134 / 522
六章 夜遊び少なめ
134 ○○○事件
しおりを挟む帝都学院にフィリップが通い始めて1週間……
「なんで疲れた顔してんだ?」
フィリップは自室のベッドでグデ~ンとなっているところをボエルに見られた。
「べっつに~」
フィリップは強がっているが、実はけっこう疲れている。理由はルイーゼがしょっちゅう目の前に現れるからだ。
フレドリクたちと一緒に来てくれれば目立つから逃げやすいのだが、単独行動の時もあるのでフィリップは気付くのに遅れることもしばしば。
その場合は、天井に張り付いたりカーテンの裏に隠れたり、掃除用具入れに隠れたりゴミ箱の中に隠れたりするのが手一杯。しかし、ルイーゼは百発百中でフィリップを見付けるので、目に見えない本気の逃走をしなくていけない。
ただでさえフィリップは目立つし、周りの目も気にしないといけないから、この毎日のかくれんぼはフィリップも精神的に疲れて来たのだ。
「いっそのこと、もう……」
「ん? なんか言ったか??」
「いや、なんでもない。それよりボエルは最近余裕そうだね。体力ついたの?」
「そ、それは……」
「諦めたんだね……」
フィリップの逃亡は、ボエルも毎日走り回って捜していたので、夕方にはヘトヘトでソファーに倒れ込んでいた。しかしフィリップは必ずチャイムが鳴る前後には教室に戻って来るし、ごはんの時間は守るから追うことをやめたらしい。
「病弱って聞いてたのに、そんなに動いて大丈夫なのか?」
「いまのところはね。熱が出だしたら長引くから覚えておいて」
「それだと楽ができるんだけどな~」
「寒い時は、いつもメイドに裸で抱き締めてもらっていたから頼むね~」
「うっ……楽じゃないかも……」
ボエルが嘘を信じているので、フィリップは真顔で皆まで言わないのであった。ニヤニヤしたらバレ兼ねないから……
翌日からも、ルイーゼが短い休憩時間まで普通にやって来てクラスメートと揉めているので、フィリップも辟易。今日は「お昼まで姿を隠す」と書いたメモ用紙をボエルのポケットに入れたら、授業をサボって外をブラブラ歩いていた。
「確かこっちのほうに……あったあった。おお~。なかなかおどろおどろしい外観だな~……なんで解体しないんだろ?」
フィリップがやって来た場所は、帝都学院の旧館。元々は立派な石造りの建物だったが無数にヒビが入り、枯れたツタが巻き付いているので雰囲気抜群の建物だ。
「旧館を使うイベントは、兄貴たちが4年生だったからそれ以降は出て来ない。ここなら聖女ちゃんも来ないっしょ~」
ここは乙女ゲームのイベントで使われる場所。幽霊が出ると噂があり、ルイーゼが意中のキャラに連れられて、一緒に肝試しをして吊り橋効果を狙うのだ。
ちなみに幽霊は本当に出る。ただ、幽霊の正体は悲運の死を遂げた平民の女子生徒だったのでルイーゼは感情移入していたけど、聖魔法で成仏させるので、フィリップは「倒すんか~い」とツッコンだらしい。
そんな曰く付き物件なのに、フィリップはウキウキして楽しそうに探索。でも、「ギシッ」って鳴ったらビビってた。
「ここココ~。もう何も出ないのかな?」
フィリップが若干ビビリながらやって来た場所は、3階にある女子トイレ。ここに幽霊が出たのでイロイロ見ていたが、まったく反応がないので隣の男子トイレに移動した。さすがに女子トイレは居心地が悪かったみたいだ。
とりあえずここも調べたら個室に入り、スライムクッションを便器のフタに乗せてそこに座った。
「う~ん……なんでか居心地がいい……あ、元の世界のトイレぐらいの広さだからか? お城とか無駄に広いもんな~。トイレ飯とかしたことないんだからね!」
フィリップがなんで言い訳をしているかわからないけど、居心地がいいみたいなので皆まで聞かない。そのままウトウトしてしまうフィリップであった……
時間が過ぎ、フィリップがお昼まで寝ていたら、何か物音がしてようやく起床。フィリップは「寝過ぎたかも?」と懐中時計を取り出したところで声が聞こえたので、ビビってお手玉してた。幽霊が出たのかと思ったらしい。
「フレドリク殿下にはご立派な婚約者がいるのを知っていて、どうしてそんなことできるの?」
「フレドリク殿下に色仕掛けするのはやめてくれない? 悲しむ人がいるのわからないの??」
「私はそんなこと……」
話の内容的にルイーゼがイジメられているけど、フィリップは「なんで!?」って驚いていてそれどころではない。それに助けてしまうと逆ハーレムルートに入ってしまう可能性があるから動けない。
しかし、ルイーゼのキャラ設定は、おっちょこちょい。さらにフィリップを見付ける特殊能力も持っているから、こけた拍子に個室のドアをブチ破って抱きつき兼ねない。
「「こうなったら……」」
「や、やめて……」
そんなことを考えていたらルイーゼは危機一髪。2人の女子生徒にルイーゼは乱暴……
「第二皇子がウンコしてるんですけど~~~!!」
「「「……へ??」」」
されない。フィリップが皇族にあるまじき変なことを大声で言うモノだから、敵味方関係なく固まった。
「怒るよ!? 声で誰かわかってるからね! ウンコ投げられたくなかったら、さっさと出て行け~~~!!」
「「「ははは、は~い!!」」」
そこを怒鳴り散らすと、3人は混乱しながら慌てて男子トイレから出て行くのであった。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる