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三章 引きこもり皇子、働く
049 荒れ地にて2
しおりを挟む元奴隷が荒れ地の石を拾い始めた次の日、作業員は倍に増え、あとから来た元奴隷がフィリップの横柄な態度に憤っていたが、帰る頃には先輩と一緒に首を傾げて家路に就く。
その次の日には、耕した土を元奴隷がザルに通して小石を取り除いた場所に、見たこともない元奴隷が大量の土を運んで来た。
するとフィリップと一緒に土を運んで耕し出したので、また謎が生まれていた。その翌日もその翌日も作業をしていたら、お昼頃に立派な馬車がやって来て、どう見ても高貴なデカイ男と目付きの悪い若い女が降りてフィリップに近付いた。
「奴隷ども~! 辺境伯様が来てるぞ~! 走る必要はないが、急いで集まれ~~~!!」
「「「「「イエッサー!!」」」」」
すると、フィリップの怒声が響いたので、元奴隷はダッシュ。フィリップの言葉は聞こえていたけど、辺境伯を前に歩くなんてできないので走ってやって来た。
「奴隷ども、誰が走れと言ったんだ~~~!!」
元奴隷が全員集合すると、フィリップの叱責。すると、目付きの悪い女、エステルがフィリップを睨む。
「なんですの、その言葉使い? ふざけてますの??」
「あ、これ? 普通に喋ったら威厳がないかと思ってキャラ作りしてるんだ。ちゃんと偉そうに喋れているでしょ?」
「珍しく働くとか言うからおかしいと思っていましたが、農業で遊んでいたとは驚きですわ。はぁ~……」
「いや、仕事は楽しくやらなくちゃね!」
「はぁ~~~……」
2人のやり取りを聞いて、元奴隷が抱いていた謎がひとつ解ける。フィリップは道楽でふざけていたと……
「で、こんなところになんか用?」
「どうもこのグループが一番作業が進んでいるらしいので、お父様と視察に来たのですわ」
「うむ。馬も牛もなしに、倍以上進んでいるのは何故かと思ってな。それと、差し入れを持って来た。頑張っている皆に食べさせてやってくれ」
「奴隷ども、聞いたか! お父様からお褒めの言葉をいただいたぞ!!」
「それ、やらなくてはいけないのですの?」
「お姉ちゃんは邪魔しないでよ~」
キャラ設定を邪魔されたフィリップがブーブー言っているうちに、連れて来ていた従者が元奴隷を並ばせて干し肉のプレゼント。少し早いが昼食を始める。
フィリップは、ホーコンたちと一緒に豪華とまでは言えないが、そこそこのサンドウィッチやスープをバクバク食べていた。ちなみに今日は人の目が多くあるので、ホーコンも敬語を控えている。
その間に、従者は元奴隷から聞き取り調査。食事が終わる頃には、情報は集まったようだ。
「エリクの仕事態度はですね……」
「僕を調べてたの!?」
てっきり農作業の視察に来たのかと思っていたのに、フィリップ個人をエステルがあげるので納得がいかない。
「だいたい寝てる……ですって?」
「ア、アハハ……」
「あと、抜けることが多いと書かれていますが、どちらに行かれてますの??」
「日差しを避けるとかかな? 覚えてないな~」
サボっているのがバレたフィリップが空笑いと言い訳をしていたら、ホーコンが助けてくれる。
「待て待て。いまはサボっていたことは置いておこう。帰ってからやれ。それよりもだな。異常に早い理由だ。何か書かれていないか?」
「そうでしたわね……口は悪いけど実は凄く優しい……は、関係ないですわね」
「いや、僕の評価が高いのは関係あるんじゃない?」
エステルが調査書を読み上げるとフィリップが茶々を入れて邪魔していたけど、途中から早い理由が書かれていたみたいで、エステルの手が止まった。
「牛より大きな石を担いだり投げたりしていると書かれているのですが……」
そう。フィリップの超人っぷりが書かれていたから、皆も息を飲んで何も言えなくなっているのだ。
「それぐらい、お父様でもできるよね?」
「持ち上げるぐらいならできそうだが……ひょっとして、あそこに高々と積まれた石は、エリクが全て1人で積んだのか?」
「うん。待ち時間が長くて、暇で暇で」
「無理!!」
「え~。できるって~」
石置き場には、岩で作られた3階建ての建物みたいな物があるので、ホーコンもサジをぶん投げた。
「この、エリクが2本のクワで、物凄い速さで耕していたと書かれているのですが……もう少し身分を考えてくださいませ」
「え~。農業してみたかってんだよ~」
「あ、そういうことですの……」
変な内容ばかりでなかなか早い理由に気付けなかったエステルは、ここでやっと正解に辿り着いた。
「馬や牛がしていることを、エリクがやっていたから早かったのですわね! 言ってて変ですけど!!」
「最後の一言はいらなくない?」
エステルがドヤ顔から怒った顔で言うので、フィリップはまた茶々入れ。ホーコンもそれが答えでいいかと2人のやり取りを聞きながら調査書に目を通していたけど、疑問を口にする。
「エリクはサボってばっかりなんだが……これでどうやって作業速度が2倍になるのだ?」
「そ、それは……どうやってますの??」
「知らないよ~。僕は普通にやってるだけだよ~」
ますます謎が深まる、フィリップ式農業であった……
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