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十四章 新居に移っても夜遊び
334 初仕事
しおりを挟む歓迎会はボエルが荒れまくっていたので、終了したらボエルを自室に帰すフィリップ。めちゃくちゃ愚痴られていたから離れたかったらしい。
そうしてカイサとオーセを引き連れて2階に上ったら、そこで部屋割りの発表。玄関から入ったところにあるふたつのドアをフィリップみずから開けた。
「ここが2人の部屋ね。ちょっと狭いけど作っておいたよ」
「「わあ~」」
その先は、机とベッドがあるだけの殺風景な部屋。それでも2人は、まだ実家暮らしで個室がない暮らしをしていたので嬉しそうに入って行った。
「なにこのベッド! ふかふか~」
「もう、一瞬で寝ちゃいそう」
「アハハ。気に入ってくれたみたいだね。でも、足りない物ばかりだと思うから、必要な物があったら遠慮せずに言うんだよ~?」
カイサとオーセは疲れてるだろうと、フィリップは「何かあったら声掛けて。おやすみ」と告げて自分の寝室へ。久し振りに娼館にでも行こうかと2人が寝静まるのを待っていたら、寝室にノックの音が響いた。
フィリップが入室を簡単に許可すると、入って来たのはパジャマ姿のオーセであった。
「どうかした?」
「なんだか夢を見てるみたいで寝付けなくて……」
「アハハ。大変な1日だったもんね。こっちおいで~?」
フィリップが両手を広げて待っていても、オーセは第二皇子に抱きつけないとベッドの端に座った。そんなオーセをフィリップはベッドの中央に引きずり込んだ。
「うわっ……すごっ……浮いてるみたい……」
「ね? 寝心地いいでしょ」
「うん……本当に第二皇子だったんだ」
「ベッドで確信したんだ~。アハハ」
「だって~。殿下って、ずっと変なんだも~ん」
「そう? 他国の第二王子もこんなもんだと思うけどな~」
「そんなワケないでしょ~。キャハハハ」
オーセからどこが変なのかと聞いていたら、再びノックの音がしたので、フィリップは呼び込んだ。
その者はもちろんカイサ。寝付けないからフィリップの所に来たみたいだけど、オーセがフィリップに腕枕されていたので固まった。
「カイサもこっちおいで。ちょっと話したいことあったの」
「し、失礼します……」
第二皇子に呼ばれたのだから、カイサもフィリップの腕の中にイン。オーセも命令されてやっていると思ったらしい。
「僕って、皇子様っぽくない?」
「……へ?」
「オーセが疑うんだよ~。酷くな~い?」
「そりゃ疑うよね? 皇子様らしいとこ、まだひとつも見てないもん。そう思うよね?」
「えっと~……私も見えません。このベッドのほうが位が高く見えるくらいで……」
「ベッドに負けた!?」
「「キャハハハハ」」
第二皇子、まさかのベッドに完敗。その悔しそうな顔を見て笑うオーセに釣られてしまうカイサ。ここからは話が弾み、フィリップから出るイロイロな話を楽しく聞いていた。
「あ、そうだ。手紙にも書いたけど、僕たちの出会いだけは誰にも言わないでね?」
「「うん。言えないと言うか、なんと言うか……」」
「それなら大丈夫か。僕が城を抜け出してるって知ってるの、カイサとオーセだけだから、くれぐれも秘密にしてね。迷惑が掛かる人がいっぱい出るから。特にボエルがどうなるかわからないからね~」
「「ああ~……」」
歓迎会で散々ボエルの愚痴を聞いたカイサとオーセは、たぶん勘違いしてるだろうとフィリップは補足する。
「ボエルは父上から雇われてるの。責任問題って話ね? 怒って殴るとかそういうんじゃないからね?」
「あっ! そういうこと!?」
「え? 殴られてるの??」
「何度か殴られたことあるよ。酷いよね~?」
驚く2人にボエルの愚痴を言ってみたが、どう言ってもフィリップが悪いと言われてた。オモチャにしてたとまで言ったら、そうなるよ。
「てか、そろそろ気持ちは落ち着いた?」
ただし、これまでの話は、フィリップが気を遣って緊張を解すために楽しい話題をしていたっぽい。
「うん。そろそろ部屋に戻るわ」
「私も~。ふぁ~」
「えぇ~? もう寝るの~? これからお楽しみの時間でしょ~??」
「「はい?? ア~レ~~……」」
いや、マッサージの受け入れ体勢を整えていただけ。フィリップは同時に襲い掛かって、2人ともベッドから逃がさないのであった……
翌朝……
「またこいつは……羨ましい……」
ボエルが起こしに来たらベッドの上に3人の姿があったので、女性陣の裸体に釘付けになってるよ。
「はぁ~……起きろ~~~!!」
「「はいっ!?」」
そんな羨ましいことをしていたのだから、今日もボエルはオコ。大声を出したらカイサとオーセは飛び起きたけど、皆様の主人は寝たままだ。
「ムニャムニャ。あと五日……」
「あの……こんなこと言ってますけど……」
「五日って……そんなに寝る人間、見たことありません……」
「あぁ~……殿下って、寝起きめちゃくちゃ悪いんだ。全然起きない場合はマッサージしてやったら気分良く起きてくれるんだけどな~……」
「「えっと……私たちの仕事ですよね~?」」
「オレ、あっち行ってるな」
ボエルが助言すると、察したカイサとオーセ。第二皇子専属メイドの初仕事は、朝から体を使う重労働になったのであったとさ。
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