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おまけ クーデター後のお話
133 大陸制覇開始
しおりを挟むフィリップが皇帝になってから2年……大事件が起きた。
「やっぱり悪役令嬢なんかと手を組むんじゃなかった~~~~~~……」
そう。エステルの策略で、大陸制覇のお膳立てが全て完了していたのだ。
帝都、帝国中がお祭り騒ぎになっていては後には引けない。フィリップは2人目御懐妊の喜びは吹き飛ばされ、あれよあれよと出陣式やお別れ会、夜の街のお別れ会もやらされて、ポイッと蒸気機関車に放り込まれた。
「ううぅぅ~……何がどうなってんだよ~~~」
蒸気機関車が煙を吐き出しながら進むなか、フィリップはいまだについていけてないみたい。昨夜はエステルではなくキャロリーナと今生の別れみたいな激しいことをしておいて、それはないわ~。
「てか、ラーシュ君……なんでこのこと報告してないの!?」
この怒鳴られたラーシュという背の高い細マッチョの美男子は、フィリップとはカールスタード王国で共に勉学に励んだ親友……ではなく、そのことすら忘れられていたかわいそうな人。
クーデターの際には、フィリップの手駒になりペトロネラと協力して全ての公爵家をまとめた功労者で、その後、議員になった人物だ。
議員といっても、役割はフィリップのスパイ。他の議員だけではなく、フレドリクが何かやらかさないかと見張らせていたのだ。
「皇后陛下から皇帝陛下の命令と聞きましたので……」
「僕がこんな命令するわけないじゃん!」
「はい。そう思いましたよ? でも、陛下はやる気がないからと説得されまして……」
「説得されるなよ!?」
「ですね。皆もやる気満々だったから説得が楽で……」
「お前まで説得してるじゃん!?」
知らなかったのはフィリップだけ。そもそも議会にも出ないで遊び歩いているのが悪い。議会の報告もフレドリクとラーシュからしか得ていなかったので、情報を制限されたら一巻の終わりだったのだ。
出陣前にフレドリクが「だからエステルなんかと結婚するなと言ったのに」と、フィリップの考えた大陸制覇計画をご破算にされたことを非難してたよ。
ちなみにエステルはフレドリクの役割を知っていたから、バレないように細心の注意を払って今日の日を迎えたのだ。あと、実父のホーコンは口が軽そうだから、直前まで秘密にしたらしい……
「てかさ~。ラーシュ君、キミまでなんで暗黒騎士団に入隊してんの?」
「いや~。副官なら外交もできる私しかいないと思って立候補しちゃいました。強くなりましたよ~?」
「そんなこと聞いてないんだよ!? 僕が任せた仕事はどうなってんのって聞いてんの!! この半年ぐらい、嘘の報告してたのか!?」
「いえ。ステファンに逐一報告を上げさせていましたので、正確な報告です。彼なら陛下に絶対服従ですから裏切りませんからね」
「……誰だっけ? そいつ……」
「また忘れてる!?」
ステファンとは、フレドリクが貴族を締め付けるような政策をやり始めた頃からフィリップの手足となって動いていた人物。
クーデターの際にはラーシュたち公爵家の手足となって働いてくれたから、フィリップもその功績を認めて、褒美に州の長にならないかと打診した。
しかし、フィリップの近くで働きたいと辞退した奇特な人物なのに忘れられたかわいそうな人だ。ちなみにラーシュも忘れられた経験があるから、痛いほど気持ちがわかるらしい……
「もういいです。暗黒騎士団のメンバーを紹介します」
説教していたらフィリップは「大陸制覇やめる~」とかゴネ出したので、ラーシュは話題を一気に変えた。
「そんなのいいよ~。どうせ使えないんでしょ?」
でも、フィリップは聞く気ナシだ。
「オイオイオイオイ。誰が使えねぇって~?」
その時、ガラの悪い男が絡んで来た。
「あら、ボエル……何してんの??」
いや、女性でした。まぁ心は男だから、ガラの悪い男でいっか。
「陛下のためにみんなダンジョンで鍛えて来たんだぞ? ちったぁ感謝しろよ」
「えぇ~。僕、戦争なんてやりたくないんだも~ん」
「はい? 陛下の命令って聞いたんだけど……」
「僕、えっちゃんにハメられたの~。知ったの2日前だよ? 酷くな~い??」
「「「「「はあ~~~??」」」」」
暗黒騎士団、出発直後にその名の通り自分たちに暗闇が押し寄せる。皇帝が息巻いて大陸制覇をすると聞いていたから頑張ってレベル上げしたのに、ハメられてやる気がないと知ったのだから、士気がだだ下がりするのであったとさ。
蒸気機関車は暗い表情の暗黒騎士団を乗せてひた走り、ダンマーク辺境伯領に着いたのは夕方頃。ここではダンマーク辺境伯一家が歓待の宴を開き、暗黒騎士団は英気を養う。
フィリップは……エステルがいないからチャンスだからって、ボエルや自分の根城を守ってくれていた護衛騎士たちを誘って娼館に行ってた……
次の日、フィリップは暗黒騎士団を整列させ、その前に置いた高い台に登った。背が低いからね。
「えぇ~……大陸制覇して帰らないと皇后様が家に入れてくれないから、さっさと終わらせて帰るよ~?」
暗黒騎士団は「そんな理由で?」とザワザワしてるよ。
「いま、2ヶ国の王様を呼び出してるから、それまで訓練ね。あと、僕、運動不足だからちょっと手伝って。剣を持つのは久し振りだな~」
「「「「「はあ……」」」」」
暗黒騎士団は全員「これ、大丈夫なの?」と心配になった。
「とりあえずボエルから行こうか? 僕に恨みがあるヤツからかかってこい!」
「べ、別にオレ、陛下に恨みなんて持ってねぇけど……胸を貸りさせていただきます! 積年の恨み~~~!!」
「恨んでんじゃん……」
こうしてフィリップVS暗黒騎士団の100人組手は、ボエルの恨み節から始まったのであったとさ。
「ま、こんなもんか……頑張った頑張った~」
100人組手はレベル99のフィリップの圧勝。手こずったのは、100人同時に相手取った時ぐらいだ。
「でも、モブのレベル60ってのはこの程度か……いいとこイケメン4のレベル30ぐらい。兄貴のほうが遥かに強かったな……」
フィリップがブツブツ言っていたら、ブッ倒れていたボエルとラーシュがムクリと体を起こした。
「陛下はいったいどうなってんだ? こんなに強かったなんて……」
「いったい何レベルなんですか?」
「ん~? えっちゃんから聞いてないなら秘密~。ま、僕はメインキャラだからね。どうやっても超えられないよ」
「「メインキャラ??」」
「なんでもない。というか言ってもわかんないから流して。てか、同レベルの中でラーシュだけ頭ひとつ抜け出しているのは謎だな……」
フィリップがまた独り言に戻ったけど、褒められたラーシュは嬉しそうにして、ボエルは落胆だ。
「やっぱり、ラーシュは次作のメインキャラなのか? ブンテレンジャーと共にクリちゃんを助ける役割があったのかも……」
フィリップはラーシュの強さに答えを見出したら、暗黒騎士団をまた整列させた。
「もう休憩は大丈夫かな~?」
「「「「「はっ!」」」」」
フィリップ1人にボコボコにされたのだから、暗黒騎士団は従順。皇帝がこんなに強いのだから、士気も爆上げだ。
「んじゃ、準備運動は終了」
「「「「「はっ! ……はい??」」」」」
「さあ、僕の本気を受けてみろ! わ~はっはっはっはっはっはっ」
「「「「「ま、魔王……」」」」」
でも、ファフニールソードを握ったフィリップを見ただけでガクブルだ。
「「「「「うわ~~~!!」」」」」
「コラッ! 逃げるな~~~!!」
こうしてビビって逃げ惑う暗黒騎士団を追いかけ回すフィリップであったとさ。
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