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四章 引きこもり皇子、暗躍する
094 フィリップ暗躍4
しおりを挟む適当な定食屋に入ったフィリップは、痩せこけて汚い女性と子供にごはんを食べさせるように言ったら、足下を見られた価格設定を提示されたのでそのままの金額を支払ったが、店主はまだ渋っていた。
なので、殿下の宝刀。「貴族様の命令が聞けないのか!」と怒鳴り散らしたら店主もお金を返して来たけど、フィリップはそれを受け取らず急ぐように告げただけで、端にあった椅子に腰掛けた。
そこからは、あれよあれよ。テーブルに大量の料理が並び、子供たちから順に腹の中に消えて行く。
そうして女性の順番が来た頃に、リーダー格の女性、ラウラがフィリップの元へやって来て金貨を差し出した。
「なにそれ?」
「あんたがくれた金だけど……」
「渡した記憶なんてないな~? お姉さんが元から持ってたんじゃないの??」
「そんなわけないだろ。それに、ここの料理だって金貨1枚も取られてたじゃないかい」
「アハハ。ぼったくりだよね~? てか、お姉さんも、そんなアホなんか騙しておきなよ」
「い、いいのかい??」
「早くしまって。それと、さっき僕が言ったことも忘れてくれていいから」
「あ、ありがとう。ありがとう……うぅ……」
「なに泣いてるんだよ。さっさと食べて来な」
ラウラをわざと邪険に追い払ったフィリップは、全員が食べ終わるのをニヤニヤして待つのであった。
「「「「「お兄ちゃん、ありがと~」」」」」
お腹いっぱいになった子供は母親から礼を言うように催促されていたが、これもフィリップは邪険に「シッシッ」と追い払う。
それからラウラも食べ終えたのか、またフィリップの元へやって来た。
「本当にありがとう。こんなに子供たちに食べさせられたのは久し振りで、なんとかもう少し生きられそうだよ」
「ふ~ん……ここでの暮らし、そんなに悪いの?」
「炊き出しをしてくれる町長様に文句を言いたくないけど、1日1回で量も少ないんじゃ、さすがに……」
「なるほどね~……」
フィリップは足を組み直してブラブラしてから次の質問をする。
「他の領地に行こうと思わなかったの?」
「前の領主様には出て行けと言われ、他の領主様には来るなと言われたから、どうしていいかわからなくなって……それに、もう移動する気力もなくて」
「そっか。それじゃあ仕方ないね。でも、ここでは暮らしていけないでしょ?」
「はあ……」
「もしもだよ? 僕が馬車を1台と充分な食料を買って、それで遠くの土地まで行けと言ったらどうする?」
「え……」
「いや、女子供だけじゃ厳しいか……護衛って、どこで雇えるんだろ……」
ラウラが黙っているのでフィリップはブツブツと考え事。しばらくして復活したラウラがフィリップに声を掛けようとしたその時、外から悲鳴が聞こえて来た。
「羽振りがいいガキってのはどいつだ~?」
チンピラだ。3人のチンピラが女子供を押し退けて店に入って来たのだ。
「おっ! ちょうどいいヤツらが来た。ちょっと待ってて」
「いや、あんたが狙われてるんだよ。早く逃げな! ええぇぇ~……」
ラウラが止めた頃には、フィリップは先制攻撃。チンピラ3人はボコボコにされて首には縄をかけられた。
「こいつらのボスと会って来るから、みんな動かないでね~?」
「「「「「はあ……」」」」」
「ポチ、1号2号3号、道案内!」
「「「ワンッ!」」」
「「「「「……」」」」」
あっという間の出来事でチンピラはフィリップの犬にされたので、皆は呆気に取られて見ているしかできないのであった。
それから小一時間もしない内に、フィリップがヒゲ面の大きな男の首に縄をかけて戻って来たので、ラウラたちはハテナ顔。柴犬から土佐犬に変わったとか思っている人も中にはいる。
「紹介しておくね。こいつ、マフィアのボス。んで、君たちの護衛で雇ったの」
「「「「「ええぇぇ!?」」」」」
たった小一時間でマフィアを壊滅して戻って来たのだから、ラウラたちは阿鼻叫喚。それなのにフィリップは、ボス犬に「お座り」とか命令して椅子に座らせていた。
「い、いったい私たちをどうしたいんだい?」
その中をラウラが近付いて来たので、フィリップはボス犬には「待て」とか言ってから振り返る。
「さっき言ったでしょ? みんなここから逃げ出すんだ」
「ウソ……なんであんたが見ず知らずのあたしたちなんかに……」
「気まぐれ~。それより、ここから離れたい元奴隷を集めてくれない? 僕、あんまり時間がないんだよね~。気まぐれの制限時間は、夜までだ。急いだら、全員助けられるかもね。アハハ」
フィリップがボス犬を連れて店から出て行くと、固まっていた女性たちは慌てて動き出して町の中に消えて行く。フィリップはその間に、旅支度。
ボス犬から子分に命令させ、手配できた馬車3台に食料を積み込ませる。もちろん支払いは、ニコニコフィリップ払いだ。マフィアたちにも護衛料を弾んでいたからニコニコしてる。
その前までは、剣を引っ張ってちぎってから「指を全部引っこ抜く」と脅されていたから顔が真っ青だったし、これからも逆らいたくないとか思っているから絶対服従の犬になっているのだ。
夕刻になると100人近くの女性や子供が集まり、食料や毛布、生活必需品も馬車にパンパンになったので、フィリップは「これでなんとかなるか」とラウラに声を掛ける。
「これでいけそう? あ、このお金もさっき渡したお金に足して皆の旅費にして」
「はあ……」
「ところで男が全然いないけど、みんなどこに行ったの??」
「そ、それは……」
また金貨を数枚押し付けられたラウラは呆気に取られて空返事だったけど、男の話題になったら目を伏せた。
「ここまでした命の恩人に、隠し事~??」
「い、いや! そういうわけじゃ……男たちは、皇帝を襲うとか言っていたから……」
「はい? 皇帝って、あの皇帝陛下??」
「ああ。明日、生きられるかもわからないって、自棄になっちまって……」
「そ、それを先に言いなよ!? 僕が見て来るから、みんなは明日立つ準備しといて!!」
「あ……」
急転直下。元奴隷がフレデリク皇帝を襲うと聞いたフィリップは、いきなり走り出したのであった……
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