【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
4 / 142
一章 引きこもり皇子、他所の家に寄生する

004 秘密の暴露

しおりを挟む

 第二皇子が悪役令嬢と手を組んだからには、ここに来た理由を語らねばならない。ひとまず人払いをして、フィリップはエステルの隣に座って小声で喋る。

「いまから驚くことを言うよ。心して聞いてね」
「はい……」

 エステルはある程度の予想をしているので、そこまで秘密裏にしなくてもいいと思っている。

「あいつらは、奴隷制度を廃止しようとしている」
「なんですって!?」
「声がデカイ!!」

 しかし、思っていたことより倍以上ひどい話であったので驚きを隠せなかった。

「失礼しました……しかし、誰の発案なのですの?」
「聖女ちゃんだよ」
「あの女、帝国を破壊するつもりですの……」
「僕も同じことを思った……」

 元のコソコソ話に戻ったが、あまりのことでお通夜状態。およそ1分後に、エステルから再起動した。

「どうして止めなかったのですの?」
「さすがに黙ってられなくて、説得したよ。でも、聖女ちゃんが……あいつが関わると、兄貴は聞く耳持たなくなるのは知ってるでしょ?」
「ええ。痛いほど身に染みていますわ。でも……」
「でも??」
「これって、泥船じゃありませんこと?」
「おお~い。手を組んだ瞬間に逃げようとするなよ~」

 奴隷解放を皇帝が宣言したあとに行動開始となるのだから、例えクーデターが成功しても帝国が瀕死の重傷は免れられない。なので、エステルがフィリップの船に乗るのを躊躇ちゅうちょしても仕方がない。

「何か策はお持ちなのですよね?」
「まぁなくはないけど、二度手間になるから、この話は辺境伯が戻ってからね。念のためお前も何か考えておいてよ」
「わかりましたわ。でも、そのお前というのはやめてくれませんこと?」
「あ~……なんて呼べばいい?」

 エステルは口に右手を持って行く。

「そうですわね……フィアンセですから愛称の……やはり、殿下がお決めになってくださいませ」
「え~。僕、そういうの苦手なんだけど~?」
「なんでもよろしくてよ」
「じゃあ……えっちゃん……」
「変わった愛称ですわね……初めて呼ばれましたわ。では、それでいきましょう」
「え? マジで??」
「はい」

 フィリップが適当に呼んだそれが、エステルの愛称に決定。ただし、フィリップは適当すぎたので、これでよかったのかと悩むのであった。


 それからエステルは仕事に戻ると言っていたので、フィリップは用意してもらった部屋で夜まで爆睡。ウッラが食事ができたと呼びに来たので、食堂にて再びエステルと顔を合わせた。

「こんな時間によく寝れますわね」
「ま、僕の特技みたいなものだ」
「だから『やる気なし皇子』とか呼ばれますのよ」
「そのほうが都合がいいかと思ってたんだけどね~」
「都合がいいとは?」
「派閥とか作られたら面倒でしょ」
「つまり、わざとなまけていたと?」
「それそれ。わざとわざと」
「……本当ですの??」
「ホントホント」

 エステルが追及すればするほど嘘っぽく聞こえる。これでは奴隷解放対策に用意している策もたいしたことがないと察して、エステルは自分が完璧な策を用意しないといけないと心に誓うのであった。


 夕食を終えると、今日はお開き。エステルは仕事部屋に隠って、フィリップは与えられた客室に戻る。フィリップはベッドに飛び込むと寝てしまおうとウツラウツラしていたら、ドアがゆっくりと開いた。

「ん~? ウッラちゃんか。なんか用?」

 フィリップが寝惚けまなこを擦りながら体を起こすと、ウッラはベッドのそばまで来て服を脱ぎ出した。

「ちょっ!? 何してるの!?」
「よ、夜伽のお相手を、つ、務めさせて、いいただきますす」

 フィリップが焦っているのに、ウッラは震える声でそんなことを述べ、涙目でまた服を1枚脱ぐ。

「誰がそんなことを頼んだの!」
「エステル様が……で、殿下を楽しませるようにと……」
「あいつか……やめろ。不愉快だ」
「え……」
「夜伽の相手なんてしなくていいと言ってるんだよ」
「わ、私ではダメなんでしょうか……」

 フィリップは不機嫌そうな顔でベッドから下りる。

「無理しないで。イヤなんでしょ?」
「い、いえ……」
「僕は泣いてる女の子を抱くの嫌いだ。ちょっとえっちゃんのところに行って来るから、服を着ておくんだ」

 それだけ告げるとフィリップは足早に部屋を出る。その瞬間、緊張から解放されたウッラは崩れ落ちるのであった。

「キャーーー!!」
「あ、ゴメン。えっちゃんって、どこにいるの?」

 服を着る前に戻って来たので、ウッラは悲鳴をあげるのであったとさ。


 場所がわからないことにはエステルに苦情も言えないので、ウッラが服を着るのを待って案内させる。
 そしてフィリップは仕事部屋のドアを乱暴に開けて入った。

「これはどういうこと?」
「なんのことですの?」
「この子にムリヤリ夜伽の相手をさせようとしたでしょ!」
「ああ~……」

 フィリップが怒っているので、エステルは言葉を探す。

「城では2人の幼女を囲っていると聞きましたので、必要かと思いまして。一番若い女を用意したつもりでしたが、もっと下じゃないと興奮しないのですわね」
「ちげぇよ! 僕は同意の上じゃないとやらないんだよ!!」
「聞いていた情報とは違いますわね……」
「それ、城の中の噂でしょ? 幼い子を襲うことが趣味とか……」
「確かな筋からの情報でしたので勘違いしておりましたわ。心から謝罪いたします」

 エステルが深々と頭を下げるので、フィリップもこの件は終わりとするが、まだ言うことはあるらしい。

「あと、僕に仕えている2人は幼女じゃないよ?」
「そうなのですの? 殿下より小さな女の子と聞いていたのですが……」
「2人とも、僕より年上だ」
「はい??」
「僕が背が低いから連れて歩くにはちょうどいいから、町中でスカウトしただけだよ」
「それはまた、大変でしたわね……」
「いま、僕のこと上から下に舐めるよう見たでしょ? 背が低くて悪うございましたね!」

 こうしてフィリップは、プリプリ怒りながら退室したのであった。

「気にしてらしたのね……ウフフフフ」

 嫌味が通じないフィリップのいいネタを掴んだエステルは、悪い笑みを浮かべるのであったとさ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...