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コミケに進出してみました

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 ぼちぼち来る冒険者さん達には、キャネット・シティ特製オヤツ(非常食)は大好評で、お土産にと少しだけど代金を払って買っていってくれる有り難いお客さまもチラホラ出てきた。お酒ダメなお子さま用に、ラクアの干したオヤツも用意するようにしたし。あとは.....

「ブランド力だよねっ!」

どかで聞いた声に振り向くと、忘れもしない前髪パッツンの元貴腐人、現腐男子カワウソのサイラとパートナーののんびりカピバラのボーゲさんが立っていた。

「どうしたんだ、いきなり...」

 私はさすがにビックリした。その背中に背負ってる大荷物はなに?

「あぁ、今回はこの近くの妖精界でコミケがあるんだ。で、ブースも確保したから出店するの」

「へ、へえぇ.....」

 じゃあ、そのリュックに入っているのは、ボーゲさんが両手に下げているのは、み~んな薄い本なわけですね。

「え、違うわよ~」

 ケラケラとカワウソ女が笑う。

「もっといいモノも入ってるんだ。それよりさ、あんたが頑張ってアピールしているご当地オヤツ、コミケの私のブースで売らせてくれない?」

 えぇ~っ、いいんですか?......あ、でも買いにくるのは、妖精さん&精霊さんなのでは?

「あぁ出店者の中には獣人にんげんもいるから、いい宣伝になるよ~。でも、その前にその色気も素っ気も無いパッケージ、なんとかしなきゃ」

 呆気に取られているうちに、サイラは支部長さんとどんどん話を進め、気がつけば支部長さん宅のダイニングで、夜なべしてラクアの実とグルワンのお芋の袋詰め作業。サイラのお得意のイラストで描かれたパッケージは.....

「何これ?」

 お魚咥えたドラネコならぬオヤツを咥えたヤマネコって......私ぃ?しかも商品名まで.....。

「ヤマネコも酔いしれるキャネット・シティ特産オヤツ...?」

「そ、こういうのは、ネーミング大事なんよ。キャッチ・コピーが効いてないとね」

をいっ!.....何故知っている。

「あ、売り子もよろしくね~」

って、なぜ勝手に許可を取っている!

「あ、気にすんな。出張扱いにしとくから」

支部長さん、物分かり良すぎますっ。



 翌日、眠い眼を擦りながら、一式抱えて妖精界へ。森の入り口の大木にサイラがカード型のクリスタルタグをかざすと、スーッと別空間の扉が開いた。スゴいセキュリティ。

「参加者以外は入れないようになってるのよ。邪魔されたくないじゃん」

 確かに。にも関わらず......

「ルノア、なんであんたまでここにいるのよ」

 毎度お馴染みな灰色狼がデカい背嚢はいのう背負って、私の背後に突っ立ってる。

「荷物持ち、頼んだのはお前だろ?」

 私は頼んでおりませんが.....あ、支部長さんてば!

「まぁいいから早く行こう!」

 そして異空間に足を踏み入れる私達。
 けれど......。





「何これ~!」

 サイラのブースとやらに着いた途端、ー着替えてね~ーと渡された衣装。まぁ色は地味だし、あんまり妙な飾りもついていないと安心していたら...

「何、このミニなパンツ。上着の裾の方が長くない?それもひらひらしてるし.....」

「似合ってるよ~。あんたのキャラだと、絶対に乱藤○郎だと思った。うん、バッチリ。そっちのお兄さんは、まんま大倶○伽羅っぽいから、いいわ~」

「バッチリってなによ。なんなのよ~」

「コスプレよ、コスプレ。と○らぶ、知らないの?」

「知らないよ~」

「ま、いいから。しばらく留守番お願いね~」

 半泣きの私を置いてスタコラ薄い本を買いに走るサイラ。気を取り直して、やってきたお客さんに薄い本と一緒に、パッケージしたラクアとグルワンを勧める。サイラの本は、結構な人気で、本人が盛っているわけじゃなくマジで売れっ子らしい。

 太ももが付け根のあたりまで剥き出しでスースーするし、なんか隣に座っているルノアももぞもぞして落ち着かない。

「あっ、聖樹た~ん!」

 という声にそちらを見ると、緑色の髪に枝芽を飾った超可愛い美少年。金髪の彼氏とお手てを繋いで、ん~可愛いカップルや~。あ、こっち来る。

「新刊下さいな」

 まぁそんなかわゆいお声で、なんつーものをお買い求めになるんですかっ。

「やぁだ~、私よ、私。この前のお団子、美味しかった?」

 も、もしや、あの根っこ、うにょ~んの精霊さんですかっ!前世腐女子の樹齢一千年超えの.....うっそ、可愛い~。.....なのに、

「なぁにまだ、BがL してないの?やだぁ~早く交合まぐわって~。聖樹たん、楽しみにしてるのに~」

 いや、あの、その、なんちゅうことを仰有るのですかっ!もうルノアが真っ赤になっているじゃありませんか、私もだけど。

 るんるんと薄いご本とオヤツをお買い上げいただき、彼氏様と仲良くお手て繋いでお帰りになる背中を見送って、ほうっと一息。
 サイラによれば、『モンスターだってBLしたいんです!』という妖精界でも超人気のBL小説の主人公にもなっていて、ファンクラブもあるとか。時々、BLを求めて様々なところに出没されるとかされないとか.....。

「気にいっていただけて良かった。次も頑張る」

 サイラ、思いっきり気合い入りました。
 早々に薄い本もオヤツも完売。暇になった私とルノアは他のブースの薄い本.....ではなく、グッズやスイーツを買い、フロアの片隅で脱力。

「これで、広まるといいな.....」

「うん」

 妖精スイーツを片手に、ぼーっとしながら、流れる虹色の雲を眺める.....って、何見てんのよ、ルノア。

「脚、細いな」

 余計なお世話じゃ、見るな!

「はあぁ......」

 聖樹たんがルノアにこそっと言っていた台詞がちょっと気になるけど、今日は疲れたから忘れよう。

ーまぁだ踏ん切りつかないの~。また泣き見るわよ.....ー


だって......。
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