【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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おまけ クーデター後のお話

126 説明2 フレドリクの場合

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 フィリップのクーデター成功から1週間。エステルからババチビルほど怒られたフィリップは、夜遊びもせずにバリバリ働いている。
 夜は見張りが3人もベッドの中にいるから逃げられないともいう。それなりに楽しんでるみたいだけど……

 今日のフィリップは執務室で書類仕事に精を出していたら、フレドリクが書類を抱えて入って来た。

「フィリップ。ちょっといいか?」
「う~ん? 2分待って。もう終わるから」
「わかった」

 フレドリクはソファー席に座り、書類を見やすいように並べてフィリップを眺める。
 ちなみにフィリップのことを敬称で呼ばないのは、フィリップが嫌がったから。ただ、人の目がある時はフレドリクが譲らなかったので、外では家臣として振る舞っている。

 フレドリクは書類に目を通して待っていたら、予定の2分でフィリップは書類を書き終え、ソファーに飛び込んだ。

「それでどしたの?」
「議員制移行の書類だ。サインをしたら、1週間後には移行できるぞ」
「おお~。はやっ。さすが兄貴~」
「早いのはフィリップのおかげでもあるがな。いちおう目を通すんだぞ?」
「あっ、敵対勢力の長が作った書類だった。危ない危ない」
「もうそれはやめてくれ」

 フィリップがすぐにサインをしようとしたので、フレドリクはよかれと思って止めたのに、敵対勢力扱い。これはフィリップの冗談だけど、1週間前まで皇帝だったフレドリクには耳の痛い冗談なのだ。

「フフッ……」

 それからフィリップが大事な場所だけを飛ばし飛ばし読んでいたら、フレドリクが小さく笑った。

「なに~? ちゃんと読んでるでしょ~??」
「いや、フィリップが働いているところを初めて見たからな。こんなにできるのだと驚いたのだ」
「驚いたなら、笑うのおかしくな~い?」
「それはすまない。父上が見たらどう思うか想像したら笑いが漏れたのだ」

 フィリップは不機嫌な顔でサラサラッとサインしたらフレドリクに視線を戻す。

「父上なら知ってるよ?」
「そうなのか??」
「ほら? 兄貴がハネムーン行ってる間に、僕が手伝っていたのは知ってるでしょ?」
「あの時か? そういえば、帰って来たら、山積みだった仕事が全て消化されていた……」
「そゆこと。僕の仕事が早いからって、宰相が大量の書類回して来るから大変だったんだよ。計算器も、僕が楽しようと使っていたら大事おおごとにされたの」
「計算器もフィリップが作ったのか!?」

 フレドリクは仕事についてはすぐに納得いったが、ソロバンの発明者は父親じゃなかったことにはビックリだ。

「そそ。その権利もお父さんにあげたから、笑うことなく褒めてくれたよ。まぁ裏では何か言ってたみたいだけど……近々宰相が戻って来るし、そのとき聞いてみたら? あ、クビにしたこと根に持ってたから、謝るんだよ~?」
「ああ……コンラード・シュティークリッツ侯爵だな」

 後日談だが、コンラードとフィリップは水と油だったので、フレドリクに「陛下、仕事は早いけど昼になったら必ず寝るから追い出していた」と告げ口されたんだとか。
 ただ、太上皇は終始フィリップを褒めて馬鹿笑いまでしていたから、そんな一面があったのかとフレドリクはかなり驚いたそうだ。


 フィリップがサインした書類をまとめたフレドリクは、まだ時間があるかと確認してから気になっていることを質問する。

「フィリップは、どうしてこんなに事後処理が手慣れているのだ?」

 そう。フィリップは戦後処理が異様に早いからだ。

「一度経験あるもん。だからだよ」
「経験してる? そんなワケは……いや、カールスタード王国か??」
「気持ち悪っ。なんでわかったの?」
「帝国以外で大きな政変があったのはそこだけだからだ。その時期にフィリップがいたのだから、容易に答えに行き着く」
「それが気持ち悪いんだよ~」

 たった一言のヒントでカールスタード王国が出て来たんだから、フレドリクが天才すぎてフィリップも吐きそうだ。

「女王と親交があったのか?」
「うん。お父さんにも死ぬ前に教えてあげたんだけど、クリちゃんの体と引き換えにクーデターを手伝ってあげたの。ほぼ僕が1人でやってたけどね~」
「女王の体をもてあそんだのか……父上はなんと言っていた?」
「呆れてたね」
「だろうな。はぁ~……」
「あ、でも、その他は楽しそうに聞いてたよ?」

 カールスタード王国の話は長くなりそうなので、クーデターの話を掻い摘まんで聞いたフレドリク。残りは時間ができたら聞くそうだ。

「それとなのだが、議員制や州政といった数々の新しい制度……これらは全てフィリップが1人で考えたことなのか?」
「議員制はどっかでやってる国があった……ま、兄貴にならいっか」
「??」

 フィリップは嘘で煙に巻こうと考えたが、もう嘘をつく必要はないし、これからのことを考えたらフレドリクの力は必要だからぶっちゃけてしまう。

「僕、前世の記憶があるの」
「前世? 前世というと20年以上前に生きた人間ということか?」
「あぁ~……普通はそう考えるか。う~んとね。いまから200年先の未来からやって来たと言ったほうが早いかも? 技術も制度も進化した感じね」
「まぁ200年も経てば、いまの世界は様変わりしているだろうな。想像もできないが……」
「あはは。今まではでしょ? 兄貴なら想像したら思い描けるよ。空が隠れるほどの建造物の森、その空を自由に飛ぶ乗り物、人々は家から動かなくても海の向こうの人とだって繋がれる。そんな世界で死んだのが、この僕ってことね」

 フレドリクはしばし考えてから顔を上げると、まるで何かを見上げるようにキョロキョロとした。

「その顔……想像できた?」
「ああ。建物だけだが……どれだけの人件費が掛かるのか……途方もない額だ」
「アハハ。手作業なワケないじゃん。人間の何百倍も力を出せる機械を操縦して作るんだよ」
「そ、そうだな。そんな世界ならあっても不思議じゃない。いや、作ったから高層建造物が可能なのか」
「天才は話が早すぎて怖いわ~」

 フィリップはそんなことを言いながら、執務机を漁って設計図のような物を持って来て広げた。

「これは……乗り物か?」
「うん。ま、車輪が付いてたら誰でもわかるか」
「何百人と運べそうだが、こんなに大きくて長い物をどうやって動かすのだ?」
「そこがネックなのよね~」

 フィリップは機関部の設計図を上に乗せて広げる。

「城の給湯器ってあるじゃない? アレを大きくして、その湯気で歯車を回すって感じね。まだ構想段階だからこれで動くかどうか、やってみないとわかんないの」
「なるほど。蒸気で動かすのか……かなりの熱が必要になるな……」

 そう。フィリップが広げた設計図は蒸気機関車。フィリップも見よう見マネで書いているから、天才のアドバイスが欲しいから前世をカミングアウトしたのだ。

「これが大陸中を走り回る姿を想像したら、凄くな~い?」
「あ、ああ……大陸中? 帝国だけで使う物ではないのか??」
「こんな凄い物、独り占めしてどうすんの? 僕の予想だと、大陸の端から端まで1日もあれば到着する。つまり、大陸中の商品を帝都に1日で届けられるってこと」
「それはまた凄い話だな。流通も人々の動きもまったく変わる……」

 フィリップはパチンっと指を鳴らした。

「いま言った流通! 大陸中に線路を張り巡らせ、流通を帝国が支配して大陸を制覇するの。これなら初代様の夢も、血を流さず叶うと思わな~い?」
「未来では力で土地を奪うのは古いと言うことか。確かにこの方法なら他国も欲しがって、一滴も血を流さず土地を明け渡してくれそうだ。大陸を制覇したと言っても過言じゃないな」
「ね~? まずは帝都からダンマーク辺境伯領まで繋げるよ! 兄貴も協力してね~?」

 フィリップが右手を差し出すと、フレドリクはガッシリ……

「ダンマーク辺境伯領……他ではダメなのか?」
「もう! なんでまだえっちゃんを毛嫌いするんだよ~~~」

 握手はナシ。まだまだ物語の強制力が残っているフレドリクであったとさ。
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