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一章 引きこもり皇子、他所の家に寄生する
004 秘密の暴露
しおりを挟む第二皇子が悪役令嬢と手を組んだからには、ここに来た理由を語らねばならない。ひとまず人払いをして、フィリップはエステルの隣に座って小声で喋る。
「いまから驚くことを言うよ。心して聞いてね」
「はい……」
エステルはある程度の予想をしているので、そこまで秘密裏にしなくてもいいと思っている。
「あいつらは、奴隷制度を廃止しようとしている」
「なんですって!?」
「声がデカイ!!」
しかし、思っていたことより倍以上ひどい話であったので驚きを隠せなかった。
「失礼しました……しかし、誰の発案なのですの?」
「聖女ちゃんだよ」
「あの女、帝国を破壊するつもりですの……」
「僕も同じことを思った……」
元のコソコソ話に戻ったが、あまりのことでお通夜状態。およそ1分後に、エステルから再起動した。
「どうして止めなかったのですの?」
「さすがに黙ってられなくて、説得したよ。でも、聖女ちゃんが……あいつが関わると、兄貴は聞く耳持たなくなるのは知ってるでしょ?」
「ええ。痛いほど身に染みていますわ。でも……」
「でも??」
「これって、泥船じゃありませんこと?」
「おお~い。手を組んだ瞬間に逃げようとするなよ~」
奴隷解放を皇帝が宣言したあとに行動開始となるのだから、例えクーデターが成功しても帝国が瀕死の重傷は免れられない。なので、エステルがフィリップの船に乗るのを躊躇しても仕方がない。
「何か策はお持ちなのですよね?」
「まぁなくはないけど、二度手間になるから、この話は辺境伯が戻ってからね。念のためお前も何か考えておいてよ」
「わかりましたわ。でも、そのお前というのはやめてくれませんこと?」
「あ~……なんて呼べばいい?」
エステルは口に右手を持って行く。
「そうですわね……フィアンセですから愛称の……やはり、殿下がお決めになってくださいませ」
「え~。僕、そういうの苦手なんだけど~?」
「なんでもよろしくてよ」
「じゃあ……えっちゃん……」
「変わった愛称ですわね……初めて呼ばれましたわ。では、それでいきましょう」
「え? マジで??」
「はい」
フィリップが適当に呼んだそれが、エステルの愛称に決定。ただし、フィリップは適当すぎたので、これでよかったのかと悩むのであった。
それからエステルは仕事に戻ると言っていたので、フィリップは用意してもらった部屋で夜まで爆睡。ウッラが食事ができたと呼びに来たので、食堂にて再びエステルと顔を合わせた。
「こんな時間によく寝れますわね」
「ま、僕の特技みたいなものだ」
「だから『やる気なし皇子』とか呼ばれますのよ」
「そのほうが都合がいいかと思ってたんだけどね~」
「都合がいいとは?」
「派閥とか作られたら面倒でしょ」
「つまり、わざと怠けていたと?」
「それそれ。わざとわざと」
「……本当ですの??」
「ホントホント」
エステルが追及すればするほど嘘っぽく聞こえる。これでは奴隷解放対策に用意している策もたいしたことがないと察して、エステルは自分が完璧な策を用意しないといけないと心に誓うのであった。
夕食を終えると、今日はお開き。エステルは仕事部屋に隠って、フィリップは与えられた客室に戻る。フィリップはベッドに飛び込むと寝てしまおうとウツラウツラしていたら、ドアがゆっくりと開いた。
「ん~? ウッラちゃんか。なんか用?」
フィリップが寝惚け眼を擦りながら体を起こすと、ウッラはベッドの傍まで来て服を脱ぎ出した。
「ちょっ!? 何してるの!?」
「よ、夜伽のお相手を、つ、務めさせて、いいただきますす」
フィリップが焦っているのに、ウッラは震える声でそんなことを述べ、涙目でまた服を1枚脱ぐ。
「誰がそんなことを頼んだの!」
「エステル様が……で、殿下を楽しませるようにと……」
「あいつか……やめろ。不愉快だ」
「え……」
「夜伽の相手なんてしなくていいと言ってるんだよ」
「わ、私ではダメなんでしょうか……」
フィリップは不機嫌そうな顔でベッドから下りる。
「無理しないで。イヤなんでしょ?」
「い、いえ……」
「僕は泣いてる女の子を抱くの嫌いだ。ちょっとえっちゃんのところに行って来るから、服を着ておくんだ」
それだけ告げるとフィリップは足早に部屋を出る。その瞬間、緊張から解放されたウッラは崩れ落ちるのであった。
「キャーーー!!」
「あ、ゴメン。えっちゃんって、どこにいるの?」
服を着る前に戻って来たので、ウッラは悲鳴をあげるのであったとさ。
場所がわからないことにはエステルに苦情も言えないので、ウッラが服を着るのを待って案内させる。
そしてフィリップは仕事部屋のドアを乱暴に開けて入った。
「これはどういうこと?」
「なんのことですの?」
「この子にムリヤリ夜伽の相手をさせようとしたでしょ!」
「ああ~……」
フィリップが怒っているので、エステルは言葉を探す。
「城では2人の幼女を囲っていると聞きましたので、必要かと思いまして。一番若い女を用意したつもりでしたが、もっと下じゃないと興奮しないのですわね」
「ちげぇよ! 僕は同意の上じゃないとやらないんだよ!!」
「聞いていた情報とは違いますわね……」
「それ、城の中の噂でしょ? 幼い子を襲うことが趣味とか……」
「確かな筋からの情報でしたので勘違いしておりましたわ。心から謝罪いたします」
エステルが深々と頭を下げるので、フィリップもこの件は終わりとするが、まだ言うことはあるらしい。
「あと、僕に仕えている2人は幼女じゃないよ?」
「そうなのですの? 殿下より小さな女の子と聞いていたのですが……」
「2人とも、僕より年上だ」
「はい??」
「僕が背が低いから連れて歩くにはちょうどいいから、町中でスカウトしただけだよ」
「それはまた、大変でしたわね……」
「いま、僕のこと上から下に舐めるよう見たでしょ? 背が低くて悪うございましたね!」
こうしてフィリップは、プリプリ怒りながら退室したのであった。
「気にしてらしたのね……ウフフフフ」
嫌味が通じないフィリップのいいネタを掴んだエステルは、悪い笑みを浮かべるのであったとさ。
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