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五章
44/ただいま
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命は朝から校庭の入り口で落ち着きなく歩き回っていた。
犬威が都内に戻り、任務終了の報告をメールで受けたからだ。
現地で見つけた行方不明者の遺骨を提出する為に犬威だけは顔は出したが、蓮美は職員の配慮で直帰となる。
彼女の不在は二日となったが、外勤が無事に済んで良かったと誰もが胸をなでおろした。
マガツカミとの戦いは長期に及ぶ事もある、安全を考え早く戻るに越した事はないからだ。
無論。
お供物も食べれない日が短ければ短い程、いい訳で。
「健気(けなげ)ねぇ」
蓮美を待っているであろう命を眺めながら、職員室にいる和兎はクスリと笑う。
彼女は朝一番で出勤した。
和兎だけではない。
犬威以外の職員は早くから所に出てきていた。
悟狸も猿真も無事で何よりと話し、狐乃は顔周りの毛を入念にセットしていた。
「珍しいわね、目立ちたがりの狐乃君が一番に出迎えをしないなんて」
「俺は子供っぽい命とは違います、スマートに登場するのが大人なんで」
彼は自信満々にドヤ顔をして答える。
「おや、来たかな?」
悟狸が窓から顔を出すと命が通りで彼女が来る方角を見ていた。
「蓮美さん……」
蓮美はリクルート鞄に紙袋、天羽々矢(あめのはばや)の入ったアタッシュケースを抱えてやってくる。
荷物だらけで右に左にヨロヨロしながら。
棒立ちしている命に気づき、近くまで来て苦笑いを浮かべた。
「……おはよう」
「お帰りなさい……」
この時、気がつけるか、気が付かない程度だが。
うっすらと。
蓮美に向けて彼は初めて微笑んだ。
そろそろ夏も近づこうとする、爽やかな空の下で。
だが、水を差すかの如く、その爽やかさをぶち破る者が突如そこに現れる。
「蓮美ちゃあぁあああんっ!」
狐乃だ。
セットした体毛を振り乱し、砂ぼこりを巻き上げながらこちらへ爆走してきた。
「どこがスマートだ」
飛び出していった彼を見て和兎は呆れる。
「狐乃さ……」
「会いたかったあぁあああっ!」
蓮美は荷物を置いて迫りくる狐乃に身構えた。
まずい。
両手を広げ、ガッツリハグする体制にきている。
どさくさに紛れて尻を揉むというあの技だ。
「あれはっ!」
彼が繰る怪しい術だろうか。
背中にバラの花園を背負っていた。
「くっ!」
出勤早々セクハラの襲撃を受けるとは思ってもみなかったが、ひるんでいる場合ではない。
迫りくるケツ肉揉み男(ケツニクモミオ)から守るべく、己のケツをガードする。
「愛してr!」
ケツ筋揉み男(ケツキンモミオ)のハグ攻撃をかわし、両の腕を上から下へとすり抜けた。
「あぁあああっ!」
狐乃は空(くう)を抱きしめ、後ろにいた命に頭から突っ込んでいく。
「ぐふぅっ!」
「ぎゃふんっ!」
命は悲鳴を上げて互いが地面に吹っ飛んだ。
「うむ、ジムでのトレーニングが生かされているわ」
和兎。
もとい。
蓮美の専属トレーナーは満足そうに頷いた。
「お前達、何をやっているんだ?」
出勤してきた犬威がのびている二人に気がついて声を掛ける。
やおよろず生活安全所は今日も変わりない。
蓮美は荷物を抱えなおすと、年季の入った木造校舎を眩しそうに見上げた。
「ただいま」
私の今の。
帰るべき場所。
犬威が都内に戻り、任務終了の報告をメールで受けたからだ。
現地で見つけた行方不明者の遺骨を提出する為に犬威だけは顔は出したが、蓮美は職員の配慮で直帰となる。
彼女の不在は二日となったが、外勤が無事に済んで良かったと誰もが胸をなでおろした。
マガツカミとの戦いは長期に及ぶ事もある、安全を考え早く戻るに越した事はないからだ。
無論。
お供物も食べれない日が短ければ短い程、いい訳で。
「健気(けなげ)ねぇ」
蓮美を待っているであろう命を眺めながら、職員室にいる和兎はクスリと笑う。
彼女は朝一番で出勤した。
和兎だけではない。
犬威以外の職員は早くから所に出てきていた。
悟狸も猿真も無事で何よりと話し、狐乃は顔周りの毛を入念にセットしていた。
「珍しいわね、目立ちたがりの狐乃君が一番に出迎えをしないなんて」
「俺は子供っぽい命とは違います、スマートに登場するのが大人なんで」
彼は自信満々にドヤ顔をして答える。
「おや、来たかな?」
悟狸が窓から顔を出すと命が通りで彼女が来る方角を見ていた。
「蓮美さん……」
蓮美はリクルート鞄に紙袋、天羽々矢(あめのはばや)の入ったアタッシュケースを抱えてやってくる。
荷物だらけで右に左にヨロヨロしながら。
棒立ちしている命に気づき、近くまで来て苦笑いを浮かべた。
「……おはよう」
「お帰りなさい……」
この時、気がつけるか、気が付かない程度だが。
うっすらと。
蓮美に向けて彼は初めて微笑んだ。
そろそろ夏も近づこうとする、爽やかな空の下で。
だが、水を差すかの如く、その爽やかさをぶち破る者が突如そこに現れる。
「蓮美ちゃあぁあああんっ!」
狐乃だ。
セットした体毛を振り乱し、砂ぼこりを巻き上げながらこちらへ爆走してきた。
「どこがスマートだ」
飛び出していった彼を見て和兎は呆れる。
「狐乃さ……」
「会いたかったあぁあああっ!」
蓮美は荷物を置いて迫りくる狐乃に身構えた。
まずい。
両手を広げ、ガッツリハグする体制にきている。
どさくさに紛れて尻を揉むというあの技だ。
「あれはっ!」
彼が繰る怪しい術だろうか。
背中にバラの花園を背負っていた。
「くっ!」
出勤早々セクハラの襲撃を受けるとは思ってもみなかったが、ひるんでいる場合ではない。
迫りくるケツ肉揉み男(ケツニクモミオ)から守るべく、己のケツをガードする。
「愛してr!」
ケツ筋揉み男(ケツキンモミオ)のハグ攻撃をかわし、両の腕を上から下へとすり抜けた。
「あぁあああっ!」
狐乃は空(くう)を抱きしめ、後ろにいた命に頭から突っ込んでいく。
「ぐふぅっ!」
「ぎゃふんっ!」
命は悲鳴を上げて互いが地面に吹っ飛んだ。
「うむ、ジムでのトレーニングが生かされているわ」
和兎。
もとい。
蓮美の専属トレーナーは満足そうに頷いた。
「お前達、何をやっているんだ?」
出勤してきた犬威がのびている二人に気がついて声を掛ける。
やおよろず生活安全所は今日も変わりない。
蓮美は荷物を抱えなおすと、年季の入った木造校舎を眩しそうに見上げた。
「ただいま」
私の今の。
帰るべき場所。
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