323 / 522
十四章 新居に移っても夜遊び
323 フレドリクの新居探索
しおりを挟むお酒を飲んでから部屋の中でドタドタ追いかけっこをしていたフィリップとペトロネラは、一気に酒が回ってパタリと倒れた。
なのでボエルは水を飲ませたりして介抱したら、2人を同じベッドに寝かせて部屋から出て行く。酔っ払いの相手、大変だもん。
次の日フィリップが目覚めたら、ペトロネラはもう起きていて、フィリップの下腹部辺りでペチペチ音を出して遊んでいた。
「な、何してんの?」
「何しても立たないの……」
「やめれ~~~」
フィリップの子種、お酒がまだ残っていたのでギリセーフ。でも、甲斐性が無いと思われたくないのか、朝からマッサージを頑張るフィリップであったとさ。
ボエルが起こしに来た時には終盤だったらしく、そのまま待機。というか、覗いてた。
それが終わって2分ほど置いてからボエルは寝室に入ったけど、早すぎたので覗きはフィリップにバレていた。
フィリップは特にやることがないので、二日酔いとか言ってベッドの上から動く気配がない。なのでボエルはペトロネラの着替えを手伝い、役得とか思ってた。
ペトロネラが出て行くと、フィリップも服を着せてもらって皇族食堂で朝食。帰り道は、何故かフィリップは道を逸れた。
「散歩でもするのか?」
「うん。こっちこっち~」
フィリップがズカズカ歩いていると、たまに擦れ違うメイドが頭を下げてクスリと笑う。やはりボエルが後ろにいると、小型犬が喜んで散歩しているように見えるらしい。
城の中、かなり遠くまでやって来たところで、ボエルもフィリップがどこに行こうとしているのかを気付いた。
「フレドリク殿下の新居に行くのか?」
「おお~。よくわかったね~」
「右翼まで来たら誰でもわかる。馬鹿にしてんのか?」
「ゴメンゴメン」
フィリップは心のこもってない謝罪。ここ最近、フレドリクの周りを調べさせていたのだから、もっと早く気付いてもいいもん。
「てか、いま行っても、フレドリク殿下は仕事中だから会えないぞ?」
「あぁ~……ま、新居がどんなところか見たいだけだし、会えなくてもいいよ。ウチより立派なのかな~?」
「だろうな~。絢爛豪華な佇まいしてる気がする」
「どんな屋敷なんだろうね~?」
なんだかんだで2人とも屋敷は気になるのか話が弾む。ちなみに右翼は騎士の宿舎もあるから、フィリップは「汗臭そう」とか言ってた。
でも、ボエル的には「こっちのほうが防犯面では優れているから皇太子殿下なら当然」とか言っていたので、フィリップは「差別されてる」って怒ってた。
そんな感じで雑談していたら、廊下の遠くのほうに2人の騎士が立っているように見えたのでフィリップの足が止まる。
「ねえ? もうそろそろ新居に着くよね? 僕もあそこまで厳重にしなきゃダメだったのかな?」
「う~ん……どうだろう? 万全を期すためなら、やってもいいかも??」
「廊下まで塞ぐ必要もないように思えるんだけどな~」
「まぁフレドリク殿下の場合はお妃様もいるから、厳重になってるんじゃね?」
「そんなもんなのか~」
ボエルの答えに些か納得がいかないフィリップであったが、歩を進めて騎士に近付いた。
「お引き取りください」
「はい??」
騎士はフィリップの顔を知っているはずなのに、第一声は挨拶でも止める言葉でも無く「帰れ」の一言だったのでフィリップの声も上擦った。
「僕、第二皇子だよ?」
「重々承知しております。しかし、皇太子殿下から関係者以外誰も通すなと命令されております」
「皇太子の身内は関係者でしょ?」
「仰られていることも重々承知しております」
「皇帝陛下でも通さないの?」
「はっ。命令ですので」
「う~ん……」
フィリップがボエルの顔を見ると「ありえないだろ」と書いていたので、ボエルのお尻をポンッと叩いた。
「それじゃあ仕方ないね。お仕事ご苦労様。ボエル、行くよ」
「いま、ケツ触ったよな?」
フィリップが踵を返すと、ボエルはセクハラの文句を言いながらついて行くのであった。
「なあ? 殿下のわりには引くの早くないか??」
騎士から充分離れたところでボエルは疑問を口にした。フィリップはワガママだから、あんな言い方されたら絶対にゴネると思っていたらしい。
「誰が引くって行ったのよ。外から回るよ。出口探して」
「やっぱり殿下はそうだよな~」
そのアンサーにボエルは激しく同意。悪ガキだから、フェイントでも入れてるように見えたらしい。
けっこう離れた位置まで来たら中庭に出る出口を発見したフィリップたちは、外からまた北上する。
「うわっ。外も騎士がうろついてやがる」
「めちゃくちゃ厳重だな。どうする?」
おおよそだが、廊下で立ち入り禁止と追い返された所を越えた場所には、壁に張り付くように騎士が歩いていたのでまたストップ。
「もうちょっと遠回りするか~」
「どこから行けば……あの道が使えそうだ」
ボエルが道を探したら庭園の入口があったのでそちらのほうへ。迷路のようになっているので、迷いながら北を目指して進む。
そうしていたら、木製の東屋を発見したのでフィリップはボエルに協力してもらって屋根に登った。
「なんか見えるか~?」
「うん……たぶんだけど、僕たちが止められた場所は、お兄様の新居のかなり前だったみたい」
「てことは~……どういうことだ??」
「さあ? そろそろ落ちるよ~??」
「落ちるなよ! あぶねっ!?」
フィリップはなんとなく答えは見えたので、背中から落ちてボエルがキャッチ。いくら余裕で受け止められると思っていても、第二皇子が自殺まがいのことをするので、ボエルの冷や汗は止まらないのであったとさ。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる