113 / 142
五章 引きこもり皇子、進軍する
113 直接対決1
しおりを挟む「んじゃ、結論から言わせてもらうね」
フレドリクたちがテーブル席に着き、フィリップが喋り出すと、この場にいる全ての者に緊張が走った。
「さっきみんなが言っていたことが答えだよ。兄貴、皇帝辞めてくんない?」
その発言に、イケメン4やその後ろに立っている騎士が驚愕の表情を浮かべる。フィリップの後ろに控えている民やホーコンたちはウンウン頷いているので、それが民の総意だと言わんばかりだ。
そんな中、カイはテーブルを叩いて立ち上がった。
「やはり謀反だったか! 兄を蹴落として何が楽しいんだ!!」
「お前、うっさい。僕は兄貴と話をしているんだ。三下は引っ込んでろよ」
「なんだと……俺に大怪我を負わされたことを忘れたのか……」
「忘れた~。邪魔するなら、どっか行ってくんない?」
「貴様~~~!!」
フィリップがカイをからかっていると、フレドリクが動く。
「カイ。フィリップのペースに飲まれるな。落ち着いて座っていてくれ」
「あ、ああ……すまない」
カイがしゅんとして着席すると、フレドリクは鋭い視線をフィリップに向ける。
「それで……どうして私に皇帝の椅子を明け渡せと言っているのだ?」
「それがわからないぐらいアホになってるからだよ」
「アホだと……」
「さっきみんなの声を聞いたよね? それが民の答えだよ。兄貴に嫌気が差して辞めろって言ってるのがわかんない??」
フィリップの反論に、フレドリクは冷静に対応する。
「確かにこの2年、民には悪いことをしたとはわかる。しかし、ようやく立て直す目処が立ったのだ。その結果を見れば、民もまた私について来てくれるはずだ」
フレドリクの反論には、イケメン4たちが拍手しそうなぐらい響いていたが、100人の民代表は微妙な顔だ。
「それが遅い、つってんの。辺境伯、嘆願書を持って来て」
「はっ!」
フィリップが後ろに控えているホーコンに振ると、テーブルの上に書類が高々と積まれた。
「これは民の怒りだよ。でも、こんなの極一部。後ろの馬車に山ほど積まれているのだって極一部だよ。これからその一部を読んであげるから、耳の穴をかっぽじって聞くんだよ?」
フィリップはこの2年で民が受けた苦痛を読み上げる。
その内容は、食料品が高くて買えないとの平民の声。農業技術や農地をムリヤリ奪われたとの農夫の声。代官に資産を奪われた商人の声。盗賊が増えて移動もままならない民の声等もあった。
「ここまでは全部、兄貴が奴隷制度廃止を急いだ副産物だよ。平民までに文句を言わせる制度変更って、どうなのよ?」
「だから、これから良くなって行くのだ」
「まだわからないか~……じゃあ、次はその奴隷から解放された人の文句ね」
奴隷から解放されてから食べられなくなった。仕事も居場所も失った。領主や代官からは他に行けとたらい回しされた。冬には多くの仲間が死んだ。奴隷に戻してほしい等々。
フィリップが読み終わると、ルイーゼが涙を我慢できなくなってフレドリクに体を預けていた。
「これだけ人を不幸にしておいて、どの口がこれから良くなると言ってるの? できるわけないでしょ」
「いや、できる。準備は整ったのだ」
「仮にその話が本当だとして、もう誰も信じられないんだよ。そもそもその準備って、うちから……辺境伯領から盗んだ技術だよね? 盗っ人猛々しいってのは、兄貴のことを言うんだよ」
「私が盗っ人だと……」
「違うの? 辺境伯、あの書類持って来て」
「はっ!」
ホーコンは1枚の書類をフィリップに手渡すと、その場に残る。
「ほら? この勅令書、見覚えがあるよね?? 辺境伯が元奴隷を救うために頑張って作った麦やお金を、兄貴が根刮ぎ奪った証拠だよ。忘れたとは言わせないよ」
「そ、それは、辺境伯から無償で譲り受けた物だ。これほどの大きな借りを作ったのだから、借りは何年かかっても必ず返す予定だ」
「そんな文言、一言も書いてないんだけど~? 辺境伯、聞いてる??」
「いえ! いきなりやって来て、防衛用に取っておいた麦も、民が頑張って収めた金も、無償で用立てろ言われました!!」
「なっ……」
このために残っていたホーコンが堂々と噓をつくので、フレドリクも冷静さを失った。
「確かに無償で譲ると言ったぞ! 噓を言うな!!」
「証拠はここにあるのに、どっちが噓ついてるのかな~? それにしても、こんなに大量の麦とお金って凄いね。合わせたら帝国の国家予算ぐらいない??」
「わはは。頑張りましたので」
「なんだその数字は~~~!!」
ここでフレドリクは、勅令書に書き足された数字に気付くと同時にあることにも気付いた。
「この私を嵌めたな……」
「なんのことかな~? これが現実でしょ?? アハハハ」
「フィリップ……いや、辺境伯の策略か!?」
フィリップが隠さず笑っているのだから、フレドリクも完璧に気付いて怒鳴り声をあげた。しかしホーコンはそのことに取り合わず、フィリップに託す。
「アレ? 手紙で全部、僕がやったと書いたでしょ??」
「フィリップがそんなに賢いわけがないだろ!!」
「えっちゃ~ん。兄貴が信じてくれないよ~」
フレドリクの言葉にイケメン4は激しく頷くので、フィリップはエステルに助けを求めた。
「残念ながら、殿下は陛下より賢いですわよ。2年前から、この状況になるように画策していましたもの。私どもは、その手足となったにすぎませんわ。そうですわよね。お父様?」
「ああ。当家に来られた直後から、殿下は奴隷制度を廃止されたあとに何が起こるか正確にわかっておりました。その後、全て的中して行くことも驚きの連続で……ですから、私は今日のこの光景も必ず起こる未来だと信じていたのです」
2人にヨイショされたフィリップはニヤリと笑う。
「フッフ~ン♪ 僕が賢いのわかってくれた?」
「「「「いや……」」」」
「まだなの!?」
しかし、フィリップを担いでいる2人がヨイショしていたのでは、あまり効果はないのであった。
「まぁ……仕方ありませんわね」
「だな。それまでが酷すぎた……」
エステルもホーコンも、この程度では信用されないと思っていたらしい……
1
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる