235 / 522
十章 物語が終わっても夜遊び
235 メイド会議
しおりを挟む何かを閃いたフィリップは、この日はメイド長にお願いをしたら、メイド服のデザイン案をまとめて就寝。ボエルは珍しく女を使ってフィリップのやろうとしていることを聞き出そうとしていたけど、超絶技巧のマッサージでノックダウンだ。
翌日のおやつの時間過ぎ、会議室に城で働くメイドが集められた。このメイドは急ぎの仕事がない者。急遽集められたので、全員は無理なのは誰もが承知の上だ。
ただ、本当に急だったので、メイドたちは一様に困惑している。なんだったら、ルイーゼの件でも急遽招集を掛けられたから「誰かやらかした?」と思っているメイドが大多数だ。
なんだか責任の押し付け合いや罵詈雑言が会議室に響いているが、前のドアが開くと同時にピタリと音は無くなった。
「どうもどうも。僕だよ~?」
「「「「「はぁ~~~……」」」」」
「え? 何その反応??」
そこにフィリップがスキップで登場すると、メイドたちは安堵のため息。フレドリクに怒られると思っていたら馬鹿皇子が馬鹿面下げて現れたから、ホッとしたみたいだ。
フィリップとしては「キャーキャー」出迎えられると思っていたのかな? もしくは怖がられていると思っていたのだろうけど、ここ最近の噂のせいで「切り捨て御免」は忘れられているな。
「ん、んん! ちゅうも~く」
気を取り直してフィリップは声を出すと、メイドたちは気怠そうにフィリップを見た。
「みんなを集めたのはね~。父上から新しいメイド服を作れと言われたからなんだよね~。ボエル、貼り出して」
「はあ……」
新しいメイド服と聞いて、メイドたちは興味津々。ボエルが壁に貼る紙を凝視している。ただし、ボエルは「こんなの絶対怒るぞ?」とか思いながら貼っている。
「これで決定ね。って、見えないよね? もっと前で見て。あ、一列に並ぼっか? ボエル、あとは任せた」
「はあ……」
メイドが一列に並んだら、紙が貼っている場所を通り過ぎさせる。すると、1人目から悲鳴が上がった。
しかし、まだまだ見えない人がいるので、ボエルは前に進むように促したけど、悲鳴や嫌悪感たっぷりの声が会議室内に響き渡るのであった……
「んじゃ、全員見たね? 反対意見もないみたいだし、これでけって~い! パチパチパチパチ~」
「「「「「ふざけないでください!」」」」」
誰の顔を見ても不満な顔をしているのに、フィリップが決定を告げると不満は爆発した。
「ふざけてないよ~。誰も反対しなかったじゃない? 反対しないってことは賛成ってことでしょ??」
フィリップが問うと、ヴィンクヴィスト侯爵家のアルフヒルドを含めた、立場が上であろう3人のメイドが前に出て来た。
「それは皇族に対して失礼に値しますから、口にできなかっただけです。ですよね?」
「ええ。先に忌憚のない意見を聞くことや、異を唱えてもいいと仰ってくれませんと、私共に発言権はありません。ですよね?」
「はい。そもそも、先にデザイン変更の知らせを出すべきかと存じます。それを抜き打ちにするのは如何なモノかと。ですよね?」
「その『ですよね?』って、責任の押し付け合いやめてくれない? 怒らないから。ね?」
アルフヒルドたちは、自分だけではないと責任を分散して喋るから聞き辛いので、まずはそこから止めたフィリップ。
「てことは、みんな反対ってこと?」
「「「はい!!」」」
「どこが悪かったのかな~??」
「「「あた……デザインです!!」」」
この言い間違いは完全に「頭」で揃っていたから、ボエルは会議室から出て行った。笑い声は聞こえてるけど……
「デザインか~……わかった。直してほしいとこ言って」
「では、私から……この一番目の服は、そもそも服なのですか? あと、ウサギの耳は頭に必要なのですか??」
「必要必要。夏服だから、布面積を最小にしてみたの。涼しそうでしょ~?」
「アホ……却下です!!」
「ええぇぇ~……」
そりゃ、バニーガールの制服は却下に決まってる。フィリップに酷いサプライズをされたアルフヒルドもアホって言っちゃったよ。
「この二番目の服は、スカートの丈が短すぎます。というか、中身が出てますよ?」
「あぁ~。それは春秋兼用ね。または、現行の制服を走りやすく改造してみたんだよね~」
「アホ……却下です!!」
「ええぇぇ~……」
そりゃミニスカートどころか中身が見えていたら、2番手のメイドにもアホって言われるよ。
「この三番目の服は、私たちが着るのですか? この無骨なフォルムはどう見ても男物ですよね?」
「それは冬用ね。足が隠せるからあったかいよ?」
「女性用じゃないと言ってるのです! アホか!!」
「せめて却下するまで言ってくれない? 聞き流せなくなるから。ね?」
「あっ!? 却下です!!」
作業着も不人気。3番手のメイドには完全にアホと言われたけど、フィリップは「セーフ」とかやっていたからお咎めなしだ。
散々な苦情は最後の服にまで言及。
「四番目は一番マシですけど……ズボンは変ですね」
「そうですけど、あったら助かる場面もあるかも……」
「冬なんかはたまに男性が羨ましく思いますものね」
「そう言われますと……」
最後は普通のメイド服にスカートとズボンを交換できる仕様。3人は貶すよりも意見を言い合っている。
「ま、なんにしても……」
「「「このデザインはありえませんわ」」」
結局のところ、ダサイから最後もナシ。声を合わせて却下されるのであった。
「もう! そんなに言うなら自分たちで考えたらいいじゃん!!」
全ての案を却下されたフィリップはプンプンだ。
「え……いいのですか?」
「そのかわり、メイドは全員参加。5人までのチームはオッケー。期限は十日後。デザイン画は名前を伏せて批評して、一番得票数が多い人の服が本採用ね。デザインは四番目のヤツを縛りにしようか。あとは~……審査員はメイド長と皇室のデザイナーも入れるから。これが嫌なら、僕の案が採用ってことで……」
「「「やらせていただきます!!」」」
フィリップの案より嫌な物はない。3人は考えるまでもなく返事し、その後ろにいるメイドたちは力強く頷く。
斯くして、メイド服コンペが始まるのであった……
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる