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おまけ クーデター後のお話
139 夢か現か・・・
しおりを挟むフィリップが大陸制覇を果たして凱旋すると、帝国はお祭り騒ぎ。その声に応えるために、蒸気機関車は速度を落として帝都に向かう。
およそ3日を掛けて帝都に着くと、ここでも大歓声で出迎えられる。準備されていたオープン馬車に乗り、フィリップは手を振ってアピールだ。
そうして城に到着したら、家臣一同のお出迎え。万雷の拍手のなか、フィリップは飛び下りて、お腹が大きくなっているエステルに駆け寄った。
「えっちゃ~ん。ただいま~」
「え、ええ……おかえりなさいまし……」
「え? 何その反応……大陸制覇して来たのに嬉しくてないの??」
「嬉しいのですが……早すぎですわ!!」
現在はフィリップが出陣してから半年ちょっと。家臣の何人かはエステルと同じ気持ちなのかウンウン頷いてるよ。
「えぇ~。急がないと赤ちゃん産まれちゃうじゃ~ん」
「その気持ちは嬉しいですわ。でも、本当に制覇して来たのですの?」
「したした。王様のサインもらって来た。マジでマジで」
「その言い方が……はぁ~」
「あ、疲れたんじゃない? 中入ろっか??」
「そうですわね。陛下と喋っていたら疲れますわ」
こうしてエステルが無茶振りしたのに、フィリップは邪険に扱われるのであったとさ。
それからのフィリップはさすがに忙しい。育児に夜遊びにたまに仕事。仕事はカラフル王子に押し付けて遊び放題だ。このために連れて帰って来たらしい……
そんなことをしていたら月日が流れ、1年後の年末、東西を走る蒸気機関車の線路が大陸の端から端まで繋がった頃に、各国からの超VIPが帝都に集まって来た。
「「「「「はは~」」」」」
「よきにはからえ~」
今日は各国の君主が勢揃いする日。つまり、本格的にこの大陸が、帝国に統一されためでたい日だ。
今まで跪いたこともない君主たちが畏まって跪くなか、フィリップは玉座に座って扇を仰ぐ。それはどう考えても将軍様だ。参勤交代のつもりか?
フィリップだけがふざけた式典が終了したら、豪華絢爛なパーティー。ここはエステルがうるさいから、フィリップも挨拶回りに連れ回されている。
「あ、クリちゃんだ~。元気だった?」
「ええ。陛下も相変わらずですね」
「そりゃそうだよ。てか、列車の旅とか帝都の町並みとかどうだった?」
「蒸気機関車、本当に速くて快適でした。早くカールスタード王国にも走らせてくださいよ~」
「いま絶賛生産中だから、もうちょっと待って。今回、そのことも話し合うからね~」
ここでフィリップは長話をしていたら、エステルが腕をグイグイ引っ張った。
「他の君主たちとは短時間しか話さなかったのに長すぎですわ」
「ちょっと待ってよ~。あ、紹介しなきゃ。この怖かわいいオッパイ大きい人が、僕のハニーね」
「もう少し言い方はないですの?」
「こっちの優しい顔のオッパイ大きい人は、子供の頃に出会ったクリスティーネ女王様だよ」
「もうちょっとまともな紹介してください」
フィリップが顔と胸を強調して紹介するので、2人はオコ。フィリップは逃げるように2人の前に立つと、両指で四角を作って2人の上半身をその中に収めた。
「うん……絵になる2人だ。ザ、悪役令嬢と聖女様って感じ。続編はこの2人でバチバチやってほしかったな~」
「なんでわたくしが、二度も馬鹿な聖女とやりあわないといけないのですの?」
「なんの話ですか? 皇后様とケンカなんかしませんよ?」
「こっちの話~。もう乙女ゲームは懲り懲りだから、仲良くするんだよ~?」
こうして乙女ゲームの中に異世界転生したフィリップは、新旧メインキャラを前に乙女ゲーム卒業を誓うのであった……
「まさか2人とも体の関係はありませんことよね?」
「そ、それは……」
「………」
「この泥棒猫が……」
「違います違います! フィリップが子供の頃の話ですよ!? フィリップも何か言ってくださ~~~い!!」
いや、悪役令嬢とヒロインはいつまでもわかりあえないのであったとさ。
20XX年、東京……
とあるオフィスビルでは、新作ゲーム完成に心を躍らせている人々がいた。
「社長、ついにリリースされましたね」
「ああ……苦節10年。前作が好評だったのに資金がショートして、次作が遅れに遅れてしまったが、やっとだ……」
「私もあの当時描いた子たちが生き返ったようで嬉しいです……」
社長とデザイナーは、これまでの苦労話で盛り上がっている。
「このカールスタード王国編に出て来るクリスティーネのキャラデザ、やっぱりエステルが元なのか?」
「まぁ……あの子には悪いことしてしまったので、優しい子に生まれ変わらせたみたいな? 使い回しでゴメンなさい」
「いやいや。エステルといえば、前作の女性キャラの中で一番人気のキャラなんだから、ユーザーも喜ぶって。もちろん俺もだ。この戦隊物の王子たちもいいよな~」
「その無茶振り、苦労したんですよ~。でも、彼らのおかげで男性でも気軽に乙女ゲームを楽しめそうですね」
そうして新作ゲームの話に花を咲かせていたら、オフィスの電話が一斉に鳴り出したので、スタッフ全員があたふたと対応に駆り出された。
「はあ? 王子たちと出会う前にヒロインが女王になってるだと!?」
不具合だ。それもストーリーが大きく違う、ありえない不具合だ。
「ハッキング! ハッキングされてるんじゃないですか!?」
「かもしれない……ストーリーを全て書き換えられている……」
社長が力が抜けてドサッと椅子に腰を落としたと同時に、スタッフから違う情報が入った。
「前作もおかしいです! 逆ハーレムルートしかできないと苦情が殺到しています!!」
「なんだと~~~!!」
さらにバットニュース。オフィスは大混乱に陥るのであった。
それから24時間、寝る間もなく原因を探したスタッフは、社長を呼んでプログラム画面とゲームの画面を同時に見せた。
「このコード、フィリップのコードなんですが、悪役令嬢が出るシーンにフィリップのコードが必ずあるんです」
「フィリップといえば、追加キャラだったよな? 逆ハーレムルートにも出て来るから、そんなモノじゃないのか??」
「いえ。バイトにやらせたら、逆ハーレムルートにはフィリップが出て来ないんです。それなのに、最終学年のどのシーンにもフィリップが見切れているんですよ!」
「はあ~~~??」
一からやってみてバイトもビックリ。フィリップがいつもニヤニヤ見てるもん。プログラムもフィリップだらけなので、スタッフもビックリだ。
「な、直せるよな?」
「それが不思議なことに、コードを書き換えても元に戻るんです……」
「なんでだ!? ウィルスに感染したんじゃないか!?」
フィリップウィルス、強力。続編にもフィリップウィルスが侵入していて、クリスティーネがたまに、フィリップに感謝したり会いたいようなことを呟いているから、ますますワケがわからなくなるスタッフ一同。
そんな中、緊急事態だと原作者からヒステリックな声の電話が掛かって来た。
「先生、すいません。ただいま復旧作業を急いでいまして……」
「なんの話をしているのですか!? そんなことよりも話を聞いてください!!」
「お怒りなのは重々承知して……」
「ですから! フィリップが私の書いた次作のシナリオを全て消したんですよ!!」
「……はい??」
社長が詳しく聞いたところ、朝にファイルを開いたらまったく違う文章が書かれていたんだとか。クラウドにも保存していたからそちらも開いたら同じ文章。
原作者はせっかく書いた文章が消えていたから怒り狂い、そのファイルを全て消したけど、削除しても削除しても浮かび上がったとのこと。
ならばファイルを開いて全ての文章をデリートしてやったら、1文字ずつ文字が復活したから原作者も飛び跳ねて逃げ出したんだって。
「そ、それ、こちらに送ってもらっても?」
「の、呪われても知りませんよ? いや、受け取ってください! 私の呪いは消えるかも知れませんから!!」
「そんなこと言わないでくださいよ~~~」
現在オフィス内もフィリップの呪いが蔓延中。社長も怖くて受け取りたくないが、ゲームを直すためには背に腹は代えられぬ。
原作者からファイルを送ってもらい、怖いからって数人のスタッフと一緒にファイルを開いた。
「ふ、普通の文章だよな?」
「はい……でも、なんで??」
ひとまず社長たちは、原作者から送ってもらった物語を読み進めるのであった……
ザー……ザー……と、波の音から始まる物語。鳥の目線で遠くにある船を捉えると、徐々にその全貌が明らかになる。
それは蒸気船。黒光りする船は煙を吐き出して大海原を行く。そして鳥の目が甲板を捉え、船首に移動すると、そこには海賊帽子を被った男の子がサーベルを掲げて立っていた。
「ヨーソロ~! 面舵いっぱ~い! 僕は海賊王になる! 次は七つの海を制覇するぞ~! なんつって。アハハハハハ」
こうしてフィリップの物語は、船に乗ったら言ってみたいセリフを全て詰め込んで、新しい船出となるのであった……
続 く
いやいや嘘です。続きません! すいません!!
おしまい
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