256 / 522
十一章 昼が忙しくても夜遊び
256 新メイド服のその後
しおりを挟むリネーアたちは太ると知ってもいまはカレーの誘惑に逆らえないので、そのままチビチビ食事。食べ終わるのをフィリップが待っていたら、料理長が感想を聞きに来たので「もう一歩」と助言をしていた。
さらに、肉の変更や魚介類等も試すように指示を出す。リネーアたちはまた誘惑に駆られていたので、日にち指定。寮の食堂の3階と2階は毎週土曜日の夜に出し、校舎と寮の1階は週3の頻度に。
太りやすいとも掲示するように指示したけど、週に計7回は食べるチャンスがあるから、誘惑に負けた生徒は確実に太るはずだ。
料理長もその心配は危惧していたのですぐに受け入れたが、リネーアたちは残念そうにスプーンを咥えてフィリップたちの話を聞いていたのであった。
それから2日後、ボエルは完全に体調が戻ったので、ソフィア・アクセーン男爵令嬢と婚約者をまじえての修羅場。いや、お茶会。
フィリップの予想通り、カロラは金貨を全てソフィアに手渡していたそうだ。そのお金は、2人で折半。ソフィアが全てカロラに渡そうとしたから、カロラも受け取れないから折半となったらしい。
フィリップとソフィアのスキャンダルは、婚約者の耳にも入っていたけど、ソフィアの親友が見ていたのでこちらも問題なし。
ただ、フィリップは信じられないからか、婚約者限定で一度だけフレドリクに進言する権利をあげていた。浮気のお詫びの品と勘違いさせようとしたみたいだけど、婚約者は裏表のない人物だったので有り難く頂戴していた。
それでさらに心配。いい人カップルだから、魑魅魍魎が蔓延る貴族社会を生き残れるか心配なので、フィリップは自分の名前で時間稼ぎする策を与えて立ち去るのであった。
お茶会から数日後、フィリップは仮病に突入して学校にも行かずダラダラしていたら、ボエルが皇帝の手紙を持って入って来た。
「ふ~ん。なるほどね~……読む?」
「いや……また機密事項だろ?」
フィリップがこんなことを言ってるのだから、ボエルは嵌められることを警戒してる。二度目だもん。
「ただの報告書だよ。ちょっと前に新しいメイド服の支給があったみたい。そのこと教えてくれてるだけ」
「あぁ~……そういえば、オレも取りに来るように言われてた。みんな着てるってことか」
「そそ。3割ぐらいズボンで仕事してるってさ」
「てことは、オレの仲間が……」
「どうだろう……洗濯係が多いみたいだから、適材適所って感じはするね~」
ボエルとしては性同一性障害の仲間がいるのかと嬉しそうな顔になったが、報告書を読む限り少なそう。元より少ないのだからとフィリップは励まし、洗濯係以外でズボンを好んで穿いている人を探そうと提案していた。
「ボエルが着てるとこも見たいし、週末に城に顔出してみよっか?」
「おう。それならリネーアも誘ってやろうぜ。コニーに会いたいだろうし」
「……コニーって??」
「いい加減覚えてやれよ~」
やっぱりコニーはフィリップの記憶になし。ボエルもコニーと呼ぶことをやめて、フィリップの前では「モブ君」と呼び出したのであった。
週末までにフィリップは昼型に戻したら、豪華な馬車に揺られて登城。リネーアたちはフィリップの書いた通行許可証を待ってコニーの下へ送り出す。
城に入ると、待ち構えていた執事がフィリップを拉致。手紙で帰る旨を知らせていたから、皇帝の撫で回しの刑。どうやら城でもカレーが振る舞われ、フィリップが発案者と聞いたから褒めてるらしい。
皇帝は、味もそうだが早く食べられるから気に入った様子。しかしフィリップは心配。食べ過ぎは太るし健康を害するから、週に1回から2回にするよう進言する。
フィリップが体の心配までしてくれたから、撫で回しの刑は激しさ増大。失言だったと後悔していた。
やっと解放されたフィリップはフラフラで、新しいメイド服を受け取ったボエルと一緒に城の中を歩いていた。
「うん。みんな似合ってるね~」
「ああ。見違えた。気持ち、かわいさ2割増しかも?」
「前のは見慣れてしまってたからだよ」
「それもあるけど、表情が柔らかくなった気がするぞ」
「あ、みんな女子だもんね。新しい服は嬉しいんだね~」
メイドは皆、笑顔の者が多い。それにフィリップに感謝する者もたまにいるので、フィリップも少し嬉しそうだ。カッコつけて手を上げるだけで素通りしてるけど。
そのままメイド詰め所に顔を出したら、ここではアガータから多大な感謝。いまのところメイドたちは、口喧嘩のひとつもしないで仲良くやっているそうだ。
そこでボエルはフィリップの背中をツンツン。フィリップは意図を読み取って、ズボンを好んで穿いているメイドの職場を聞き出すのであった。
「仲間が増えてよかったね」
「ああ……」
アガータから聞いたメイドは間違いなく性同一性障害だったので、帰り道ではボエルも感慨深い顔。今までの彼女は女性が好きな女性という感じだったので、男性の心を持つ女性と出会えて嬉しかったのだ。
そのメイドは、ボエルに感謝をしていた。ズボンのこともそうだが、執事服を着て歩いているからパイオニアとして尊敬していたのだ。
そんなことを言われても、ボエルの心を救ったのはフィリップ。ズボンのこともフィリップがやったことなので、ボエルはフィリップをヨイショしまくっていた。
だけどフィリップは「なんのこと?」と、とぼけ続け「からかうためにやった」と白状したので、メイドにはいまいち伝わらず。どちらにしても馬鹿皇子の噂を信じているから伝わらなかっただろう。
あと、「ボエルには彼女がいる」と秘密を暴露したことも悪い。「こんな人に仕えていて大丈夫か?」とめちゃくちゃ心配されたボエルであった。
12
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる