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その王子、目論む
しおりを挟むわたくしは今、王城に来ている。いつも唐突にやってくる王子からのお呼び出しで何があったのかと急いでやってきたのだが……
ご機嫌麗しく…とわたくしが礼をとって頭を上げたら、この男は自室のソファーで品もなくふんぞり返っていた。わたくしの後ろに控えるメイドや女官と共に唖然として頬を引き攣らせると、男は悪戯げに笑って居住まいを正す。どうやら冗談であったようだ。冗談でなければこの男のお兄様である殿下に泣く泣くお話をする羽目になっていたわね。
そんな王子にとってお茶目なやり取りはあったものの、テーブルを挟んでソファーに座って向かい合った王子は一つの封筒をわたくしに差し出した。
中を開けると一枚の招待状が入っていた。
「……夜会?」
「あぁそうだ」
王子が頷いたことで揺れた金糸が光に輝き、その様子に目を細める。今日も相変わらず容姿だけは整っていらっしゃる。
「……ご用件はこれだけですの?」
もう一度王子が頷いて揺れた金糸を、今度は別の意味で目を細めて見た。わたくし先程まで友人と共に楽しく刺繍をしていたので、その髪を引き抜いて………いや、何でもありませんわ。
いつもこの王子に時間を取られ友人を家に呼ぶことが出来ないでいる。実はこの王子、国民や貴族から評判はかなりいい。何て言ったって夜会や人の前では夢見る発言はなさらないからだ。この男の駄目さ加減を知るのは王族の方とわたくしと、この男の友人と家庭教師と使えて長い女官のみ。もちろん家庭教師や女官には厳重な口止めがなされている。
その容姿と、絶え間ないわたくしの叱責の効果で得られた付け焼き刃の知識が簡単にこの男を理想の王子として世間を沸かせた。
なのでわたくしのお友達から見ればこの男はすごい男なのだ。それがノコノコとわたくしの家に逃げてくる馬鹿男なのだと知れば、失神してしまうだろう。
昨日王子が家に来た為、久し振りにお友達と楽しい時間を過ごせると思ったのに……
この有り様である。ちなみにお友達は王子からの呼び出しと聞いて涙を流す勢いで興奮してわたくしを送り出した。
その結果がこの夜会の案内一枚。いつもみたいに家に届けさせればいいものを…!
「……殿下のお誕生日のパーティーですもの。もちろん参加は致しますわ」
「それは当たり前だな。そこで一つ君に提案がある」
「……何でしょう」
「その日から暫くはパレードがある。俺と一緒にその様子を見に行こう?」
「……」
やはり貴方は馬鹿だ、と思わずにはいられなかった。
確かに来月殿下の誕生日から数日は毎年盛大なパレードが行われている。もちろんこの男の誕生日にも行われる。この国の王室の人気は凄まじいものだから、それはもう盛大なもの。市井には沢山の屋台が並び、王城には遠い領地で過ごす貴族も祝いに来る程だ。
退屈なものが嫌いで楽しい物が好き!な単純脳にはまさに心躍る行事だとは分かるけれど…。
王子は見る側ではない。馬車に乗って騎士に囲まれて見られる側だ。
却下ですね、とニッコリと微笑んだ。
「ちなみに父上からの許可は取ってある」
「えっ?」
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