当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき

文字の大きさ
7 / 9
本編 (紘目線)

どうしようもない後悔

しおりを挟む

それから三倉とは話さなくなった。
たまに困ったように眉を下げてこちらを見てくるのが憎たらしくてこちらからは声をかけない。あいつから声をかけてくればと思っていたら2ヶ月経とうとしていた。
俺に告白しなくなった三倉はモテた。
クラスの奴も一年の頃から俺にずっと告白し続けていたことを知ってる奴も三倉を好きだと言う。
三倉はまだ首を縦にはふっていないみたいだが、それがなおさらムカついた。
どうして俺への告白を止めたんだ。
そう一言聞けばいいのに、話しかける気が起きない。
告白に頷かないのは俺のことをまだ好きだからなんだろ。
そう聞きたいのに、三倉の前じゃ口が開かない。
意地になっているのは分かっていた。高校生らしくもないが、俺はプライドばかりが高くて。だから俺は最悪手を取った。

三倉は泣いていた。
好きな女からの貰い物だと思ったチョコは俺へのバレンタインチョコだったらしい。
破かれた手紙は俺へのラブレター。
三倉からの告白を、俺は見事にぐちゃぐちゃにしてゴミ箱に捨てさせた。
走り去ったあいつはごめんと俺に謝った。
最悪だ。
もうクラスメートにどう思われるかなんて考えなかった。
ゴミ箱を漁って真っ二つに破いた手紙を握りしめて走る。三倉は俺よりも足が早くて追い付けない。
俺が謝るべきなのに。
プライドとか意地とかそんな小さな物を守るために三倉は傷付いた。いや、今だけじゃない。
ずっと俺は三倉を傷つけていたのに、俺は認められなかった。
随分前から三倉が好きだ。
男同士とか相手が俺より格好いいとか思うところはあったけど、そんなの通り越してもう夢中だ。
告白される度に嬉しくなるし、クリスマスだって一緒に祝いたいし、誕生日はメッセージが来ないかと夜更かしした。
告白だって優越感に浸れるからとかじゃなくて、純粋に好意を喜んでいた。
卒業までは、この関係も悪くないって思ったんだ。
卒業式の前に俺から告白して、大学生になったらバイト先に送り迎えとかして、記念日はお揃い買ったりして。
俺からのプレゼントに喜んだり照れたり驚いたりしているところを見ていくつもりだった。
全部あいつが俺のことをずっと好きでいてくれることが前提なことに気が付きもしないで。
告白はもうしないって言われて拗ねて、三倉のこと傷つけたこと見て見ぬふりして怒ってまた傷つけて。
誰がこんな奴、好きになるんだよ。
結局追い付けなくて、それから三倉は1週間、高校を休んだ。
あれだけ酷いことをしたのに、手紙は5通もあった。諦めきれなくてごめんなさいと始まる手紙には俺の好きなところとか俺にされて嬉しかったこと、最後にもう告白はしないけど思い続けることだけは許してくださいと書かれていた。
謝らなきゃいけないのはこっちだ。
謝るし心を入れ換えるし俺から気持ちを伝えるから、許して欲しい。
話がしたい。
相変わらず、メッセージに既読はつかない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

処理中です...