107 / 522
五章 二年生も夜遊び
107 ダンジョンの最奥地
しおりを挟む「これでアイテムもバグってたら、キレるぞ~~~??」
サイクロプスがバグっていた上に死ぬ時までバグっていたので、フィリップはすでにキレている。その状態で出て来た宝箱は、半ばヤケクソで開けた。
「セーフ! でも、お金以外使えねぇ!!」
出て来た物は、金貨数枚と白金貨2枚。それとフィリップより大きな金棒だったので、やっぱりキレてる。装備してみたらいま使っている武器より強かったけど、見た目から装備を諦めるフィリップであった。
それからカクカクした動きのポリゴンモンスターを危なげなく倒して文句ばかり言っていたフィリップであったが、経験値は多く入るし出て来るドロップアイテムはいい物ばかりなので微妙な顔。
地下19階より難易度が低いから、RPG好きからしたら物足りないのだ。苦戦するのは、空を飛ぶモンスターだけ。下りて来ないもん。
その場合は、真下から指鉄砲連射。反撃も真下には来ないから楽々倒せると言いたいところだが、指鉄砲ではHPを削るには時間が掛かるのだ。
いちおう最強魔法の氷桜吹雪を使えば早く倒せるが、一発では倒せないしMP消費が激しいので、MP回復ポーションをガブガブ飲むことになるからやめたんだって。アイテムボックスにたんまり入っているのに、貧乏症だ。
ちなみにフィリップのアイテムボックスは、宝の宝庫。武器防具に服や服飾品、各種回復アイテムが山ほど入っている。これは何かに使えるかと思って溜めていたけど出番がまったく来ないので、もう何が入っているかわからない。
お金もたんまり入っているけど、銅貨と銀貨はクーデターの時に全て吐き出したので、それ以降は拾っていない。金貨や白金貨だけでも充分すぎる額になっているからだ。
ただし、下に行くほど金貨が増えているので、捨てようかどうかめっちゃ悩んでいるらしい……
ポリゴンモンスターは限られた動きしかしないので楽勝に倒せると言いたいところだが、HPだけは無駄に多いから倒すには時間が掛かる。
しかしフィリップは剣と魔法を駆使して危なげなく倒し、地図を作って進んでいたら、見覚えのある部屋を発見した。
「おお! セーブポイントだ。さすがにここには無いと思っていたけど、ラッキー。ちょっと休んで行こう」
セーブポイントは4階ごとに設置されていたが、ラスボスの手前にはないと思っていたのでこれ幸いと、フィリップはお皿の水をコップですくって一気に飲み干した。
ちなみに回復水はセーブポイント限定。フィリップはどこでも使えると思って大量の水筒や瓶に移したのに、お腹パンパンになるまで飲んでもMPが一切回復しなかったから、そのまま不法投棄したんだって。
MPが満タンになったフィリップは、その場に座ってダンジョンノートを開いた。
「まさか21階なんてないよな? いや……あるかも? 帝都学院のダンジョンでは、ヒロインがこけて偶然発見するんだから、似たようなここならクリちゃんがこけて発見するのかも? ドラゴンみたいな裏ボスがいるのかな~?」
フィリップは心を躍らせてノートにメモを足していると、ふと気になることが頭に浮かんだ。
「てか、ここって地下20階もあるってラーシュでも知っていたけど、誰が潜って調べたんだろ? 僕の予想では、5人パーティでもレベル50はないと厳しいぞ。一番強い近衛騎士でもレベル30しかなかったのに……また謎だよ~」
この世界の誰も到達できないダンジョンが人々に知れ渡っていたのでは、フィリップの悩みは増えるのであった。
それからひと月、経験値の割には楽な地下20階に籠って順調にレベル上げしていたフィリップ。ついでに宝箱漁りをしていいアイテムを手に入れてはいたが、ポリゴンモンスターには飽きて来た。
「もうラスボスとやり合ってみるか~」
なので、今日は地下20階のセーブポイントにやって来たらお着替え。最強装備を取り出して装備する。
「う~ん。なんかバラバラ。でも、いまある装備じゃこれ以上のパラメーターアップはしないからな~……」
フィリップの姿は、頭には頭頂部が尖ったヘルメット。フルメイルの鎧は動きにくいので胴体だけ装備して、違う軽鎧から腕当てとすね当てを付けている。防具は体のサイズに合うものが少ないから、バラして使うしかなかったらしい。
右手にはカッチョイイ剣より強い、攻撃力90のダサイ剣。左手には金ピカのバックラーだ。
見た目は超ダサいけど、これでも防御力は200を超え、各種補助効果アップもあるので素早くなり、攻撃力は115となっているので我慢するしかない。
「ま、誰も見てないんだから、気にすることないか。行きま~す。はぁ~」
フィリップは強がってみたけど、装備がダサイのでいまいち気持ちが乗らないのであったとさ。
「ここ、たぶんボス部屋だと思うんだけど、何もいないんだよな~……」
最短距離を進んだフィリップが扉を開けるだけ開けて入ろうとしないだだっ広い部屋は、ダンジョンの最奥地。
他の部屋は全て確認済みだから、ボスがいるのは確実。ただ、氷だるマンを放り込んでも何も起きないので、慎重派のフィリップは入りづらいのだ。
「虎穴には入らずんば虎児を得ず! 氷だるマン!!」
覚悟を決めたかに見えたフィリップは、人間大の氷だるマン5体を盾にしながらゆっくりと奥に進むのであった。
「「「ガルルルゥゥ!!」」」
「ヤバッ!?」
フィリップが奥に進んで「なんであんな所に?」と玉座が目に入った瞬間、床一面に魔法陣が現れたと思ったら、次の瞬間には氷だるマン3体が同時に、床から出て来たみっつの口に飲み込まれたので、フィリップは大きく後ろに飛び退いた。
「初見殺しかよ……」
こんなことをするモンスターは初なので、床から出て来ている黒いモンスターを睨みながら全体が現れるのを待つフィリップ。
「デカイ……ケルベロスだ~~~!!」
しかし、巨大なケルベロスを生で見れたと、怒りは吹き飛ぶフィリップであった……
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる