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その侯爵令嬢、押しに弱い
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王子の自室に戻ってソファーに向かい合って座ると、王子は疲れたと言わんばかりに髪を掻き上げてわたくしを見た。その怠慢な動作に思わず心臓が跳ねる。
「で?俺はどうだった?」
「……負けましたわね」
「当たり前だ。勝てるわけないだろう」
自信満々に言うことではないのに、満足気にそうのたまう男に息を吐いた。そうではなく感想だ、と男が言ったのでわたくしは渋々ながらも口を開いた。
「……でも怪我がなくて何よりですわ。それにわたくし、初めて剣を振るう試合を見ましたがあんなに迫力がありますのね」
わたくしの言葉に、男は少し面を食らったような顔をする。
「……俺に惚れた?」
「サボリ続けた結果を見せられてどこに惚れろと言うのです」
「やはり君は手厳しいなぁ」
意地悪く笑う男にもう少しだけ真面目になったら良いのに…と思わずにはいられない。やけに輝いて見える蒼い瞳に男の能力が見た目に追いつくことを祈った。
「何度も言いますがきちんと訓練やレッスンは受けてください。ボンクラ王子など税の無駄遣いです!時代が時代でしたら、当の昔に愚かな貴族に利用されてポイされてますわ」
「……君に捨てられないかだけ心配する時代でよかった」
何と情けない…っ!
自分を省みるどころか飄々としている男にがっくりと肩を落とし、まぁ今日は鬱になっていないだけマシだと気を取り直した。
「……わたくし無能な婚約者はいりませんわ。さっさと…いえ一刻も早く有能な中身になって下さいませ」
「あぁ分かっているさ」
そのセリフを一体何度聞いて何度期待したことか。口先だけは立派な男なんて一度痛い目を見るべきよ。
「……殿下のお誕生日まであと三週間程です。その間どうぞ真面目に過ごして…」
「そうだ、君のドレスは俺が贈ろう」
「……え?」
念には念をと男に小言を畳み掛けようとした時、男の突拍子もない言葉にわたくしは目を見開いた。今なんておっしゃいました?
「君は何でも似合うからなぁ」
面を食らっているわたくしをクスクスと笑う王子はその視線でわたくしをじっくりと見て、一人頷いた。
いやお待ちください。切実に待って欲しい。
「宝石も靴も全て俺が取り揃えよう」
無能な人間は女にドレスを贈る前にやるべきことが沢山あるのではなくて!?
「……アンリ様、それは」
「あぁ任せておけ。全て王室直属の者に作らせる」
「……あのそうではなくて」
「異論は認めんぞ、シェリー」
ぐっ、とわたくしは王子の言葉に押し黙った。無駄にキラキラと笑顔を輝かせて美貌で押し通そうとするのはやめて頂きたい。
「……わたくしには身に余りますわ」
「何を言う。君は綺麗だ。俺に飾られた華はさぞや美しく咲くだろう」
足を組み換え、そう艷やかに言った王子にわたくしの頬は赤く染まった。思わず片手を頬に添え王子から視線を逸らしてしまう。
「決定だな」
笑みを含んだその声にわたくしは反論をすることが出来ず、まんまと王子の思い付きに乗せられる羽目になってしまった。
……あぁもう、心臓に悪いわ。
暫くわたくしは王子の視線を感じながらも、火照る頬を冷やすことが出来ずにこう押しにあまりにも弱い自分を反省していた。
「で?俺はどうだった?」
「……負けましたわね」
「当たり前だ。勝てるわけないだろう」
自信満々に言うことではないのに、満足気にそうのたまう男に息を吐いた。そうではなく感想だ、と男が言ったのでわたくしは渋々ながらも口を開いた。
「……でも怪我がなくて何よりですわ。それにわたくし、初めて剣を振るう試合を見ましたがあんなに迫力がありますのね」
わたくしの言葉に、男は少し面を食らったような顔をする。
「……俺に惚れた?」
「サボリ続けた結果を見せられてどこに惚れろと言うのです」
「やはり君は手厳しいなぁ」
意地悪く笑う男にもう少しだけ真面目になったら良いのに…と思わずにはいられない。やけに輝いて見える蒼い瞳に男の能力が見た目に追いつくことを祈った。
「何度も言いますがきちんと訓練やレッスンは受けてください。ボンクラ王子など税の無駄遣いです!時代が時代でしたら、当の昔に愚かな貴族に利用されてポイされてますわ」
「……君に捨てられないかだけ心配する時代でよかった」
何と情けない…っ!
自分を省みるどころか飄々としている男にがっくりと肩を落とし、まぁ今日は鬱になっていないだけマシだと気を取り直した。
「……わたくし無能な婚約者はいりませんわ。さっさと…いえ一刻も早く有能な中身になって下さいませ」
「あぁ分かっているさ」
そのセリフを一体何度聞いて何度期待したことか。口先だけは立派な男なんて一度痛い目を見るべきよ。
「……殿下のお誕生日まであと三週間程です。その間どうぞ真面目に過ごして…」
「そうだ、君のドレスは俺が贈ろう」
「……え?」
念には念をと男に小言を畳み掛けようとした時、男の突拍子もない言葉にわたくしは目を見開いた。今なんておっしゃいました?
「君は何でも似合うからなぁ」
面を食らっているわたくしをクスクスと笑う王子はその視線でわたくしをじっくりと見て、一人頷いた。
いやお待ちください。切実に待って欲しい。
「宝石も靴も全て俺が取り揃えよう」
無能な人間は女にドレスを贈る前にやるべきことが沢山あるのではなくて!?
「……アンリ様、それは」
「あぁ任せておけ。全て王室直属の者に作らせる」
「……あのそうではなくて」
「異論は認めんぞ、シェリー」
ぐっ、とわたくしは王子の言葉に押し黙った。無駄にキラキラと笑顔を輝かせて美貌で押し通そうとするのはやめて頂きたい。
「……わたくしには身に余りますわ」
「何を言う。君は綺麗だ。俺に飾られた華はさぞや美しく咲くだろう」
足を組み換え、そう艷やかに言った王子にわたくしの頬は赤く染まった。思わず片手を頬に添え王子から視線を逸らしてしまう。
「決定だな」
笑みを含んだその声にわたくしは反論をすることが出来ず、まんまと王子の思い付きに乗せられる羽目になってしまった。
……あぁもう、心臓に悪いわ。
暫くわたくしは王子の視線を感じながらも、火照る頬を冷やすことが出来ずにこう押しにあまりにも弱い自分を反省していた。
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