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謎解きは苦手なんだよ
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「それにしても......」
俺とレイトン先生すなわち課長、エメルさんの宮下さんはとある小さな屋敷の一室で膝を詰めて話し合いをしていた。
アントーレとマグリットは剣の稽古、ルートヴィヒはリヴァロ先生と一緒に薬とポーションを作っている。
ここはクリスの言うところの暗部の隠れ家のひとつで、所有者は土地の地主......ということになっているらしい。
クリスは俺達を屋敷に案内すると、暗部の手下らしい者を引き連れてどこかへ出掛けていった。
『確かに、父上の手の者だ』
とアントーレが言ったのは、彼らが身体の何処かに小さく同じ秘紋の刺青を入れていたからだ。
ちなみにクリスは内股に入れているということで、チラ見させられた時にはさすがに焦った。
違う意味でいけないモノを見てしまった気がして赤面した。
クリスは『初心ですねぇ』と笑っていたが、やっぱり可愛い。これで殺しもやるなんて信じられない。
「本当に信じられないよな」
とレイトン先生の村上課長が呟く。
「私達の知ってるゲームとはかなりかけ離れてきてますからね」
エメルさんの宮下さんも深く溜め息をつく。
「俺がシナリオを変えたせいですか、やっぱり......」
悪役令息のはずだった俺が設定キャラ無視で断罪フラグを折りまくったから......。
「そんな話じゃねぇよな」
課長の言葉に宮下さんが頷く。
「いくら須藤君がラフィアンのキャラをぶっ壊したにしても、主人公が暗譜とか、エメラルダスの隣国の皇太子出現なんてあり得ないでしょ」
確かにそれはそうだけど、宮下さんのそれは二宮がぶっ込んだキャラだから。
「そうだよな......。二宮が元の恋愛ゲームの中にRPG 仕込んだ時に作ったキャラだもんな」
そう、俺がこの世界に来てシナリオを書き換える前に二宮が既に作家先生の作った世界を、いわば書き換えてた。
「てことは、このシチュエーションもヤツが書き換えたプログラムなのか?」
課長が唸る。
「現物見てないからなんとも言えないですよね......」
そこが一番、辛いところだ。
俺達が試験的に完成させていた『奇跡の青薔薇』のBL ゲームなら、主人公が攻略対象を全て攻略して、王子のプロポーズに歓喜して終わるハピエンのストーリーだ。
二宮に言わせれば、
『プロポーズされたからって必ずしも無事に結婚できるかわかりませんよね。人生ってそんな生易しいもんじゃない』
ということになるんだろうけど。
実際、作家先生は別パターンのシナリオで、悪役令息に『ざまあ』させていたし......。
流行ってんのかな、『ざまあ』。
「でも別パターンのシナリオでも、、悪役令息は王子に『ざまあ』しますけど、主人公が王子と結ばれていないから、『ざまあ』も成立しないですよね」
「須藤君の悪役令息がハピエンなら、主人公が『ざまあ』しなきゃいけないんだけど、シチュエーションが違い過ぎるわよね。主人公が暗部なんて、まったく別なゲームだわ」
「そうすよね.....」
まったく別なゲーム......。恋愛BL ゲームを装った何か別の.....。
はっ、と宮下さんが顔を上げた。
「須藤君、このゲーム作ってる時、なんか別のゲーム作ってなかった?」
「俺は無いですね。......あるとすれば、二宮ですね。アイツ、自分のオリジナルをSNS かなんかで配信してたみたいですけど」
ちょっとだけ、見せてもらったことがある。
『結構、評判いいんすよ』
とかなり得意気だった。が、企画に出したら......と勧めても首を縦に振らなかった。
「どういうゲーム?」
「モブだった男が、試練を乗り越えて、並みいるスパダリを蹴散らして昇りつめるRPG でしたね。企画に出したら、結構当たったと思うんですけどね」
俺の言葉に、課長の目がキラリと光った。
「それ主人公は男か?」
「そうですけど......」
「ヒロインは?」
俺は首を傾げた。
「そう言えば、ヒロイン......いなかったかもしれないですね。女の子のビジュアル、無かったから」
「そんなこと無いだろ。男が昇りつめるならヒロインは言わば勲章だ。いなかったらクソつまんねぇぞ」
俺の言葉に課長が吐き捨てるように言ったのを、宮下さんが眉をしかめた。
「そんなハーレム希望な人ばかりじゃないでしょ。中には課長みたいに美人なお兄さん好きな人もいるでしょ」
俺ははっと気づいた。
「それだ!」
二宮が課長と同じ指向だったら、ヒロインが女性とは限らない。だから企画にも出さなかった。自分がゲイだと知られたくなかったから。
「それって?」
「二宮のゲーム......自分と同じ傾向、課長タイプの人向けだったら、ヒロインも男性になりますよね」
課長が目を見開き、唸った。
「二宮が密かに自分の作ったゲームのプログラムをそっくりそのまま入れ込んだって訳か?」
「そのゲーム自体は伏線的に見えなくて、ウィスタリア・ルートでダンジョンが開いて魔王退治が成功したら、浮かび上がっくる......か」
宮下さんも唸った。
「つまり、二巡目は別なゲームになりますよね。やり込もうにも出来ない。二宮はあの先生が大嫌いだったから.....」
「手の込んだ嫌がらせだな」
課長が唇を歪めて苦笑した。
「じゃあ、そのリミックスしたゲームの中に私達はいるわけよね。ならばなおさら、二宮君を探し出さないと.......」
俺は大きく頷いた。
たぶん、二巡目のゲームの主人公は、マグリットだ。そしてたぶん、ヒロイン・ポジは俺だ。認めたくないけど。
マグリットとしちゃったし......。
「でも、何処にいるんだ?」
課長が頭を掻く。
「わかりませんけど......」
俺はひとつだけ確信していた。
「主人公ではないですね」
転生者は主役にはなれない。
それがこの世界の法則。
そして、その時、小さな足音が扉の前から去っていったのを、俺は聞き逃さなかった。
俺とレイトン先生すなわち課長、エメルさんの宮下さんはとある小さな屋敷の一室で膝を詰めて話し合いをしていた。
アントーレとマグリットは剣の稽古、ルートヴィヒはリヴァロ先生と一緒に薬とポーションを作っている。
ここはクリスの言うところの暗部の隠れ家のひとつで、所有者は土地の地主......ということになっているらしい。
クリスは俺達を屋敷に案内すると、暗部の手下らしい者を引き連れてどこかへ出掛けていった。
『確かに、父上の手の者だ』
とアントーレが言ったのは、彼らが身体の何処かに小さく同じ秘紋の刺青を入れていたからだ。
ちなみにクリスは内股に入れているということで、チラ見させられた時にはさすがに焦った。
違う意味でいけないモノを見てしまった気がして赤面した。
クリスは『初心ですねぇ』と笑っていたが、やっぱり可愛い。これで殺しもやるなんて信じられない。
「本当に信じられないよな」
とレイトン先生の村上課長が呟く。
「私達の知ってるゲームとはかなりかけ離れてきてますからね」
エメルさんの宮下さんも深く溜め息をつく。
「俺がシナリオを変えたせいですか、やっぱり......」
悪役令息のはずだった俺が設定キャラ無視で断罪フラグを折りまくったから......。
「そんな話じゃねぇよな」
課長の言葉に宮下さんが頷く。
「いくら須藤君がラフィアンのキャラをぶっ壊したにしても、主人公が暗譜とか、エメラルダスの隣国の皇太子出現なんてあり得ないでしょ」
確かにそれはそうだけど、宮下さんのそれは二宮がぶっ込んだキャラだから。
「そうだよな......。二宮が元の恋愛ゲームの中にRPG 仕込んだ時に作ったキャラだもんな」
そう、俺がこの世界に来てシナリオを書き換える前に二宮が既に作家先生の作った世界を、いわば書き換えてた。
「てことは、このシチュエーションもヤツが書き換えたプログラムなのか?」
課長が唸る。
「現物見てないからなんとも言えないですよね......」
そこが一番、辛いところだ。
俺達が試験的に完成させていた『奇跡の青薔薇』のBL ゲームなら、主人公が攻略対象を全て攻略して、王子のプロポーズに歓喜して終わるハピエンのストーリーだ。
二宮に言わせれば、
『プロポーズされたからって必ずしも無事に結婚できるかわかりませんよね。人生ってそんな生易しいもんじゃない』
ということになるんだろうけど。
実際、作家先生は別パターンのシナリオで、悪役令息に『ざまあ』させていたし......。
流行ってんのかな、『ざまあ』。
「でも別パターンのシナリオでも、、悪役令息は王子に『ざまあ』しますけど、主人公が王子と結ばれていないから、『ざまあ』も成立しないですよね」
「須藤君の悪役令息がハピエンなら、主人公が『ざまあ』しなきゃいけないんだけど、シチュエーションが違い過ぎるわよね。主人公が暗部なんて、まったく別なゲームだわ」
「そうすよね.....」
まったく別なゲーム......。恋愛BL ゲームを装った何か別の.....。
はっ、と宮下さんが顔を上げた。
「須藤君、このゲーム作ってる時、なんか別のゲーム作ってなかった?」
「俺は無いですね。......あるとすれば、二宮ですね。アイツ、自分のオリジナルをSNS かなんかで配信してたみたいですけど」
ちょっとだけ、見せてもらったことがある。
『結構、評判いいんすよ』
とかなり得意気だった。が、企画に出したら......と勧めても首を縦に振らなかった。
「どういうゲーム?」
「モブだった男が、試練を乗り越えて、並みいるスパダリを蹴散らして昇りつめるRPG でしたね。企画に出したら、結構当たったと思うんですけどね」
俺の言葉に、課長の目がキラリと光った。
「それ主人公は男か?」
「そうですけど......」
「ヒロインは?」
俺は首を傾げた。
「そう言えば、ヒロイン......いなかったかもしれないですね。女の子のビジュアル、無かったから」
「そんなこと無いだろ。男が昇りつめるならヒロインは言わば勲章だ。いなかったらクソつまんねぇぞ」
俺の言葉に課長が吐き捨てるように言ったのを、宮下さんが眉をしかめた。
「そんなハーレム希望な人ばかりじゃないでしょ。中には課長みたいに美人なお兄さん好きな人もいるでしょ」
俺ははっと気づいた。
「それだ!」
二宮が課長と同じ指向だったら、ヒロインが女性とは限らない。だから企画にも出さなかった。自分がゲイだと知られたくなかったから。
「それって?」
「二宮のゲーム......自分と同じ傾向、課長タイプの人向けだったら、ヒロインも男性になりますよね」
課長が目を見開き、唸った。
「二宮が密かに自分の作ったゲームのプログラムをそっくりそのまま入れ込んだって訳か?」
「そのゲーム自体は伏線的に見えなくて、ウィスタリア・ルートでダンジョンが開いて魔王退治が成功したら、浮かび上がっくる......か」
宮下さんも唸った。
「つまり、二巡目は別なゲームになりますよね。やり込もうにも出来ない。二宮はあの先生が大嫌いだったから.....」
「手の込んだ嫌がらせだな」
課長が唇を歪めて苦笑した。
「じゃあ、そのリミックスしたゲームの中に私達はいるわけよね。ならばなおさら、二宮君を探し出さないと.......」
俺は大きく頷いた。
たぶん、二巡目のゲームの主人公は、マグリットだ。そしてたぶん、ヒロイン・ポジは俺だ。認めたくないけど。
マグリットとしちゃったし......。
「でも、何処にいるんだ?」
課長が頭を掻く。
「わかりませんけど......」
俺はひとつだけ確信していた。
「主人公ではないですね」
転生者は主役にはなれない。
それがこの世界の法則。
そして、その時、小さな足音が扉の前から去っていったのを、俺は聞き逃さなかった。
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