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おまけ クーデター後のお話
128 説明4 ボエル、リネーアの場合
しおりを挟むフィリップの知人女性にカミングアウトしてみたら、2人目のダグマーの話を聞くだけで全員ぐったり。休憩を挟んで、次は怒りの表情のボエルだ。
このボエルとは背が高い男っぽい女性。13歳から15歳に専属メイドをしていて性同一性障害だとフィリップが教えたのに、テスト勉強するのと引き換えに体の関係となった。最低な理由だけど、ボエルもハマっていたから許してあげて。
「ずっと騙してやがったのか……」
そりゃフィリップは馬鹿で運動オンチを演じていたのだから、前の2人の話を聞いていたら怒るに決まってる。
「だから最初に謝ったじゃ~ん」
「そんなんで足りるか! オレはテストの度に、いつクビになるかとビクビクしてたんだぞ!」
「だからお父さんにはいい点数のほうを見せてたんだよ~。あ、これ、お父さんに見せてた問題用紙」
「どこからこんなに出て来るんだよ!?」
フィリップがドバドバ~ッと紙を出すから、ボエルの怒りはそっちに行った。間違えたね。とりあえずアイテムボックスのことを教えたら、ボエルは問題用紙をよく見る。
「これ、全部合っていたとしても60点ぐらいだぞ? これでフレドリク殿下に勝てるとは思えねぇな~」
「ボエルはバカだな~。僕が賢いのお父さんにも隠してたから、怒られないギリギリのラインにしてたんだよ。5年生の後半はもっと点数高いよ? てか、その程度、100点取るの簡単だから、お父さんを騙すほうが疲れたぐらいだよ」
「殿下にバカって言われた!?」
「ほら、これ、90点~」
今までバカと言われていた人間の大逆転。フィリップはわざと点数が高い用紙を見せてボエルをからかいまくる。
「うるせぇ! 剣はどうなんだよ!? あんなヒョロヒョロの剣で、フレドリク殿下に勝てるワケないだろ!!」
「だからね。ずっと強いって言ってんじゃん。兄貴たち、ダンジョン攻略者が束になっても僕に適わなかったんだよ~? 辺境伯もそう言ってたでしょ??」
「どうせそれも嘘なんだろ? 勝者はなんとでも言えるからな」
「辺境伯にチクってやろっかな~? ……なんてね。ちょっと見せてあげるよ」
フィリップは再びどこからともなく剣を二本取り出したら、ボエルに手渡して自分は鞘から抜いた。
「真剣じゃねえか!?」
「構えないと死ぬよ~?」
「陛下に当たったらどうすんだ!?」
「はい、死んだ~」
「うっ……」
ボエルが構えもしないでうるさいからって、フィリップは不意打ち。しかしボエルは気付いたら剣の刃が目の前にあったから、フィリップの言ってる意味がわからない。
「な、何をしやがった……」
「普通に振っただけだよ? ダグマー? 見えた~??」
「辛うじて、線が見えただけです……」
「だって?」
「嘘だろ……オレも離れて見ていいか?」
「好きにしなよ」
フィリップはボエルのために、剣の素振り。本気は目にも映らないので、半分の速度で素振りをしたけど、ボエルとダグマーはやっと目で追える程度らしい。
「ホントに速い……てか、右で振ってるじゃん!?」
「本当は右利きなの~。ゴメ~ンちゃい」
「どんだけ噓ついてんだよ! アレは!? 熱出てたのは!?」
「魔法で体温上げてただけなの~。ゴメ~ンちゃい」
「うが~! それやめろ~~~!!」
フィリップがかわいく謝っているのに、ボエルは激怒。自分の得意分野でもフィリップは遙か上にいたからムカついて仕方がないんだって。
「まだなんか、からかうことあったかな……」
ボエルの質問が止まったからフィリップは考える仕草をしたが、目的が変わってるね。
「やっぱ、謝るつもりねぇな……」
「謝る気持ちはあるんだよ? でも、ボエルが面白いから~」
「次! 次いけ。もうオレはいいだろ!!」
「ダンジョンのドラゴンを1人で倒した話とかは? 今度、一緒に行く??」
「え? マジで??」
チョロいボエル。ドラゴンと聞いてヨダレを垂らしたが、フィリップが仮病を使ってフレドリクパーティをストーキングしていたのでやっぱり怒ってた。
「だからあの時、朝から晩までいなかったんだな……」
「アレは大変だったな~。毎日1階から兄貴を追いかけるんだよ? ボエルがいなかったらよかったと何度思ったか」
「そんな危ないとこ行くなよ! 毎度バレないかとヒヤヒヤしてたんだからな!?」
「ゴメ~ンちゃい」
「それやめろ!!」
ちょっとボエルをからかい過ぎたとフィリップも反省。皆もかわいそうな目でヒソヒソ喋っているから質問者はチェンジだ。
次はリネーア。帝都学院の同級生で、とある貴族令息から愛玩奴隷のような扱いをされていたのをフィリップが救った女性。男性恐怖症になっていたから、ショック療法でフィリップが抱いた。これも酷い話だな。
「リネーア嬢には本気で謝ることがあるの」
「はあ……」
さっきまでと打って変わってフィリップが真面目な顔をするが、一同「どうせまたからかおうとしてんだろ?」と疑った目だ。
「あまり思い出させたくないんだけど、死んだアイツら。全員、僕が殺した」
「え……」
「仇討ちしたのは僕なんだ。黙っていてゴメンなさい」
このカミングアウトは、ほとんどの人は意味がわかっていない。しかしリネーアが涙を見せたから何も言えなかった。
「グスッ。謝罪は必要ありません。そんな気はしていましたので……全て、殿下が1人でやってくださったのですね。ありがとうございます。ありがとうございます……」
「ゴメンね。思い出させて……」
泣きながら感謝するリネーアを優しく抱き締めるフィリップ。しばらくリネーアの泣きじゃくる声だけがこの部屋に聞こえるだけであった……
「てかよ~……」
リネーアが泣きやんだ頃に静寂を打ち破ったのは、もう1人の当事者ボエルだ。
「殺害現場は他の町だったのは、どうやったんだ?」
「そんなの走ったらすぐだよ」
「馬でも半日掛かる距離がすぐだと?」
「うん。30分で着いたよ。ボエルだと馬と同じぐらいで着くんじゃないかな~?」
「ありえない……」
「ありえないんじゃなくて、やろうとしないからできないんだよ。今度、試してみな。レベル30ある人なら、馬なんて乗らなくても隣町ぐらいなら1日で往復できちゃうって」
ここまで喋ったのだから、フィリップはついでにカミングアウトしちゃう。
「そうそう。ボエルの前の侍女、名前、なんだっけな? そいつの父親を殺したのは僕なんだよね~」
「はい?」
「あと、世界最高の暗殺者と雇い主、100人の元騎士を殺したのも僕」
「「「「「はあ?」」」」」
「レンネンガンプ侯爵もやっちゃった。えへ」
「「「「「はあ~~~??」」」」」
このカミングアウトは、大紛糾。謎多き大貴族暗殺事件の犯人がてへぺろしているので、皆は怒りながらフィリップに詰め寄るのであったとさ。
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