120 / 142
五章 引きこもり皇子、進軍する
120 直接対決延長戦6
しおりを挟む「そこを開けてください!!」
カイを蹴り飛ばしたフィリップがゲラゲラ笑うなか、ヨーセフからの指示。フレドリクたちが振り返ると、ヨーセフの頭上には2メートルを超える大きさの炎の玉があったので、カイとフレドリクは慌てて左右に跳んだ。
その瞬間、炎の玉は凄い速度で飛び、「ドーーーンッ!」とフィリップに直撃した。
「やりすぎではないか?」
爆風が落ち着き、辺りに煙りが立ち込めるなか、フレドリクはヨーセフの元に走り寄った。
「フィリップ君の魔法を見たでしょう? アレは私の上を行っています。虚を突かないと、当たるかどうかも怪しいです。それに、カイの剣も通じていなかったようですし」
「確かにそうだが……」
「アハハハハハ」
フレドリクがフィリップの心配をしていると、笑い声が聞こえて来た。
「いいねいいね。その調子だよ。アハハハハハハ」
フィリップだ。フィリップは雪だるま型の氷で防御していたから、炎の熱と相俟って、水蒸気で姿が見えなかっただけなのだ。
「なんて奴だ……本当に協力して戦わないとルイーゼを助けられないかもしれない……」
ここでようやく、フレドリクも認識を改める。剣聖の称号を持つカイの剣も、賢者の称号を持つヨーセフの魔法でも傷ひとつ付けられないのだから……
「カイ、いけるか?」
「誰に言ってるんだ。あんな蹴り効かねぇよ」
「手加減されてるだけだ。そう思って戦うんだ」
「悪い。強がった。あいつ、最下層にいたドラゴンより強いぞ。俺たち全員が死力を尽くさないと勝てない」
「その切り替えの早さ、助かる。ならば、そう思って戦うぞ!」
「「「おう!」」」
ここからは、フレドリクたちも本気。モンスの補助魔法をかけてもらう。
「やっと本気になってくれたか~。僕にどこまで通じるか楽しみだ」
「その余裕、いつまで続くかな? 行くぞ!」
「「おう!」」
「ファイアーアロー!!」
フレドリクの合図と、カイ、モンスの返事と同時に、ヨーセフの放った炎の矢が飛ぶ。その矢は、フィリップは左手に氷を展開して払い飛ばした。
「ただの目眩ませだ」
「わかってるって!」
そこに、パーティ最速のフレドリクのダッシュ斬り付け。フィリップはサビた剣で横からその剣を弾く。
「まだまだ~!」
そこまで力を入れていなかったのか、フレドリクの剣はすぐ振るにはいい位置に戻っており、そこから横斬り。フィリップが後ろに跳んだところに、前に出ての縦斬り。
その連続斬りに対応しようとフィリップが剣を出したところで、殺気が飛んで来た。
「喰らえ~~~!!」
「0点!!」
カイだ。カイが大声あげて斬り付けていたので、フィリップはとんでもない速度でフレドリクの剣を弾き、カイの大剣にぶつけて動きを止めた。
「途中までよかったのに、筋肉バカはなんで大声出すかな~? そこは静かに斬り付けたらバレないでしょ??」
「だからなんだ!」
「アドバイスだよ。次からは気を付けて」
「ふ、ふざけやがって……」
「カイ! フィリップに乗せられるな。いまはチャンスだぞ!!」
「お、おお!」
フィリップが接近戦の間合いにいるのだから、喋っているのはもったいない。フレドリクはカイを宥めて、左右からフィリップを斬り付ける。
「そうこなくっちゃ~」
しかしその剣は、フィリップにかすることもしない。足捌きだけでかわし、たまに2人の剣を弾いてぶつけ合わせる。
「避けて!」
その剣戟を抜けるように、ヨーセフの【ファイアーアロー】。さすがは幼馴染みということもあり、フレドリクとカイは息ピッタリに避けてフィリップに着弾。
「出し惜しみするなよな~」
これも、先程と同じようにフィリップの氷魔法で払い除け、弱い魔法は使うなと愚痴っている。
「「もらった!!」」
「だから声出すなっての!」
「がはっ!?」
「ぐはっ!?」
その止まった瞬間を狙って、フレドリクとカイは左右から同時斬り付け。だが、時間差で2人とも蹴り飛ばされて床に転がることになった。
「大丈夫ですか!? すぐに治します!!」
2人が倒れてすぐに立ち上がらないので、モンスが駆け寄って回復魔法。ルイーゼほどではないが、素早く治療ができるらしい。
その間、ヨーセフが【ファイアーアロー】を連発して時間稼ぎをしていたが、フィリップに素早く避けられて一発も当たらず。「もっと撃ってこい!」とか言ってるから、おちょくってるだけなのだろう。
「クソッ! なんだあの強さは!!」
回復してもらって立ち上がったカイは、苛立ちが止まらない模様。フレドリクも同意見のようだ。
「いったいフィリップは、どうなってるんだろうな。ククク」
ただし、弟の真の姿を知れて嬉しいのか、それとも笑うしかないのか笑みが零れている。
「笑っている場合か? このままじゃルイーゼがエステルに殺されてしまうぞ」
「わかっている。手の内を隠すのはここまでにしよう。カイも例の技を使ってくれ」
「アレか……巻き添えになるなよ」
「対応済みだ。行くぞ!」
フレドリクを先頭に、後衛まで前進。それを見てフィリップはニヤニヤしている。
「作戦会議も長すぎるよ~?」
「フッ……その分、楽しませてやるから期待してろ」
「それは期待するなと聞こえるんだけど~?」
「喰らえ!」
「だから……」
注意したことをフレドリクがまたやろうとしたので、フィリップが再び注意しようとした刹那、フレドリクは剣を前に出して叫ぶ。
「サンダーボルト!!」
フレドリクの雷魔法だ。その出現位置は対象の真上であり、速度は他の魔法を凌駕する。さらに、アーティファクトの剣がフレドリクの攻撃力を増大させているから、威力も速度も数倍に膨れ上がっている。
どんなに素早い敵でも避けられたことがないからこそ、フレドリクも見せ付けるように使ったのだ。
突如、フィリップの頭上に稲光が起こり、雷鳴が轟いたのであっ……
「あっぶな……それがあるの忘れてたよ~」
「なっ……」
残念無念。雷はフィリップの出した2本のツララに引き寄せられて、床に吸収されてしまうのであった。
1
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる