貴方に相応しいのはこのわたくし

双葉愛

文字の大きさ
2 / 15

その王子、目論む

しおりを挟む


わたくしは今、王城に来ている。いつも唐突にやってくる王子からのお呼び出しで何があったのかと急いでやってきたのだが……



ご機嫌麗しく…とわたくしが礼をとって頭を上げたら、この男は自室のソファーで品もなくふんぞり返っていた。わたくしの後ろに控えるメイドや女官と共に唖然として頬を引き攣らせると、男は悪戯げに笑って居住まいを正す。どうやら冗談であったようだ。冗談でなければこの男のお兄様である殿下に泣く泣くお話をする羽目になっていたわね。




そんな王子にとってお茶目なやり取りはあったものの、テーブルを挟んでソファーに座って向かい合った王子は一つの封筒をわたくしに差し出した。



中を開けると一枚の招待状が入っていた。





「……夜会?」



「あぁそうだ」




王子が頷いたことで揺れた金糸が光に輝き、その様子に目を細める。今日も相変わらず容姿だけは整っていらっしゃる。




「……ご用件はこれだけですの?」




もう一度王子が頷いて揺れた金糸を、今度は別の意味で目を細めて見た。わたくし先程まで友人と共に楽しく刺繍をしていたので、その髪を引き抜いて………いや、何でもありませんわ。




いつもこの王子に時間を取られ友人を家に呼ぶことが出来ないでいる。実はこの王子、国民や貴族から評判はかなりいい。何て言ったって夜会や人の前では夢見る発言はなさらないからだ。この男の駄目さ加減を知るのは王族の方とわたくしと、この男の友人と家庭教師と使えて長い女官のみ。もちろん家庭教師や女官には厳重な口止めがなされている。




その容姿と、絶え間ないわたくしの叱責の効果で得られた付け焼き刃の知識が簡単にこの男を理想の王子として世間を沸かせた。




なのでわたくしのお友達から見ればこの男はすごい男なのだ。それがノコノコとわたくしの家に逃げてくる馬鹿男なのだと知れば、失神してしまうだろう。




昨日王子が家に来た為、久し振りにお友達と楽しい時間を過ごせると思ったのに……



この有り様である。ちなみにお友達は王子からの呼び出しと聞いて涙を流す勢いで興奮してわたくしを送り出した。





その結果がこの夜会の案内一枚。いつもみたいに家に届けさせればいいものを…!




「……殿下のお誕生日のパーティーですもの。もちろん参加は致しますわ」




「それは当たり前だな。そこで一つ君に提案がある」



「……何でしょう」



「その日から暫くはパレードがある。俺と一緒にその様子を見に行こう?」



「……」




やはり貴方は馬鹿だ、と思わずにはいられなかった。



確かに来月殿下の誕生日から数日は毎年盛大なパレードが行われている。もちろんこの男の誕生日にも行われる。この国の王室の人気は凄まじいものだから、それはもう盛大なもの。市井には沢山の屋台が並び、王城には遠い領地で過ごす貴族も祝いに来る程だ。



退屈なものが嫌いで楽しい物が好き!な単純脳にはまさに心躍る行事だとは分かるけれど…。




王子は見る側ではない。馬車に乗って騎士に囲まれて見られる側だ。




却下ですね、とニッコリと微笑んだ。






「ちなみに父上からの許可は取ってある」


「えっ?」






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...