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十七章 大事件が起きても夜遊び
424 大発表
しおりを挟む皇帝がぶっちゃけるのでフィリップは愚痴に付き合ってあげたら、お互い愚痴は止まらない。皇帝はフレドリクが同じ空間で仕事をするのもプレッシャーだったんだとか。
その仕返しに、1日空けての退位宣言。フレドリクの驚いた顔が見れて満足したそうだ。
「僕も死ぬほど驚いたんだからね」
「フィリップの顔は見飽きてるから大丈夫だ」
「えぇ~。そんな顔した記憶ないよ~」
本当はフィリップの驚いた顔は面白かったので皇帝は笑いそうになったけど、ドッキリの最中だったから我慢したらしい。
「余命のことは大丈夫なの? 辛いでしょ?」
「正直に言うと、まだ実感が持てない。人間の死ぬ日が決まってるなんて、初めて聞いたのだからな」
「あぁ~……そっちか~。まぁそういう気持ちも大事だよ。病は気から。余命宣告はあくまでも予想であって、気持ちしだいでそこから1年でも2年でも延びるケースがあるからね」
「フレドリクはそんなことを一言も言ってなかったが……どうしてフィリップはそんなことを知っているのだ?」
「薬屋の受け売りだよ。あ、世間話の時に出て来た話だから、このことお兄様に言うの忘れてた」
喋り過ぎて皇帝に怪しまれたが、薬屋と接触していたのはフィリップだけだったので、なんとか信じてもらえた。
「そうだ。あの薬、痛みを止めるモノらしいな? アガータが飲まないと治らないとか言っていたから、すっかり騙されたぞ」
「あ、お婆ちゃん、そんなアドリブしてくれてたんだ。さすがは長年皇家に仕える侍女だね」
「フィリップの入れ知恵ではなかったのか……そういえばフィリップは一度も治るとは言ってなかったな。どうりで貴族が簡単に騙されて金を巻き上げられるワケだ」
「騙したのはお婆ちゃんなんだから、僕を詐欺師だと思わないでくれる?」
痛み止め薬からフィリップの詐欺を思い出した皇帝は疑った目をするので、フィリップは清廉潔白だと訴えるのであった。
でも、帝都学院では成績面で全ての人間を欺いていたから、まったく信じてもらえなかったけどね。
それからも話し込んでいたら、フィリップのお腹がかわいく鳴った。皇帝も喋り疲れたらしく、今日はこのへんでお開き。フィリップは「またね」と告げて私室を出た。
私室を出たらけっこうな時間だったので、皇族食堂を使うには待ち時間がもったいない。カイサとオーセを連れてメイド食堂で一緒に夕食だ。
メイドたちは何やらフィリップに変な目を向けているので、早く食べられるカレーライスを注文。その待ち時間にメイドが寄って来て、皇帝の病状を聞かれていた。
なのでフィリップは適当なことを言ったら、全員散り散りに離れて行く。そこに戻って来たカイサとオーセは首を傾げていた。
「殿下。さっきまで囲まれていたのに、どうやって追い払ったのですか?」
「お兄様は僕が喋りそうだからって教えてくれないって言ったら、『あぁ~』って……失礼じゃない?」
「「あぁ~……」」
「2人も同じ顔しないでくれない??」
フィリップが残念すぎて、2人も納得。それでも根城に帰ったら質問攻め。今日も発表を待てと言って、マッサージしてから眠るフィリップであった。
翌昼……城に激震が走った。
皇帝の退位と病状、フレドリクの即位が発表されたからだ。
城で働く人々は不安と期待が入り乱れたが、すぐにフレドリク皇帝の姿が頭に過り、期待の声が大部分を占める。
そんなことになっているのに、フィリップの根城は陸の孤島なので、まだ暢気な空気が漂っている。しかし夕方前になると、情報を仕入れたカイサたちが慌てて帰って来て大パニックだ。
「「プーちゃん! 大変なことになってるよ!!」」
「うん。知ってるよ。父上とお兄様の発表があったんでしょ?」
「「一緒に驚いてよ~~~!!」」
でも、フィリップは全部知ってるので冷静。それが許せないと、2人はジャンピングボディプレスだ。
「陛下、もう長くないんでしょ!?」
「プーくん大丈夫!? 辛かったら泣いていいんだよ!?」
「いまのところは大丈夫だから落ち着いて」
「「でも~」」
「泣き言はお兄様と言い合ったから、本当に大丈夫だから。そもそもこの話を聞いたの、年末だしね」
「「そんなに前なの~~~??」」
2人はフィリップが聞いたのは、皇帝に真実を話しに行った前日だと思っていたみたい。なので「ウソつき」と怒って、心配する気持ちが吹き飛んだ。
「ま、僕の騎士たちも混乱してるだろうから、話をしておくか。んじゃ、服は~……このままでいっか」
「「着替えましょう!」」
これから大事な話をするのだ。フィリップはカイサたちにパジャマを剥ぎ取られ、一番豪華な服を着せられるのであった。
「え~……知っての通り、そういうこと。ウチはこれからもたいして変わらないから安心してね~」
フィリップが登場したら緊張していた護衛騎士だが、あまりにもフィリップが軽すぎるのでズッコケかけた。
ただし、皇帝の死が近いと聞いていたから、持ち直してフィリップを心配する声もあがっている。それもフィリップは1ヶ月近くも前から知ってるとぶっちゃけたので、全員、心配して損したって顔だ。
「あ、そうだ。父上が退位となると、近衛騎士もお兄様のところと合体しそうだな……推薦の件、白紙に戻していい?」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
「定員オーバーだから仕方ないじゃ~ん。わっ……これって、ボエルは皇帝の近衛騎士に大出世じゃん。めっちゃ離されたな」
「「「「「うらやましぃぃ~~~!!」」」」」
護衛騎士がそんな顔をするから、フィリップのイジリ。実際問題、全てフィリップの言った通りなので、護衛騎士はしばらく立ち直れないのであった。
「そんなに僕はイヤか……」
「プーちゃんがからかうからでしょ」
「今までの行動が全て悪いのよ」
護衛騎士がなかなか立ち直らないので、フィリップも地味にダメージを喰らい、カイサとオーセの言葉には大ダメージを受けたのであったとさ。
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