【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
47 / 142
三章 引きこもり皇子、働く

047 悩ましい報告

しおりを挟む

 帝都、秋……

 各地では麦の収穫が終わり、次々とフレドリク皇帝の元へと報告が届いていた。その収穫量は例年より多いので、フレドリクも満足気な顔でルイーゼ皇后やイケメン4と笑顔で過ごしていた。
 しかし、しばらくすると帝都に奴隷だった者がチラホラ現れ、日が経つに連れて増えて行き、止まる気配がない。

 何かがおかしいと感じたフレドリクは各地に兵士を派遣して、情報を吸い上げる。その情報に危機感を覚えたフレドリクは、ルイーゼとイケメン4を集めて会議を開いていた。

「……と、収穫が終わった途端、奴隷だった者がほとんど解雇されているらしいんだ」

 フレドリクの説明が終わると、カイ・リンドホルム近衛騎士長が机を叩いて立ち上がる。

「どうしてそうなるんだ! 来年の収穫はどうするつもりなんだ!!」

 その言葉に各々思うことがあるのか、雇用主や領主を非難している。だが、そんなことをするために集められたわけではないので、落ち着くとモンス・サンドバリ神殿長が手を上げた。

「神殿からも報告が……元奴隷が帝都に集まっている理由を聞いたところ、皇后様がいるかららしいのです」
「どういうことだ?」
「雇い主からは、聖女様なら救ってくれると吹き込まれたようで……」
「つまり、帝都に来れば、施しを受けられると信じて来てしまったのか……」

 フレドリクたちは、追い返す案は口に出さずに飲み込む。ルイーゼが心配そうに見ていたからだ。

「ひとまず、神殿で炊き出しを続けてくれないか?」
「もちろん続けますが、これ以上増えるとなると、食料も場所もまったく足りません」
「そうか……食料はしばらく備蓄を切り崩すとして、場所は……」

 フレドリクの悩みに、ヨーセフ・リンデグレーン宰相が答える。

「犯罪を犯した貴族の屋敷はどうですか?」
「そこなら充分な広さはあるな。雨風もしのげそうだ。手配しよう」

 こうして当面の方針が決まったフレドリクたちは忙しく動き、元奴隷を全て受け入れるのであった……


 元奴隷が続々と帝都に到着するなか、各地から違った情報が届いたので、フレドリクたちは会議を開いていた。

「各地の領地が荒れているらしい。理由は、元奴隷の押し付け合いだ。いざこざも起こっている場所もあるようだ」

 フレドリクの暗い説明に、ルイーゼが涙目で口走る。

「同じ人間なのに、どうしてケンカなんてするの……元奴隷のみんなも、行き場をなくしてかわいそう……」

 その涙に、一同、領主非難。特に怒っているのはカイだ。

「俺が行って黙らせてやる!」
「うむ……そうしてくれるか? それと、元奴隷の移動禁止も伝えてくれ。法律は作っておく」
「わかった!」

 カイが勢いよくドアに向かおうとしたその時、執事がドアを乱暴に開けて飛び込んで来た。

「何事だ!!」
「も、申し訳ございません!」

 そんな非礼、カイが許せないと詰め寄ったがフレドリクに止められていた。

「それで……急ぎの用件か?」
「はっ! ボローズ王国がダンマーク辺境伯領に攻め込んだとのことです!!」
「「「「なんだと~~~!!」」」」

 突然の戦争の知らせに、イケメン4は同時に立ち上がってしまった。

「辺境伯領といえば、いま一番安定している領地だな……」
「しかし、あのエステルが……」
「でも、来年の収穫もある……」
「兵を出さないわけにもいかないな……」

 立ったまま話し合うフレドリク、ヨーセフ、モンス、カイ。時々エステルの名前が出ているということは、何やら引っ掛かるらしい……
 その話し合いで考えがまとまったフレドリクは、席に戻った。

「辺境伯といえば、かなりの戦上手だと聞いている。周りの領主と連絡を取り合えば、1ヶ月や2ヶ月、持たせることができるのではないか? ならば、辺境伯が助けを求めてからでも遅くはないのではないか??」

 フレドリクの案に、カイは腕を組んで頷く。

「うむ……まだ敵兵の数もわかっていないのだから、こちらからどれぐらいの兵を送っていいのかもわからない。辺境伯からの情報を待ったほうが無難だな」
「ひとまず、辺境伯からの連絡待ちにするとして……カイは動けないな」
「ああ。内輪揉めの仲裁も大事だが、国境を面している領主はないがしろにできないからな。何もしないと思われては、領主たちが離れかねん」
「よし! どちらもすぐに動けるように準備だけはしておこう」
「「「おお!」」」

 冷静になれば、有能なフレドリクたち。城中を走り回り、各種準備に明け暮れるのであった。


 だがしかし、そんな準備は1日で終わる。

「「「はあ? 1日で終結しただと~~~!?」」」

 フレドリクから呼び出されたカイ、ヨーセフ、モンスは驚愕の表情。フレドリクもあまり信用していないのか、頭をポリポリ掻いている。

「間違いなく、辺境伯からの手紙なのだが……詳細な説明が何も書かれていないのだ。ただ、援軍は必要がないと、取り急ぎ伝えたかったみたいだ」
「それが本当ならば、それに越したことはないのだが……あのエステルがいるからな~」
「うむ。逆にボローズ王国に取り込まれている可能性は捨てきれない。いや、辺境伯からボローズ王国に擦り寄った可能性もある……もう少し様子を見てみよう」

 どうしてもエステルが引っ掛かるフレドリクたち。いや、この展開に疑念を持って裏切りの可能性を上げたのだから、やはりフレドリクたちは有能なのだろう。
 この日はそれだけで解散して、2日後……

「辺境伯から詳細な手紙が届いたのだが、どこから話をしたものか……」

 ルイーゼを含めた皆を集めたフレドリクは口が重いので、イケメン4は辺境伯ではなくエステルの裏切りを確信して頷いた。

「フィリップが話し合いで二万の兵を追い返したらしい……」
「「「「……え??」」」」
「だからな。フィリップが……」
「「「「ええぇぇ!?」」」」

 フィリップの名前が2回出て、ようやく驚く一同。国政にはまったく関わらず、ずっと引きこもりをしていたのだから到底信じられないのだろう。
 辺境伯の詳細な手紙を読み上げても、信じられないとけっこう酷いことを言っているけど、兄であるフレドリクまでウンウン頷いて悪口を言っているから止まらない。
 だがしかし、ルイーゼが口を開けばピタリと止まった。

「よかったじゃない! 誰1人死なずに平和的に解決したのだから、フィリップ君に感謝しようよ! それに、行方不明だったフィリップ君が見付かったんだよ? フックン……よかったね!!」
「う、うん……」

 今まで散々フィリップの悪口を言っていたのだから、フレドリクも少し気まずい。

「まぁ生きていてくれたのは、素直に喜ぼう。しかし、また旅に出てしまうとは……いったいあいつは何をしているんだろう」
「きっと世界を見て、フックンの役に立とうと勉強してるんだよ。帰って来た時には、皆で温かく迎え入れてあげよ?」
「そうだな。真偽の程は置いておいて、辺境伯領……ひいては帝国を守る行動をしてくれたのだ。皇族の自覚が芽生えたのかもしれない。皆も、何も言わず迎え入れてくれ」
「「「はっ!」」」
「うん!」

 こうしてルイーゼのおかげでフィリップの株が上がり、戦争という懸案事項は解決し、国内情勢に集中できるようになったフレドリクたちであった。


 それから数日後……

「各地からフィリップの武勇伝が続々と届くのだけど……どれが本当だと思う?」
「「「「う~~~ん……」」」」

 フィリップの蒔いた種が帝都に届いた頃には10倍以上に膨れ上がっていたので、真偽がますますわからなくなるフレドリクたちであったとさ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...