やおよろず生活安全所

森夜 渉

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四章

オマケ話 狐乃のオフ日編  (修正予定 未定)

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狐乃の店の一つ、Club Bluefire。
今日は夜間の外勤、バグの補佐担当ではなかった為、深夜にそこで経営会議の予定が入っていた。
最近は不景気も募り、常連の足が遠のいたり客層が大幅に変わったりと何かと対応を迫られる事が多い。
運に頼らず、時には己の術を駆使して客に無理なく通ってもらうなど、やおよろず生活安全所以外の裏の業務にも追われていた。
そんな訳で会議後、息抜きにプライベートの予定を洲汪(すおう)と決めたりしている。
最近では向かう先がほぼ動物園だった。
動物園が好きという訳ではない。
彼らからしたら本来野生の動物を檻に入れてしまう事は、自然の摂理に反する。
だが、その動物達を保護し、中でも数少ない種族を絶滅させず、存在を維持、繁殖させる事は現代における重要な課題でもある。
一部の動物園ではその活動にも取り組んでいる。
きれいごとだけで仲間達は護れない事は理解していた。
また、それら動物に愛情を注ぎ、責任を持って世話や飼育をしている人間は嫌いではない。
そういう事もあり、休日にお忍びで各地の動物園などを訪問し、動物達の生活ぶりなどを観察していたりしていた。
彼ら眷属は動物と話せる。
「ここでの生活はどうだ?」
地方の動物園を訪ねたある時、ペンギンの群れに聞いてみた。
「オ腹イッパイ魚ガ食ベレル!」
「人間ガ沢山!」
「散歩スル!」
など、豊富な意見が聞けたりする。
中には。
「バンバン叩ク!」
という訴えがあったので、恐らくペンギンの水槽を叩く人間がいるのだろうと想像がついた。
動物が人間の言葉を話せないからと言って、何も感じていない訳ではない。
痛みもあれば苦痛も感じる。
そういう事を代弁してやれない自分に、歯がゆさを感じる事も度々あった。
また、種族の少ない新人がどこかに現れたと聞くと、うまくやっているか心配にもなる。
そういう時は洲汪に情報を取らせて、その動物園に様子を見に足を運ぶのだ。
「それで今日はどんなニューフェイスだ?」
事務所で書類にサインをしながら狐乃は洲汪(すおう)に聞いた。
「今回はこちらに」
す、と一枚のカラー写真をテーブルに差し出す。
出された写真を手に取ると、若干モフ度高めで灰色の毛に覆われた野性味あふれるネコ科の動物が写っていた。
「こいつは?」
「マヌルネコと言います」
「マむむネコ?」
「マヌルネコです」
「マむるネコ?」
「マヌルネコです、海外の希少動物で個体数が減っており、国内でも注目を浴びています」
「外国からのお客さんか」
「はい」
本来狐乃は国内の動物を優先に注目をする。
ヤンバルクイナとか。
イリオモテヤマネコとか。
だが、国外の種の危機に瀕している動物の渡来は世間での危機の認知を広める為の、彼らは広報係りであると狐乃は考えていた。
立派な仕事であると。
写真の中のマにル。
マむ。
マヌルネコは獲物を捕らえるような、眉間にシワを寄せて上目遣いで舌なめずりをしている表情をしていた。
「なかなかワイルドな男前じゃねえか」
「メスです」
「なっ、女の子っ!」
犬でも猫でもよく見ればオスはオスらしい、メスはメスらしい顔つきをしている者がちゃんといたりする。
だが、マぬ、マヌルネコはどちらかというと女の子でも男前な顔つきをしているように狐乃の目には写った。
「女の子か……」
若干ずんぐりしているように見えるが、夏毛になったら着やせするタイプかもしれん。
それでなくとも、ふくよかな子も包容力があって好きだったりする。
「いいだろう、次に休みが取れたら会いに行くとするか……」
「では、予定を開けて車の手配をしておきます」
多忙な身だがやむを得ん。
女の子なら猶更、困っている事はないかが気になる。
そのうち会いに行くよ。
「待っててくれ、マむるネコちゃん」
「マヌルネコです」


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