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第二章 王都編 友達が出来たにゃ~

045 敵襲かにゃ~?

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「すごいすごい! 揺れが全然感じないよ!」
「シラタマ様。素晴らしい出来です」
「猫ちゃんの車と同じくらい乗り心地がいいね」
「シラタマ様、すごいです!」

 馬車が完成した翌日、当初の予定通りわし達は湖に向かう。その道中、新造したサスペンション搭載馬車に乗った皆は、口々に感想をもらす。

 みんな気に入ってくれたみたいじゃのう。兄弟達もネコハウスを出せと言ってこない。苦労して作った甲斐があるわい。

「これならいくら飛ばしても大丈夫ね。ドロテ、スピードアップよ!」
「ダメにゃ~! 馬車がいたむにゃ~」
「え~! シラタマちゃんの車は速かったじゃない?」
「あれは魔法で動いていたにゃ」
「サンドリーヌ様。馬に負担が掛かりますので、やめた方がよろしいかと」
「たしかに遅いよね~」
「アイノまで……もう着きますよ」


 ドロテが兵の詰め所を指差しながら到着を告げると、さっちゃんは諦めたような諦めていないような微妙な顔をしている。馬車は一昨日と同じように駐車スペースへ止め、水着に着替えて湖に向かう。

 なんで当たり前のように、全員水着に着替えておるんじゃ……。今日、敵が来るってみんな知っておるよね? 剣だけ持って来ても防御力ゼロじゃぞ? いきなり襲われたらどうするんじゃ!


 わしの心配を他所に、皆、湖に入り、遊び始める。わしが口を開け、湖の前で立ち尽くしていたら兄弟達が側に寄って来た。

「ねえ……今日は敵が来るのよね?」
「そうじゃが……」
「人間って危機感が無いのかしら」

 人間よ……猫に心配されておるぞ!

「敵が来たら、俺が倒してやるよ」
「はいはい。来たらお願いね」

 ルシウスは強気じゃのう。おっかさんが死んでから弱気になっておったから、リハビリの為に任せてみるのもいいかもしれん。

「とりあえず、わしらで警戒だけはしておこう」
「わかったわ」
「おう!」
「シラタマちゃ~ん! こないだのザバーンってやつやって~」
「「「はぁ……」」」

 兄弟達と大事な話をしていると、さっちゃんがおねだりしてくる。

「さっちゃん……これから敵が来るかもしれないにゃ」
「わかってるよ。でも、シラタマちゃんが守ってくれるんでしょ?」
「そうにゃが、警戒は必要にゃ」
「警戒して遊ぶから~」

 それはどうやってじゃ? さっちゃんがこうなっては仕方ないか……

「はぁ~……ちょっとだけにゃ」
「やった~!」


 わしはさっちゃんの我が儘に応えて、岸から波や渦を作る。そうしながらも、探知魔法は遠くまで飛ばしているが、一向に反応が無い。そのまま、皆で楽しく遊んでお昼まで食べ終わってしまった。

「なかなか来ませんね」
「今日は来ないんじゃない?」
「それでも警戒をおこたる訳にはいきません」

 ドロテ、アイノ、ソフィと話しておるが、みんな楽しそうに遊んでいたよね? 警戒してたのはわしと兄弟達じゃ! ソフィよ……くそ真面目だったお前はどこへ行った……

「次は何しよっか。シラタマちゃん、何か面白い事ないかな?」

 まだ遊ぶのか……さっちゃんは危機感って言葉をエリザベスに習うといい。
 何か面白い遊びと言われても……湖……海ならビーチボール? 極力薄く軽くした土の玉ならボールになるかな? ちょっと作ってみよう。……う~ん。こんなものか。

「それは何? どうやって遊ぶの?」

 あ、猫の姿では教えられない。まだ探知魔法には何も反応は無いし、ちょっとだけ変身するか。水着なんて持って無いし、いつもの着流しを出して……


 わしは人型に変身すると、土魔法で作ったボールをオーバーハンド、アンダーハンドとポンポンと跳ね上げる。

「こうやって落とさにゃいように、みんにゃで上げるにゃ」
「へ~。貸して」


 ひとりずつ軽く練習してから輪になって、ボールを跳ね上げる。アイノの胸がポヨンポヨンとすごい事になっていたが、わしは見ていない。
 慣れてきたら土魔法でネットみたいな物を作って、簡単なルールを教え、試合もやらせてみた。最初は楽しそうにやっていたが、さっちゃんチームが負けて、さっちゃんが少し不機嫌になった。
 そのせいで、皆、手加減をし始めたから、審判のわしが手加減するなと止めに入る。最終的には、わし対全員という闘いになってしまった。

「シラタマ様、行きます!」

 ソフィの強烈なジャンピングサーブがわしを襲う。

「にゃんの!」

 わしはレシーブで返す。

 アイノがレシーブし、ドロテのトス、からのさっちゃんのスパイク。見事な連携がわしに炸裂する。

「アターック!」
「まだまだにゃ!」

 わしはきれいにレシーブし、さっちゃんチームに返す。何度もアタッカーを変えて打ち込まれるが、わしは落とさない。

 返せるけど責め手がない! 人数もあっちの方が多いから、どこに返しても戻って来る。て言うか、さっちゃん達はなんであんなに連携がいいんじゃ? もうどうやって終わるかすらわからん。


 わしが頑張って返していると、動き疲れたさっちゃんに体力の限界がきた。

「もうダメー。動けない」
「私も疲れました」
「私もです」
「猫ちゃん、ちょっとは手加減してよ~」

 みんなに手加減してはいけないと言ったばっかりで出来るわけないじゃろう。その手があった事を忘れていたわけでは無い。ホンマホンマ。
 おっと、ちょうどいい頃合いじゃ。


 探知魔法に引っ掛かった人影に気付き、わしは猫型に戻る。

「どうかしたの?」
「敵にゃ。数は四。いや、六にゃ」
「来ましたか」

 ソフィ達は小屋に入り剣を持って戻り、さっちゃんの前に立つ。わしはソフィの後ろに隠れ、兄弟達には小屋に隠れていてもらう。
 わし達の臨戦体制が整い、しばらくすると、大柄な男が四人、姿を現す。

「お前達が誘拐犯か! ……って、なんて格好をしてるんだ!!」
「水着だけど何?」
「なんでそんな格好をしてるんだ!」
「お兄さん、ここは湖よ。遊んでるからに決まっているじゃない」

 なんかやり取りおかしくない? 水着の事ばかりで話が見えん。アイノの胸を見ないようにしておるし、口喧嘩ではアイノに押されておる。しかし、暗殺犯が誘拐犯とは、これいかに?

「誘拐犯なら誘拐犯らしくしろ!」
「誘拐犯? 我々は、サンドリーヌ様の護衛だ」
「情報通り護衛が誘拐したと言うのは本当だったな。大人おとなしく、王女様をこちらに渡せ!」
「暗殺犯に渡すわけがないだろう!」

 暗殺犯も引かなければソフィも引かない。当たり前じゃが、いつ戦闘は始まるんじゃ? 敵は剣士二人に槍士と弓士……ハンターか?

「誰が暗殺犯だ!」
「どう見てもお前達だ!」
「誘拐犯に暗殺犯など言われたくないわ!」
「私達も暗殺犯に誘拐犯扱いされたくない!」

 ドロテも押し問答に参加しておるが……ひょっとして、こいつらいい奴か? 剣も抜かんし、騙されているなら筋が通るか……わしも口喧嘩に参加しよう。



 わしはさっちゃん達と、暗殺犯らしき男達の中間地点までトコトコと歩く。そして着流しを取り出し、人型に変身する。

「な……ホワイトダブルがぬいぐるみになった!」
「ぬいぐるみじゃないにゃ~! 少し話をしたいにゃ~」
「ぬいぐるみが……はなし?」

 否定したのに人(猫)をぬいぐるみ扱いしやがって……ツッコミたいが、話が進まんからやめておこう。

「あんちゃん達は、ハンターかにゃ?」
「そうだ」
「ギルドの依頼を受けて、ここに来たのかにゃ?」
「ああ。貴族様から指名依頼を受けて、内々に処理するように言われている」

 水着の女達とのやり取りに疲れたのかな? 素直に話すのう。悪者でも無いなら隠れている二人に出て来てもらおう。

「いまから魔法を使うにゃ。絶対に、あんちゃん達には当てないから信じて欲しいにゃ」
「……無理だな」
「じゃあいいにゃ。【突風】にゃ!」

 わしは許可は得られなかったが魔法を使う。すると、ハンターの後方、離れた場所から悲鳴が聞こえるが、遥か上空に打ち上げられ、すぐに聞こえなくなる。
 しばらく待つと、二人の男が静かに落下し、わしの元へ降って来る。それを風魔法でそっと受け止めて地面に降ろす。

「いまのはなんだ!? この男は……」

 どうせ見えない所に使うから断りを入れる必要は無かったんじゃが、突然人間が降ってきたら驚いてしまうからのう。それでも驚くか。

「こいつらは、あんちゃん達の友達かにゃ?」
「友達では無いが、知ってる顔だ」
「知ってるにゃ?」
「ああ。貴族の使いと聞いている。誘拐犯がここにいると情報をくれたのはこいつらだ」

 あんな大根演技に騙されたのか……疑う事を知らんのかのう。まぁ引っ掛かってくれたのは有り難い。ひとまず拘束しておこう。


 わしは飛んで来た二人の男をロープで縛りながら話を続ける。

「信じられるかわからにゃいが、わしらは王女様の護衛にゃ」
にわかには信じられないが、悪い奴らでないのは理解できる」

 みんな水着じゃもんな。わしも水着で遊んでる者が護衛だとは信じられない。

「それじゃあ、現状を説明するにゃ。ソフィ、説明してやるにゃ」
「はい」
「いや、お前でいい。お前がいい」

 なんじゃ? 照れておるのか。残りのメンバーもうんうんうなずいておる。女に免疫が無いのか。ヘタレじゃのう。

「じゃあ、あっちの小屋に行くにゃ」
「すまない」


 わしはハンター達を小屋に案内してお茶を出し、こちらの現状を説明して、相手の話を聞く。なんでもこのハンター達は、ここから馬車で三日は掛かる街のギルドに所属しているCランクハンターらしい。
 その街では名も知られ、実力的にBランクと言ってもおかしくないって自慢されても、知らんがな。
 そんな実力者のハンターだからこそ、貴族からの指名が来たと、また自慢されても、知らんと言っておろう。何故、知らないかと聞かれても、猫だからじゃ!

「と、言うことは、俺達は知らない内に暗殺犯の仲間になっていたのか?」
「そうなるにゃ」
「嘘だろ?」
「あれが誘拐犯かにゃ?」

 わしは湖に目を向ける。そこには水着を着た護衛の三人の美女と、王女様が楽しそうに遊んでいる姿がある。ハンター達は一瞬見て、すぐに目を逸らす。

「誘拐犯には見えないな……くそ! 早馬を飛ばして、二日も掛けてここまで来たのに稼ぎ無しか」
「わし達と闘って、王女様をそいつらに渡すかにゃ?」
「陰謀に加担するのもごめんだ。ギルドに相談してみるさ。元の依頼も犯罪行為だから、依頼事態、取り消しだな」

 悪い奴らでも無いし、タダ働きはちとかわいそうじゃのう。それに、依頼した奴の金は返金されるとこっちが困る。

「それにゃら、王女様にハンターギルドに付いて来てもらうにゃ。王女様も無事。犯人もいる。依頼達成にゃ!」
「たしかに。全額は無理かもしれないが……協力してくれるか?」
「オッケーにゃ」

 普通の暗殺犯と違って、殴っておしまいとはいかんから面倒だったが、これで無事解決じゃな。うん。

 わしがホッとしていると、ハンターのリーダーがまた質問してきた。

「ところで、お前は何者なんだ?」
「たたの猫だにゃ~」
「「「「嘘つけ~~~!」」」」


 ハンターには、まだ解決していない問題があったみたいだ。
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