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覆面BLSS企画
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及川奈津生様と万年青二三歳様が主催した「覆面BLSS企画」参加作品です。
主催のお二人に作品を提出し、作者名を出さずに他の作家様の作品と一緒にポストしてもらう。
その作品を誰が書いたのかを当てる素敵企画でした。
【契約のキスは鉄の味】
使い慣れない万年筆を手に署名し、その隣に捺印する。
契約書と題されたその紙には甲がどうだの乙がどうだのと難しいことが書かれているが、要は俺がこの目の前のクソ野郎にすべてを明け渡し、その見返りとして金を貰うということが書かれている。
これから俺はこのクソ野郎に食事も睡眠も性欲も、何もかも管理されながら生きていくのだ。
「これでお前は俺のモノだ」
契約書を長く節くれた指で摘み上げたクソ野郎は不敵に笑った。
「体だけな」
契約上は対等な関係だ。
体は支配されても、心まで奪われて堪るもんか。
勘違いしているクソ野郎を嘲笑うと、それが気に食わなかったのか契約書を乱暴にテーブルに叩きつけた。
そして、テーブル越しに俺の胸倉を掴んで引き寄せて額と額を突き合わせた。
「調子に乗るなよ、ガキ」
「お前こそ、何でも思い通りになると思ったら大間違いだからな」
いくら凄んでもスラム生まれの俺には通用しない。
チッと舌打ちをしたクソ野郎は、早速俺をねじ伏せるためにキスをした。
歯と歯が当たり、奴の鋭い八重歯で切れた唇から真紅が流れて鉄の味がした。
俺たちらしい契約のキスだった。
【マイルストーンを刻む】
あれは蒸し暑い夏の日だった。
孝宏はバイト先から帰宅するため電車に揺られていた。
夏祭りから帰る人がいて、いつもよりも人口密度が高い。
『急停車します』
アナウンスが流れた直後、強めの急ブレーキがかかって電車が急停車し、おまけに照明も冷房も切れてしまった。
『ただいま、みとみ駅にて架線にて架線の異常がありました。安全確認ができ次第の運行となります。お急ぎのところ大変申し訳ありません』
車掌の焦ったようなアナウンスが流れると乗客からは悲鳴と怒号が上がった。
そんな中右肩をそっと叩かれた。
そこにいたのはイヤホンを左手で持った同年代と思われる男だった。
「すみません。最初の方聞き取れなくて。何て言ってました?」
「架線に異常があったたらしいっすよ」
「ありがとうございます。困りましたね」
「冷房が切れたら、ここすぐに蒸し風呂っすよ。俺はミニ扇風機あるからいいっすけどない人はなぁ」
「俺、いらないプリントがあります。団扇になるかも」
「配る?」
「ですね」
車内販売のように声を上げながら彼の鞄から出てきたプリントを配る。
ミニ扇風機を知らない高齢者には特に好評だった。
これが孝宏と翔の、最初のマイルストーンだった。
「おい、緊張しすぎてないか?」
からかうような声に目を開ける。そこには孝宏と揃いの紋付袴を着た愛する伴侶の姿があった。
「してねえよ。翔と出会った時のこと思い出してた」
「懐かしいな、電車に閉じ込められたの」
「二度とごめんだな」
「それな」
軽口を交わす程度には余裕がある。歯を見せて笑い合っているとスタッフから声が掛かる。
「準備はよろしいですか?」
「はい」
揃って返事をすると荘厳な扉に向き合った。
この先には大切な人たちが待っている。
二人にとって人生最高のマイルストーンとなる今日は、出会った日と同じ快晴だった。
【夏の夜空に】
満天の
輝く星見て
懐かしむ
二人きりで
誓った未来を
主催のお二人に作品を提出し、作者名を出さずに他の作家様の作品と一緒にポストしてもらう。
その作品を誰が書いたのかを当てる素敵企画でした。
【契約のキスは鉄の味】
使い慣れない万年筆を手に署名し、その隣に捺印する。
契約書と題されたその紙には甲がどうだの乙がどうだのと難しいことが書かれているが、要は俺がこの目の前のクソ野郎にすべてを明け渡し、その見返りとして金を貰うということが書かれている。
これから俺はこのクソ野郎に食事も睡眠も性欲も、何もかも管理されながら生きていくのだ。
「これでお前は俺のモノだ」
契約書を長く節くれた指で摘み上げたクソ野郎は不敵に笑った。
「体だけな」
契約上は対等な関係だ。
体は支配されても、心まで奪われて堪るもんか。
勘違いしているクソ野郎を嘲笑うと、それが気に食わなかったのか契約書を乱暴にテーブルに叩きつけた。
そして、テーブル越しに俺の胸倉を掴んで引き寄せて額と額を突き合わせた。
「調子に乗るなよ、ガキ」
「お前こそ、何でも思い通りになると思ったら大間違いだからな」
いくら凄んでもスラム生まれの俺には通用しない。
チッと舌打ちをしたクソ野郎は、早速俺をねじ伏せるためにキスをした。
歯と歯が当たり、奴の鋭い八重歯で切れた唇から真紅が流れて鉄の味がした。
俺たちらしい契約のキスだった。
【マイルストーンを刻む】
あれは蒸し暑い夏の日だった。
孝宏はバイト先から帰宅するため電車に揺られていた。
夏祭りから帰る人がいて、いつもよりも人口密度が高い。
『急停車します』
アナウンスが流れた直後、強めの急ブレーキがかかって電車が急停車し、おまけに照明も冷房も切れてしまった。
『ただいま、みとみ駅にて架線にて架線の異常がありました。安全確認ができ次第の運行となります。お急ぎのところ大変申し訳ありません』
車掌の焦ったようなアナウンスが流れると乗客からは悲鳴と怒号が上がった。
そんな中右肩をそっと叩かれた。
そこにいたのはイヤホンを左手で持った同年代と思われる男だった。
「すみません。最初の方聞き取れなくて。何て言ってました?」
「架線に異常があったたらしいっすよ」
「ありがとうございます。困りましたね」
「冷房が切れたら、ここすぐに蒸し風呂っすよ。俺はミニ扇風機あるからいいっすけどない人はなぁ」
「俺、いらないプリントがあります。団扇になるかも」
「配る?」
「ですね」
車内販売のように声を上げながら彼の鞄から出てきたプリントを配る。
ミニ扇風機を知らない高齢者には特に好評だった。
これが孝宏と翔の、最初のマイルストーンだった。
「おい、緊張しすぎてないか?」
からかうような声に目を開ける。そこには孝宏と揃いの紋付袴を着た愛する伴侶の姿があった。
「してねえよ。翔と出会った時のこと思い出してた」
「懐かしいな、電車に閉じ込められたの」
「二度とごめんだな」
「それな」
軽口を交わす程度には余裕がある。歯を見せて笑い合っているとスタッフから声が掛かる。
「準備はよろしいですか?」
「はい」
揃って返事をすると荘厳な扉に向き合った。
この先には大切な人たちが待っている。
二人にとって人生最高のマイルストーンとなる今日は、出会った日と同じ快晴だった。
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