41 / 142
二章 引きこもり皇子、外に出る
041 ボローズ王と対面
しおりを挟む「アレかな?」
城塞都市ルレオから小一時間フィリップが西に走ると、町の影が見えて来た。そのことをおんぶしているイェルド将軍に確認を取ったが……
「は、速い……」
速度に驚いていてそれどころではない。ちなみにおんぶに変わっている理由は、イェルドが泣き付いたから。下を向いてたら酔うんだって。
こっちはこっちで、ボローズ王国の最東部にある城塞都市の近くで下ろされた瞬間に「オロオロ~」ってなってたけど。
「吐いてるところ悪いんだけど、ここでいいんだよね?」
「あ、ああ……おえ~」
「ほら。水だよ。全部出したら言ってね」
しばし休憩したら、2人で歩いて城塞都市の門へ。戦争中ということもあり人の出入りは少ないが、密偵が入り込まないように兵士が検閲をしているらしく、門の前には10人ぐらい並んでいる。
その横を通り過ぎると、フィリップは腰に差していたレイピアを抜いてあのセリフを口走る。
「僕は帝国第二皇子フィリップ! ボローズ王に一騎討ちを申し込む! いざ、尋常に勝負だ~~~!!」
そのセリフに、やっぱり一同ポカン。門を守っている兵士も並んでいる人々も、「子供がなに言ってんだ?」って顔。そして数秒後の大爆笑もお約束だ。
「な、何をするつもりだ?」
ただし、イェルドはフィリップの恐怖を知っているからあわあわ言っている。
「僕は帝国第二皇子フィリップ! ボローズ王に一騎討ちを申し込む! いざ、尋常に勝負だ~~~!!」
そんなこと言われても、フィリップは無視。イェルドの顔に気付いた兵士が喋りかけていたが、フィリップは大声を出して邪魔しまくる。
「いいかげんにしろこのガキ……ぐわっ!?」
怒りに任せて近付いた兵士は、フィリップに殴られてバタンキュー。もう1人が掴みかかって吹っ飛んだところで、兵士たちもイェルドが人質にされて、帝国が攻めて来ているのではないかと言い出した。
「も、門を閉めろ! 上にも報告だ!!」
ここで兵士は慌ただしく動き出したが、遅すぎる。フィリップはイェルドを肩に担いだら、兵士を吹っ飛ばしながら門を潜ってしまった。
「僕は帝国第二皇子フィリップ! ボローズ王に一騎討ちを申し込む! いざ、尋常に勝負だ~~~!!」
そして、町に入ったところで、このセリフ。
「いや、このまま城まで行ったほうがいいのでは? 兵士が集まって来るぞ??」
なので、イェルドもありえない助言をしちゃった。
「だったら最初から突撃してるよ。人を集めてるんだから、静かにしてろよ」
「ああ~……」
イェルド、納得。フィリップは恐怖を振り撒くために、こんな馬鹿げたことをしていると悟った。その間もフィリップは一騎討ちを申し込み、人や馬が慌ただしく動き回り、兵士に囲まれる。
兵士に囲まれたフィリップは、何人か吹っ飛ばしたらダッシュで移動。少し開けた場所でまたあのセリフを言っていたら兵士に囲まれて、吹っ飛ばしたらダッシュ。
それを住人が窓から見ていたが、「王様が一騎討ちなんて受けるのかね?」って首を捻っている人が多い。
フィリップが時間をかけて進んでいたら、この情報はボローズ王の耳にも入ったが、まずは家臣と一緒に爆笑。しかし、徐々に近付いて来ているのだから笑っている場合ではなくなって、城の前に兵士を集結させていた。
しかし、フィリップは一蹴。大きくて頑丈な門も蹴破り、ドアというドアをブチ破り、いま、まさに逃げ出そうとしていたボローズ王の部屋まで侵入したのであった……
「僕は帝国第二皇子フィリップ! ボローズ王に一騎討ちを申し込む! いざ、尋常に勝負だ~~~!!」
フィリップが言い放つと、恰幅のいい初老の男、ボローズ王を守るように5人の騎士が立ちはだかる。
「何をしておる! そんなガキ、さっさと殺してしまえ~~~!!」
ここまで恐怖を煽られたボローズ王は早くも騎士をけしかけたが、瞬く間にバタバタと倒れて、もう守る者はいなくなってしまった。
そこでフィリップは担いでいたイェルドを下ろし、どうぞどうぞという仕草をしながら、一騎討ちのセリフを通常の音量で言い続けている。
「イ、イェルド……お前がどうしてこんな所にいるんじゃ? 戦は……戦はどうなったのじゃ!?」
「簡潔に言いますと、そこのフィリップ皇子ただ1人に負けました……」
「なんじゃと!? なのにお前はおめおめと生き恥をさらしておるのか!!」
「お怒りはごもっとも。その前に、一騎討ちを受けてもらえませんか?」
「……は? なんでわしが受けなきゃならんのじゃ??」
「これ、受けないと、ずっと言い続けますので……話を先に進めるために、お願いします!!」
「嫌に決まってるじゃろ! お前がやらんか!!」
「私はもう完敗しましたので……」
ボローズ王、ここに来てワガママ。イェルドが頑張って説得して「命までは取られない」と聞いて、ようやく剣を握ってくれた。
「その一騎討ち、受けてやるぞ。こ、これでいいのか?」
「そうそう。それでいいの。待たせたんだから、そっちから来てね」
「ああ……」
ボローズ王が剣を振ると、ニヤニヤしていたフィリップはその剣を力尽く吹っ飛ばして、決着。
「死ね~~~!!」
「聞いてたのと違うぞ~~~!!」
そして殺気ムンムンでレイピアを振り上げて来たので、ボローズ王は腰を抜かすのであった。
11
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる