56 / 522
三章 夏休みは夜遊び
056 お勉強
しおりを挟む「あ~……なんかゴメンね」
「こちらこそ申し訳ありませんでした……」
寝室でベッドインしたフィリップとクリスティーネ姫であったが、しばらくしたら謝り合っていた。
「てっきり初めてじゃないと思っていたよ。できたら、最初に言っておいてほしかったな~」
「申し訳ありません。あんなに痛いとは思いませんでしたので……」
どうやらクリスティーネはマッサージが初めてだったから、フィリップも途中でやめてしまったらしい。これではフィリップも楽しめないので、今日のところは諦める……
「まぁ僕と付き合うなら、それなりのテクニックを覚えてほしいし、今日はそれだけやってみよっか?」
「はい……お願いします……」
その選択肢はないらしく、教育したり攻めたりと、なんだかんだ楽しむフィリップであったとさ。
「す、凄かったです……」
フィリップの超絶技巧のマッサージでノックダウンしていたクリスティーネは、フィリップに腕枕されて目をパチクリしてる。
「僕も気持ち良かったよ。それじゃあ僕はそろそろ帰るね」
「へ? まだ何も話をしてないのですけど……」
「だからやる前に1日後って言ったでしょ? 僕、動ける時間が夜しかないから、帰らなきゃいけないの」
「夜だけとは?」
「日中を歩けない病気なの。太陽の光を浴びたら灰になっちゃうんだよね~」
「そんなヴァンパイアみたいな病気、あるわけないですよ~。ウフフ」
嘘にクリスティーネが笑っているなかフィリップは服に袖を通し、帰る準備。そして着替えが終わると、クリスティーネの頭を撫でた。
「また明日来るからね。そしたらベッドの中で話を聞かせて」
「普通にお話はできないのでしょうか?」
「できないというか、したくないみたいな? アハハハ。それじゃあ、明日ね。バイバ~イ」
「そっちは窓……あっ!!」
フィリップが窓から出て行くので、クリスティーネはタオルケットを体に巻いて窓から顔を出した。
「消えた……まさか、本当にヴァンパイアだったのかしら……」
どこを見てもフィリップの姿がなかったので、クリスティーネも嘘を信じてしまいそうになるのであった……
「やっべ。遊びすぎた」
フィリップが消えていた理由は、空が少し明るくなっていたから急いでいたから。屋根を飛び交い急いで帰ったら、バルコニーで行水してから匂いチェック。
ベッドに入ってダグマーが体温チェックをして就寝となるのだが、フィリップは少し気になることがあるのでベッドに招き入れた。
「体調が優れないのになさるのですか?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあったから。あと、抱き締めてほしくなったみたいな?」
「もう……殿下は寂しがり屋ですね」
いつもならこのままおっぱじめることが多いので、ダグマーも失礼な勘違い。ただ、フィリップを抱き締めることはやぶさかではない顔をしてる。
「この国にお姫様っているの?」
「カールスタード王国の王族ですか……確か国王には3人の子供がいて、全て男性だったはずです。そちらにもいまのところ男子しかいないと聞いております。ですが、どうしてそのようなことを聞かれるのですか?」
「いや~。僕って結婚相手なんて選べないじゃない? もしかしたら他国に送られるかもしれないから不安になっちゃって。だからお姫様がいるなら、帰る前に顔を見ておいたほうがいいかな~っと……」
「それはご不安に思ってしまいますね」
フィリップを察してというより、自分が寂しくなったダグマーは強く抱き締めた。
「なんか寝付けそうにないから、この国の歴史でも聞かせてくれない?」
「私も最近の情勢ぐらいしか教えられていないのですが……それで眠れるのですか?」
「勉強嫌いだからすぐ寝ちゃうかも?」
「ウフフ。でしたら、頑張って眠らず勉強してください」
「そこを握られると怖いんだけど……」
「ウフフフフ」
めったにないチャンスとばかりに、ダグマーは気合いを入れてカールスタード王国の近代史を語り、フィリップがウトウトする度にぎゅっとして起こすのであった。何をぎゅっとしているかと言うと……秘密だ。
歴史の授業は、ダグマーもそこまで詳しく知っていなかったので小一時間で終了。それから小一時間はなんか盛り上がってからフィリップは眠りに落ちた。
そして夜になったらお出掛けして、昨日マフィアたちと約束をしていたマッツの酒場に顔を出した。
「なんか静かだね~? あ、いたいた」
客はいるのに誰1人喋っていなかったのでフィリップはキョロキョロしていたら、カウンターにオロフ、トム、ロビンの姿があったから早足で近付いた。
「よっ。お待た」
「「「お疲れ様です」」」
「そんなのいいって。座って好きなの頼んで」
仰々しくお辞儀する3人を宥めたフィリップは、椅子に飛び乗ってカウンター越しに顔見知りのマッツと喋る。
「なんかみんな静かじゃない?」
「そりゃ~……なあ?」
「あ、こいつらのせいか。とりあえず、ここの客全員にお酒とか出してあげて」
「またか……」
「みんな~。今日は僕の奢りだよ~? マフィアなんて気にせず騒げ~~~!!」
「「「「「うおおぉぉ!!」」」」」
マフィアのボスが3人も揃っていたら、そりゃ騒げない。それに気付いたフィリップがタダ酒を振る舞うと、マフィアなんて気にならなくなる酔っ払い共であった。
「これ、例のブツだよ……ゲヘヘ」
酒場が騒がしくなると、フィリップは大きな革袋をカウンターに乗せて3人のほうへ押した。裏取引感を出して遊んでいると思われる。
「また銅貨……」
「アレ? これじゃなかった??」
でも、中身を確認したオロフは不満そうな顔をしてる。トムは嬉しそうなのは、年齢の違いからだろう。
「いや、ここだと金貨を使ってると思ってよ」
「別に金貨でも銀貨でもなんでもいいよ。ただし、懐に入れたヤツには、もうくれてやらないけどね」
「そんなことしねぇよ。あんたが重たくないのかと思っただけだ」
「あら~? 優しいところあるじゃな~い??」
「ふざけてんじゃねぇ!」
フィリップが腕に絡み付いたので、オロフも気持ち悪くなって振り払おうとしたが、一向に離れる気配がない。
「いてて! いてえって!!」
そう。フィリップはこう見えて、怪力の持ち主なのだ。
「と、僕に力のことを聞くのは無粋ってヤツだよ。本気で殴ったら、人体ぐらい穴開くから僕のことを怒らせないでね?」
「「「はい……」」」
昨日のこともあり、フィリップには逆らえないと心に刻んだ、オロフ、トム、ロビンであった。
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる