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アントーレの決意と新たな道行き
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俺達は一斉にエメルさんを見た。
エメルさんは、被っていたマントを脱ぐと、右手の甲をみんなに見えるようにかざした。そこには双頭の鷲がくっきりと浮かび上がっていた。
「我れは、コンスタンツィア帝国皇嗣、エメラルダス・ディ・コンスタンツェ。......まぁ、ここにいるアントーレとは旧知の仲だが」
俺も知ってます。中身は泣く子も逃げ出す仕事の鬼、宮下主任。
はい、わかってます。小芝居ですね。俺とレイトン先生は他のみんなと同じように驚いたふりをした。
エメルさん、いやエメラルダス皇太子は続けた。
「知ってのとおり、我が国は先の戦乱で多くの人材を失った。見事に魔王討伐を成し遂げたそなた達のような優秀な人材であれば、喜んで受け入れる」
そしてエメルさんは、アントーレを振り向いて、言った。
「お前も来い、アントーレ。今のお前なら相応の地位を与えてやる。なんなら宰相の地位を与えてやっても良い。最初は見習いだがな」
エメルさん、止めたほうがいいですよ。国、傾きますよ。ポンコツですから、こいつ。
だが、アントーレは小さく首を振った。
「私は行かない」
そして顔を上げてみんなにはっきりと言い切った。
「私は兄上を信じている。何か誤解があるなら、それをきちんと解きたい」
「アントーレ......」
「私は兄上が好きだ。誤解されたまま袂を分かつなど、できない」
これまで見たことの無いほど悲壮な決意だった。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「お前の気持ちはわかる。だがな、なんの切り札も持たずに乗り込んでも相手を納得させることはできない」
「でも......」
「あくまでも対峙すると言うなら、それなりの情報を集めねばなるまい」
エメルさんの言葉はもっともだった。
「しかし、どうやって......」
と、その時、入り口のほうから声がした。
「それはお任せください」
「クリス?」
それは魔物に襲われて臥せっていたはずのクリスだった。
「クリス、身体はもういいのか?」
クリスはアントーレの言葉ににっこり微笑んだ。
「大丈夫ですよ。私に考えがございます」
彼は今まで俺達の見慣れたクリスとは全く違う表情で、アントーレの足元に跪き、ピンクゴールドの頭を深く下げた。
「ダンジョンでは不覚を取りまして申し訳ございませんでした。陛下より護衛を言いつかりながら、面目次第もございません」
なんと、クリスはネヴィル伯爵に命じられて、アントーレ王子の護衛のために学園に入学したのだという。
「まずはそうそうにこちらをお発ちください。街に刺客が入り込んでおります」
アントーレが深く頷いた。
そして翌朝早く、俺達はラムダの町を出た。
見送りのサマリアが何度も行き先を尋ねてきたが、クリスは一切教えようとしなかった。
「簡単に人を信じてはいけません」
ラムダの町を出たところで、クリスが俺達にこっそり耳打ちした。
「彼らは商人です」
「どういう意味だ?」
怪訝そうに眉をひそめるアントーレにクリスは溜め息混じりに言った。
「彼らのスタンスを決めるのはお金だということです」
そしてクリスは初めて、自分が帝国の暗部に仕える者達の一員であることを明かした。
「私の母はその束ねです。父は知りませんが.......」
クリスは皇帝陛下の命令でアントーレの素行を見張るために学園に入学してきた、らしい。
なるほど攻略の気配なんか全く無かったわけだ。
「じゃあ、卒業祝賀パーティーのあれは.....?」
きつい冗談だとボヤくアントーレにクリスはにっこり笑って言った。
「冗談なんかじゃないですよ。早く良いパートナーを見つけるのも、頭を継ぐには大事なことですからね」
クリスは暗器であっさりと追っ手を仕留めて、俺にウィンクを飛ばした。
..............勘弁してくれ。
エメルさんは、被っていたマントを脱ぐと、右手の甲をみんなに見えるようにかざした。そこには双頭の鷲がくっきりと浮かび上がっていた。
「我れは、コンスタンツィア帝国皇嗣、エメラルダス・ディ・コンスタンツェ。......まぁ、ここにいるアントーレとは旧知の仲だが」
俺も知ってます。中身は泣く子も逃げ出す仕事の鬼、宮下主任。
はい、わかってます。小芝居ですね。俺とレイトン先生は他のみんなと同じように驚いたふりをした。
エメルさん、いやエメラルダス皇太子は続けた。
「知ってのとおり、我が国は先の戦乱で多くの人材を失った。見事に魔王討伐を成し遂げたそなた達のような優秀な人材であれば、喜んで受け入れる」
そしてエメルさんは、アントーレを振り向いて、言った。
「お前も来い、アントーレ。今のお前なら相応の地位を与えてやる。なんなら宰相の地位を与えてやっても良い。最初は見習いだがな」
エメルさん、止めたほうがいいですよ。国、傾きますよ。ポンコツですから、こいつ。
だが、アントーレは小さく首を振った。
「私は行かない」
そして顔を上げてみんなにはっきりと言い切った。
「私は兄上を信じている。何か誤解があるなら、それをきちんと解きたい」
「アントーレ......」
「私は兄上が好きだ。誤解されたまま袂を分かつなど、できない」
これまで見たことの無いほど悲壮な決意だった。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「お前の気持ちはわかる。だがな、なんの切り札も持たずに乗り込んでも相手を納得させることはできない」
「でも......」
「あくまでも対峙すると言うなら、それなりの情報を集めねばなるまい」
エメルさんの言葉はもっともだった。
「しかし、どうやって......」
と、その時、入り口のほうから声がした。
「それはお任せください」
「クリス?」
それは魔物に襲われて臥せっていたはずのクリスだった。
「クリス、身体はもういいのか?」
クリスはアントーレの言葉ににっこり微笑んだ。
「大丈夫ですよ。私に考えがございます」
彼は今まで俺達の見慣れたクリスとは全く違う表情で、アントーレの足元に跪き、ピンクゴールドの頭を深く下げた。
「ダンジョンでは不覚を取りまして申し訳ございませんでした。陛下より護衛を言いつかりながら、面目次第もございません」
なんと、クリスはネヴィル伯爵に命じられて、アントーレ王子の護衛のために学園に入学したのだという。
「まずはそうそうにこちらをお発ちください。街に刺客が入り込んでおります」
アントーレが深く頷いた。
そして翌朝早く、俺達はラムダの町を出た。
見送りのサマリアが何度も行き先を尋ねてきたが、クリスは一切教えようとしなかった。
「簡単に人を信じてはいけません」
ラムダの町を出たところで、クリスが俺達にこっそり耳打ちした。
「彼らは商人です」
「どういう意味だ?」
怪訝そうに眉をひそめるアントーレにクリスは溜め息混じりに言った。
「彼らのスタンスを決めるのはお金だということです」
そしてクリスは初めて、自分が帝国の暗部に仕える者達の一員であることを明かした。
「私の母はその束ねです。父は知りませんが.......」
クリスは皇帝陛下の命令でアントーレの素行を見張るために学園に入学してきた、らしい。
なるほど攻略の気配なんか全く無かったわけだ。
「じゃあ、卒業祝賀パーティーのあれは.....?」
きつい冗談だとボヤくアントーレにクリスはにっこり笑って言った。
「冗談なんかじゃないですよ。早く良いパートナーを見つけるのも、頭を継ぐには大事なことですからね」
クリスは暗器であっさりと追っ手を仕留めて、俺にウィンクを飛ばした。
..............勘弁してくれ。
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