27 / 36
俺達はチームだ!
しおりを挟む
課長(レイトン先生)達と別れた俺は摩りきれた絨毯の敷かれた廊下をまっすぐ奥へと進んだ。
そして一枚の扉の前で足を止めた。大きく息を吐き、二回、扉をノックする。
「ラフィアンだけど、入ってもいいか、アントーレ」
「どうぞ.......」
平静なようでいて、少し震える声が答えた。
俺は扉を開けて、部屋の中に足を踏み入れた。
アントーレは窓を背にベッドに座っていた。表情は強い日差しの影になっていて、よく見えない。
が、俯き加減の面差しが、じっと組んだ手元を見ているのがわかった。やつが困ったり困惑した時の癖だ。俺はさりげない素振りで語りかけた。
「剣の稽古は終わったのか?」
「ついさっき......」
蜂蜜色の髪が小さく揺れた。
俺はごくりと唾を飲み、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「教えてくれ。この先のストーリーを。アントーレ......いや、二宮」
やつの首が上がり、俺をじっと見つめる。眼差しが揺れて今にも泣き出しそうだ。
俺はこの表情を何回見てきたろうか。自信がなく不安で、だが自負だけは強かった。追及されることをいつもひどく恐がっていた。
「なんのことか......」
そうやってしらばっくれようとするのも、お前の癖だ。だが、いつも言ってただろう?向きあわなきゃ解決の糸口は見つからない。
「お前を、アントーレを助けたいんだ。そのヒントを持っているのはお前だけなんだ。......お前のストーリーのラスボスは誰なんだ?」
「言っている意味がわからない......」
アントーレは再び目線を足元に落とした。組んだ手の指先が微かに震えている。
俺は意を決して言った。
「隠さないでくれ、二宮。俺達はチームだったろう?ずっと......フォローし合ってきたじゃないか」
アントーレは、二宮は口を開こうとしなかった。
が、ひとつの足音がツカツカと歩み寄り、アントーレつまりは二宮の前に仁王立ちした。
「エメル......」
エメルの宮下さんはその言葉には答えず、アントーレの襟首を引っ掴んだ。宮下さん、まだ言質取れてませんよ。
けれど、彼(彼女)は、構わず、アントーレに向かって叫んだ。
「なんで死んだのよ!あんなに、辛い事があったら言ってって、言ったじゃない!」
その目からは大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
アントーレ、いや二宮の頬を一筋、二筋、滴が伝った。
「宮下.....さん......」
やっぱりアントーレは二宮だった。ほっとして振り向いた後ろで、レイトン先生の姿の課長が静かに頷いた。
「お前はひとりじゃない。何度も言ったろう。仲間を信じろ。少なくとも......」
レイトン先生の課長がニッと笑った。
「部下のケツ拭くのが俺の仕事だ。前世からな」
俺も大きく頷いた。
「ひとりで潰れるな。ちゃんとフォローさせろ」
「課長......宮下主任須藤先輩」
アントーレの二宮は目を見張り、涙でぐちゃぐちゃな顔で、笑った。
課長、いやレイトン先生に外界遮断の魔法を施してもらって、俺達はアントーレに転生した二宮と向き合った。
そして一枚の扉の前で足を止めた。大きく息を吐き、二回、扉をノックする。
「ラフィアンだけど、入ってもいいか、アントーレ」
「どうぞ.......」
平静なようでいて、少し震える声が答えた。
俺は扉を開けて、部屋の中に足を踏み入れた。
アントーレは窓を背にベッドに座っていた。表情は強い日差しの影になっていて、よく見えない。
が、俯き加減の面差しが、じっと組んだ手元を見ているのがわかった。やつが困ったり困惑した時の癖だ。俺はさりげない素振りで語りかけた。
「剣の稽古は終わったのか?」
「ついさっき......」
蜂蜜色の髪が小さく揺れた。
俺はごくりと唾を飲み、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「教えてくれ。この先のストーリーを。アントーレ......いや、二宮」
やつの首が上がり、俺をじっと見つめる。眼差しが揺れて今にも泣き出しそうだ。
俺はこの表情を何回見てきたろうか。自信がなく不安で、だが自負だけは強かった。追及されることをいつもひどく恐がっていた。
「なんのことか......」
そうやってしらばっくれようとするのも、お前の癖だ。だが、いつも言ってただろう?向きあわなきゃ解決の糸口は見つからない。
「お前を、アントーレを助けたいんだ。そのヒントを持っているのはお前だけなんだ。......お前のストーリーのラスボスは誰なんだ?」
「言っている意味がわからない......」
アントーレは再び目線を足元に落とした。組んだ手の指先が微かに震えている。
俺は意を決して言った。
「隠さないでくれ、二宮。俺達はチームだったろう?ずっと......フォローし合ってきたじゃないか」
アントーレは、二宮は口を開こうとしなかった。
が、ひとつの足音がツカツカと歩み寄り、アントーレつまりは二宮の前に仁王立ちした。
「エメル......」
エメルの宮下さんはその言葉には答えず、アントーレの襟首を引っ掴んだ。宮下さん、まだ言質取れてませんよ。
けれど、彼(彼女)は、構わず、アントーレに向かって叫んだ。
「なんで死んだのよ!あんなに、辛い事があったら言ってって、言ったじゃない!」
その目からは大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
アントーレ、いや二宮の頬を一筋、二筋、滴が伝った。
「宮下.....さん......」
やっぱりアントーレは二宮だった。ほっとして振り向いた後ろで、レイトン先生の姿の課長が静かに頷いた。
「お前はひとりじゃない。何度も言ったろう。仲間を信じろ。少なくとも......」
レイトン先生の課長がニッと笑った。
「部下のケツ拭くのが俺の仕事だ。前世からな」
俺も大きく頷いた。
「ひとりで潰れるな。ちゃんとフォローさせろ」
「課長......宮下主任須藤先輩」
アントーレの二宮は目を見張り、涙でぐちゃぐちゃな顔で、笑った。
課長、いやレイトン先生に外界遮断の魔法を施してもらって、俺達はアントーレに転生した二宮と向き合った。
10
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる