな、淫らではないのです、本当に……ぐすっ」
「泣かないで、淫らな姿をもっと見せておくれよ。ほら、私のものも——」

 股座に聳り立つものを握りしめ、男の勃起に擦り寄せた。
 互いの一物がこすれると、あまりの快感に身悶えてしまう。

「ああんっ、だめ、アアッ」
「先っぽから雫がこぼれてきたね……腰が止まらない、ん……」

 男の唇を、ちゅ、ちゅ、と喰みながら、魔羅を擦り合わせ、腰を揺らす。
 ネチョ、ぬちょ、クチュ……
 淫らな音を立て、次第に互いの腰を、強く押し付け合っていた。

「手を、貸しておくれ……我慢出来そうにない。このまま共に果ててしまいたい」
「はぃ……ぁ……っ。若様の、とても、大きぃ」
「もっと強く握って、ああ……いいよ、魔羅が、もう、 はち切れそうだ」

 顔を赤らめ、二人分の一物を必死に握る男。
 その手を、さらに若旦那の両手が力強く包み込む。

「ぁ……っ、はあ……っ。わかさま、出てしまいます……っ、あっ、あっ、あっ、だめ」
「私も、ウッ、出るッ」
「ン——……っ」

 びゅっ、びゅるるッ、ビュッ、ビュ——……っ、と。
 二人分の子種が、男の白肌に飛び散った。
 顎や口元にまで飛沫が掛かり、桃色の乳首からもトロリと白濁が零れた。

「ハァ……ハァ……すまない。顔にまで………」
「はぁ……はぁ……わか、さま、の」

 男はうっとりと手を這わせ、指に絡めた子種を口に含んでいた。

「美味しぃ……もっと、欲しいです、若様の子種……」
「ハァ……困ったお方だ。私まで狂わせて、このままではどうにかなってしまうよ」

 すぐに滾りを戻した魔羅をグリグリと擦り付け、男を誘う。
 男もまた、掬い取った子種を己の肉穴へと擦り付け、淫らに股を開いた。

「こちらにも下さいまし……若様の堅い魔羅が欲しいと、中が疼いてしまいます」
「ああ、夢ではなかろうか。貴方と一つになれるなど、何度、夢に見たか知れないよ」
「私も……ずっと若様だけを、お慕いしておりました」
「可愛い私のつがい、愛しているよ」
「若様……」

 愚かな自分を見捨てもせず、迎えに来てくれた尊いお方。
 穢れた身をその瞳に映しても、変わらぬ愛を伝えてくれる恋しいお方。
 三世を探し廻っても、そんな方にはもう巡り会えぬだろう。

「……若様と、一つになりたい」

 足を開けば穴がヒクヒクと震えて、雄を誘う。
 はしたなくとも、どうしてもこのお方が欲しい。

 ——『貴方の子種を、下さいまし』

 腹上で泣いた女の胸の内が、少しだけ理解できる気がした。
 人はそれぞれに、見えぬ傷跡を抱えているのだ。
 肉体を繋げることで、その傷を癒そうとした憐れな女。
 あの者には幸せになって欲しいと、ふと願っていた。
  
「辛かったら、私の舌を咬んででも止めなさい」
「ん……わかさま、はやく、待ちきれない」
「ハァ……あまり人を誘惑してはいけないよ。皆、狂ってしまうから」

 二人の子種をたっぷりと一物に塗り付け、愛らしい肉穴にあてがう。

 クチュ……ヌチュ……ぐぷ、ぐぽ、ヌプ……

 既に柔らかく解れた入口を、更に鬼頭で押し広げていく。
 顔を熱らせ、「あっあっ」と幼気いたいけに喘ぐ男。
 下衆に辱めを受けようと、冒されぬ純真無垢な美しい肢体。
 愛しい者が乱れる姿を前にしては、ついぞ理性が掻き乱される。
 どうにも贖えず下衆にまで成り下がってしまうのだ。

 グポリ……ッ

 ぐっと腰を前に押し込めば、「アァ……ッ」と一際高く啼く。
 情欲のままに、その色めいた喉を舐め上げ、真っ白な肌に口吸いの痕を残す。
 無意識に吸い寄せられてしまう手と舌が、細腰から胸へと這い回り。
 再び小さな胸飾りを悪戯に弄んでいた。

「わ、わかさま、——ぁッ」

 桃色の蕾を口に含んでは、舌先で弾き。
 赤子のように吸い付いては、歯を立て、指でもクニクニと転がした。
 男は胸を反らせ、いとも容易く反応してしまう。

「はあ、ぁン、あん、あん……ッ。わかさま、もぅ、へん……からだが、あつい」
「お前の中も、熱くて、魔羅が溶けてしまいそうだよ。痛くないかい……腰が止まらないよ」

 男の体を腕に抱きしめ、腰を揺らす。
 耳の穴まで愛らしく、舌を挿し込み可愛がる。
 すると肌を震わせ、恥ずかしげに顔を背けて見せた。

「ああ……可愛いね、お前は。はらの肉襞まで震えて……そんなにきつく締めつけられては、すぐに果ててしまうよ」
「ぅう、ぁ……ッ、はぁ……中に、ほしぃ、若様の、くださいませ……! そそいで、はらのおくに」

 そういって淫らにも腰に足を絡めてくる。
 堪らず若旦那も、魔羅でズンズンと奥を責め、ここて果てたいと腰を回した。

「ハァ、ハァ……いけないよ、あまりそう……種を欲しがっては、本当に孕んでしまうやもしれない」
「……! ややこ……? 若様のややこ、欲しいです……くださいませ」
「まったく、仕方のないお方だ」

 こうして、二人は飽く事なく交合まぐわい続けた。
 体を重ねて伝わる、互いの体温と胸の鼓動に。
 ようやく離れていた時間と距離が、埋まっていくようであった。

 辺りが白み始めると、二人は閨を移す。
 仲睦まじく、幾日も幾日も籠り、繋がり続けた。
 それには月も太陽も、遠慮して姿を隠す。

 何も知らぬ民衆は、幾日も幾日も。
 暗闇の中、天に祈りを捧げ続けたという——

感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

青年は淫らな儀式の場に連行される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。